人間の平穏な暮らしを脅かす悪霊、悪魔、吸血鬼など、様々な向こう側の存在と戦いながら全米を旅するウィンチェスター兄弟の姿を描いたアメリカの人気テレビドラマ『SUPERNATURAL』シリーズ。この作品が日本のアニメーションスタジオ MADHOUSEの制作で『SUPERNATURAL:THE ANIMATION』として、アニメシリーズ化されることとなった。この作品を監督したMADHOUSEのいしづかあつこ監督に話を訊いた。
いしづかあつこ
大学在学中よりアニメーション作家として活動開始。「DoGA CGアニメコンテスト」、「インディーズ アニメフェスタ」など、様々なコンテストで入賞。2004年、マッドハウス入社。入社当初は制作進行を担当。NHKみんなのうたの諫山実生の『月のワルツ』のアニメーション映像で監督デビュー。その他の監督・演出担当作品に、『青い文学シリーズ(蜘蛛の糸/地獄変)』、『魍魎の匣』、『ピアノの森』など多数
人気の実写ドラマをあえてアニメーションに
――『SUPERNATURAL』は日本でも人気あるシリーズで、オリジナルの世界観もしっかりした作品です。それのアニメ化ということで、驚きました。
いしづかあつこ(以下、いしづか)「『SUPERNATURAL』はドラマの中でも遊びが多い作品なんです。主軸のメインストーリー以外のエピソードも力が入っているし、1話完結でテンポも良い。こういった作品の長所を、アニメでさらに見せられると思いました。超常現象を描くという部分でもアニメという手法は最適だと思います」
――アニメだからこそ挑戦できる部分もあると思うのですが。
いしづか「アニメにおける、人の感情や恐怖表現に関して、画の力、背景美術の力は非常に大きいんです。ドラマのように役者の演技で伝えるというのが、アニメでは難しいので、この作品では背景でそれを伝えようと挑戦しました」
『SUPERNATURAL:THE ANIMATION』
『SUPERNATURAL:THE ANIMATION』では、独自の解釈や描写も加えつつ、実写版のシーズン2までが、全22話で描かれる |
――背景美術に関する発言が出ましたが、作品の舞台はオリジナルに忠実なのですか。
いしづか「エピソード上、オリジナルから動かせない場所はありますが、その場所ではなくても成立する話では、よりドラマが盛り上がる/緊迫感があるという判断で、まったくオリジナルとは違う場所にしたエピソードもあります」
――具体的には、どのような変更があったのでしょう。
いしづか「シーズン1の最終回は、オリジナルでは人気のない山小屋でクライマックスの対決を迎えるのですが、アニメ版の場合は、大都会に変更してあります」
――それは大胆なアレンジですね。
いしづか「狭い山小屋の閉塞感を出したくても、アニメの画ではただの地味な壁が背景に描かれるだけになってしまいます。そこであえて、NYのマンハッタンに舞台を変更しました。結果、オリジナルとは違うスケール感が出せたと思います。全人類の運命がかかっているかもしれない闘いを描いているので、街の中を舞台にしたことによって、より身近でリアルな感じも出せたと思います」