米Appleは3月2日(現地時間)、米Random Houseとの提携で同社の持つ1万7000点の電子書籍がAppleの電子書籍ストアであるiBookstoreで利用可能になると発表した。Random Houseは独Bertelsmann AG傘下の企業で、世界最大手の出版社。いわゆる「6大出版社」の一角を占めており、昨年2010年1月にAppleが初めてiPadを発表した際、iBookstoreへの電子書籍提供で合意した6大出版社の5社のうちの残り1社にあたる。

Random Houseについてはこれまでも、iBookstore参加についてAppleと価格モデルを巡る交渉で長らく対立が続いてきたことが伝えられている。Appleのコンテンツ事業者との提携モデルは、売上に対し7割をコンテンツ事業者、その他諸経費や配信マージンとして3割をAppleが徴収するという、いわゆる「代理店モデル」が採用されている。コンテンツ事業者にとってはシンプルでリスクが少ない半面、価格決定権や販売方法について主導権をAppleに握られるといった面での抵抗も強く、Random Houseもまたこの点で提携を拒んでいたといわれる。

こうした見方がある一方で、業界ではAmazon.comのKindleが電子書籍の販売で圧倒的シェアを獲得するなど躍進を続けており、有力な対抗勢力としてのAppleに期待感を寄せる形でRandom House以外の大手出版社は提携で合意したとされている。実際、9.99ドルが上限だったKindleにおける電子書籍の単価だが、iBookstoreではそれよりやや高い14.99ドルへと価格の上限が引き上げられ、Appleと提携した1社である米MacmillanはAmazon.comのルールを破る形でKindle Editionの価格を引き上げ、最終的にKindle配信での電子書籍価格の上限引き上げを勝ち取ることに成功した。またAppleと合意した出版社らは、Kindleへの牽制だけでなく、純粋に販売ストアをまたいで電子書籍を横展開することが売上増加につながるとの思惑もあったようだ。

Random Houseの発表自体は3月1日に行われており、2日同日に米カリフォルニア州サンフランシスコで行われたiPad 2発表のスペシャルイベントにおいて、Apple CEOのSteve Jobs氏によって正式に大々的なアナウンスが行われている。米Wall Street Journalなどの報道で同件に関するRandom Houseのコメントを総合する限り、同社は昨年末時点で契約に関する諸条件をクリアする一方、最終的にストアの横展開で電子書籍そのものの売上を増やす方針を選んだという。さまざまな思惑こそあれど、まずはビジネスそのものの拡大を図るのが先決という判断が優先したのだと考えられる。