ドコモの山田隆持社長

2月14日から17日にかけてスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2011」のキーノートで、NTTドコモの山田隆持社長が登壇。組み込み市場向けのドコモの展望について講演した。

山田社長はまず、日本のモバイルブロードバンド市場は、世界をリードしており、3Gネットワークの利用がほぼ100%に達していると指摘。さらに幅広いサービスが提供されていると説明した。その中で、成長のためにはデータARPUの拡大が必要であると述べた。

世界に比べて、ほぼ100%の3G利用率の日本

その中で音声ARPUに対してデータARPU画上昇している

次に現在の状況を説明。音声ARPUが減少し、データARPUが上昇、今年3月には音声ARPUを抜く見込みだと述べた。それによって、減少してきた全体のARPUも反転すると予測しているという。その1つの要因としてあげるのがM2M(Machine to Machine)市場だ。ドコモは10年の国内の同市場で40%以上のシェアを確保しており、今後2桁成長が続くと見られる同市場に注力していく考えだ。M2Mを含め、ドコモのARPU拡大の戦略は、スマートフォン、LTEによるデータ利用の拡大に加え、組み込み向けなどの通信を融合させたコンバージェンスサービスで、12年度には1,000億円まで売り上げを拡大させることを目標としている。

2桁成長を続けるM2M市場

スマートフォンに関しては、11年度中に600万台の販売を目標としており、タブレット端末を含めた新製品や新サービスも用意する。LTEは、すでにXiの名称でサービスを開始し、現状はデータのみのサービスだが、年内にモバイル無線LANルーターや音声端末も提供する。

そしてコンバージェンス向けには、さまざまな「ライフツール」とモバイル端末が接続する世界を想定。工業製品、自動車、ゲーム機や音楽プレイヤー、放送、固定通信といったいろいろなものとモバイル端末がつながるサービスを目指すという。

さまざまな機器に無線通信を提供していき、コンバージェンスによるデータ利用の拡大を目指す

さまざまなベンダーと協力しつつ、ドコモはネットワークを提供していく

ドコモのネットワークではアップデートやリモートモニタリング、プッシュサービスが提供でき、機器管理などでも有効

例としてあげるのが、1月12日からサービスを開始した電子書籍サービス「2Dfacto」だ。今年第2四半期に約10万冊まで拡大し、さらに新聞やビデオなどのリッチコンテンツも提供するサービス。もう一つの例が自動車に搭載する「ドコモ ドライブネット」で、日産の電気自動車「LEAF」に通信モジュールを搭載した製品。ドコモ ドライブネットは、今回のMobile World Congress 2011でアワードを受賞していた。このモジュールは、渋滞情報や自動車の情報を画面に表示し、それをスマートフォンでコントロールできるというもの。そのほか、フォトフレームや自動販売機、工事現場の重機といった例を紹介した。

ドコモのネットワークを使ったサービスの例

山田社長は、すでに国内の約1,000社が無線モジュールを採用しており、さらに市場への投入時間を短くし、性能向上を図って市場拡大を目指していく考えだ。「これまでの10年は、モバイルコミュニケーションのポテンシャルを追求してきた。これからの10年は、モバイルコミュニケーションを中心に、広範囲なサービスプロバイダーになることを目指す」と話し、山田社長は講演を終えた。

将来的には、さらに市場を拡大していきたい考え