巨匠監督の演出を誰よりも近くで見て映画を学んだ
――呉監督はどのようにして映画監督になったのでしょうか。
呉「大学在学中から、映画のプロの現場を見たいという気持ちがあったんです。そこで、大林宣彦監督にお願いしたら、助監督見習いで雇ってくださったんです」
――実際の映画の現場はどうでしたか。
呉「真夏だったのですが、『寝れない、帰れない、お風呂に入れない』という凄い状況でした(笑)。その流れで、現場で映画監督の発言やアイデアをメモする秘書的な役割、スクリプターという仕事をやることになったんです」
――当時から映画監督を目指していたのですか。
呉「目指してなかったですね。何か作りたい気持ちはありましたが、まさか映画監督になれるとは思っていませんでした。ただ、スクリプターをやっていると、映画監督が役者やスタッフに様々な指示を出している姿を誰よりも一番近くで見れるんです」
――それは、なかなか出来ない貴重な体験ですね。
呉「そこで、大林監督の演出や意向に納得したり、逆に『私なら、違う演出をするかな』とか思うこともあったんです(笑)。それから、映画監督という職業に強い関心が出てきました。それで、25歳で脚本を書き始めて、1年後に『酒井家のしあわせ』の脚本がサンダンスで認められました」
――非常に良い流れで映画監督になられたという印象があります。
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呉「自分でもラッキーだと思います。映画監督には運でなれた部分もあると思うんで、その運を誰よりも大切にしたいと思っています。ただ、1本は誰でも監督出来ると思うのですが、映画監督を続けていくのは大変なことだと実感しています」
――前作から近作まで3年間の期間がありますね。呉監督は、「好きな作品を時間をかけて選んで作る」というタイプの監督なのでしょうか。
呉「まだ、好きな物だけ撮っていくのか、職業監督的にコンスタントに作品を撮っていくのか、そのスタンスでは悩んでいます」
――次作は、もう少し早く観させていただけると、嬉しいです。
呉「ただ、映画を1本監督するには、凄い精神力や体力が必要なので、その高いモチベーションに自分自身を持っていけるような作品を選ばないとならないとは思います。そこに嘘はつけませんから」
撮影:石井健