「Photoshop」の未来の姿
講演では「Superstition(迷信)」というコードネームだけが明かされた次期バージョン。「Photoshop CS5」の新機能が盛りだくさんだっただけに、それを凌駕するツールをリリースするのはかなり大変なのではないだろうか。機能はそのまま、作業効率の向上をさらに計るという方向性も考えられるのだが……。
「どうでしょうね。コンピュータの進化により、従来なら演算に時間がかかりすぎると思われていたアルゴリズムの利用も現実味を帯びてきていますし、アドビには世界中の画像処理アルゴリズムの研究者との繋がりもあります。ですから、その辺のアイデアを商品化する可能性はあると思います。実は『コンテンツに応じた塗り』もそんな関係から生まれた機能ですからね。でも、現時点ではどれだけのアイデアがあるかは把握できていない状態です」
Webやスマートフォンのための「Photoshop」
また、Webやスマートフォンといった新たなデバイスにも、Photoshopのアルゴリズムを組み込んでいきたいと語っていたノール氏。具体的にはどんなことが考えられるのか。
「現在は、新たなデバイスにどんな画像処理方法が適当か考えているところです。Photoshop 1.0時代のコンピュータと今の携帯なら携帯の方が処理速度が速いので、当時のPhotoshopがやっていたような画像処理も携帯でできるはずですし。ちなみに、スマートフォン用にリリースされている『Adobe Photoshop Express』には、私自身は関わっていないのですが、Photoshopを参考にしたUIなので進化の歴史を見ることができます。Photoshop 1.0時代からほぼ変わっていない機能もありますから、画像処理を行う上で理解すべき基本も学べると思いますよ」
今後の展望に関しては方向性の提示に留まったが、過去の履歴からしてもクリエイティビティを喚起するような内容となるに違いない。最後にノール氏からメッセージをいただいた。
「私がPhotoshopを開発できたのは、当時、自分が関わっていた仕事より遙かに楽しい作業だったからなんです。そんなところから生まれたツールですので、みなさんもぜひ楽しみながら使ってほしいですね」
撮影:清水敬士