こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。
今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!
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前回はニコニコ動画誕生から2007年末にかけて、とくに「歌ってみた」カテゴリがどのような発展を遂げてきたのかを見ていきました。
今回はその続き、2008年から現在までの流れを追ってみることにしましょう。
……といっても、2008年以降の「歌ってみた」は、ニコニコ動画の肥大化にともなってあちこちに枝分かれしており、全体像をとらえることは非常に困難になっています。
ここではとくにランキング入りしたり、ニコニコ動画からデビューしたりといったユーザーに焦点を絞り、大きな流れを追いかけてみたいと思います。
2008年3月、「歌ってみた」にとってちょっとしたエポックメイキングな出来事が起こりました。
以前にも本連載で取り上げた、「ランティス組曲」の発売です。
これは、ニコニコ動画の人気ユーザー「J」「ゴム」「nayuta」「Re:」「のど飴」「A姉」「yonji」「社長」「サリヤ人」「ゼブラ」を集めて製作された公式CDであり、それまではあくまでも"アマチュアによる遊び"としての範疇に留まっていた「歌ってみた」が、ビジネスとして成立することを証明するターニングポイントになりました。
その一方で、ボーカロイド曲を歌う「ボカロオリジナルを歌ってみた」が「歌ってみた」カテゴリのメインストリームとして定着し、新たなカリスマ的歌い手がブレイクし始めます。
次第に"実力派アーティストによる作品発表の場"としての側面が強くなってきた「歌ってみた」に、ちょうどこの頃からプロのミュージシャンも姿を見せ始めます。
その先駆けとなったのは、男性3人組ユニット「absorb」。もともと2007年頃から「halyosy」「that」「is」という個人名義でニコニコ動画に動画を投稿していた彼らですが、2008年5月には3人がabsorbのメンバーであることを明かし、その後も現在に至るまで積極的に活動を続けています(残念ながらabsorbは昨年12月に解散しています)。
ニコニコ動画で人気の歌い手を集めて製作され、大会議では定番となったニコニコ動画のテーマソング「Smiling」や「桜ノ雨プロジェクト」などは彼らのプロデュースによるもの。
「歌ってみた」の発展の理由を一言で語ることはできませんが、しかし少なくとも当時の盛り上がりに彼らが一役買っていたことは紛れもない事実でしょう。
また、逆にニコニコ動画からプロの世界へと羽ばたいていった歌い手もこの頃から登場し始めました。
「ピコ」「ヤマイ」「らっぷびと」「赤飯」「ゴム」「バルシェ」――彼らはいずれもニコニコ動画で人気を得てメジャーデビューを果たした歌い手たちです。
こうした「歌ってみた」人気は動画内だけに留まらず、2008年夏には東京のディファ有明にて、ニコニコユーザーの手によるライブイベント「NicoNico Summer Live (笑) 2008」が開催。実に1000名もの観客を動員するなど(応募は5000名を超えたのだとか)、ネットとリアルの垣根を越えて「歌ってみた」はさらなる盛り上がりを見せていくことになります。
ここに目をつけたニコニコ動画の運営が、公式イベント「ニコニコ大会議」に多数の人気ユーザーを集め、有料でのライブイベントを行うようになったのは記憶に新しいところでしょう。
そして2011年。
「歌ってみた」は相変わらず「ボカロオリジナルを歌ってみた」を本流としながらも、ニコニコインディーズやモノマネ、替え歌など多方面へと発展し、現在のニコニコ動画の中核を担うジャンルとしての位置をキープし続けています。
90年代のように誰もが同じ曲を聴くのではなく、それぞれがそれぞれに好きな曲を探し出して聴くようになった現代、ニコニコ動画の「歌ってみた」はそんな新しい音楽文化の土壌として定着できるのか。今後も注目していきたいと思います。
勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ
1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。
(タイトルイラスト:3P3P) ※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。 |