電子出版に向けたQuark社の取り組み
最近では電子出版に向けたパブリッシングサービスをソフトウェアメーカーが手掛けるようになり、昨年はアドビ社が「Adobe Digital Publishing Suite」を発表してコンテンツ制作から配信までを提供している。
Quark社でも電子書籍作成のためのアプリケーションや新機能を多数用意しており、その大部分がQuarkXPress 9の標準機能として搭載される。配信時にはQuark Publishing Systemを使用し、出版物に対してライセンスと出力手数料は掛かるものの、利用者に対して1冊あたりのロイヤリティは掛からないというしくみが採られているため、必然的にランニングコストも安価となることが特長。コストを抑えて電子書籍販売が行えるため、コンテンツホルダーの負担も従来方法に比べて軽くすることができる。
中でも「App Studio for QuarkXPress」はQuarkXPressドキュメントに対してiPad用App向けの編集が行える標準機能として搭載。QuarkXPress 9ではムービーや音声と言ったマルチメディアフォーマットに対応し、iPad向けにレイアウトされた領域に対してコンテンツを配置しパブリッシュできるため、素材が揃っていればQuarkXPress内ですべての作業が完了する。
「App Studio」の提供価格。上記は欧米での価格となる。日本でのサービスは現在検討中とのこと(拡大画像はこちら) |
もちろんQuarkXPress 9は、ePUBやBlio eReader、SWFといったその他の主要電子書籍向けフォーマットに書き出すこともできる。この自由さは、これまでのQuarkXPressでは考えられない懐の深さであると言えるだろう。
冒頭で紹介したように、QuarkXPressは登場から30年が経つ歴史あるアプリケーションだ。日本でも20年近く使われており、とくにMac DTP黎明期から普及期に掛けては主力のレイアウトアプリケーションだったため、現在でも在版流用や改訂といった場面でQuarkXPressドキュメントを扱いたいと考える人は多いだろう。Quark社では最新バージョンのQuarkXPress 9をリリースするにあたって、過去バージョンを編集作業を施せる状態で完全に、トラブルなく開くことを目標に開発している。「それで前バージョンから2年も経ってしまった」とPG バートレット氏は語るが、それだけに今眠っているQuarkXPress 3.3や4.0時代に作成されたドキュメントを掘り起こし、リスクの少ない電子出版物として蘇らせることも可能なのではないだろうか。