米Appleは2月15日 (現地時間)、iTunes App Storeでのサブスクリプション(定期購読)サービスの提供開始を発表した。これは2月2日(同)に登場したiPad専用日刊紙「The Daily」でNews Corp.が採用したApp Storeの定期購読課金サービスと同じもので、同日よりiOSアプリを用いてコンテンツ(雑誌、新聞、ビデオ、音楽など)を提供する全てのパブリッシャが利用できるようになった。
App Storeのサブスクリプションは、ユーザーにとっては分かりやすく安心して使えるサービスと言える。App Store内からのコンテンツのサブスクリプションは、iOSアプリのアプリ内購入に用いられているのと同じApp Storeの課金システムを通じて、サブスクリプション期間を選択するだけで簡単に契約できる。サブスクリプション状況は個人アカウントぺージで確認・管理でき、同ページから自動更新をいつでもキャンセル可能。またパブリッシャーへの個人情報(名前、Eメールアドレス、郵便番号など)提供をユーザー自身が選択できるオプションが用意されている。米国の雑誌の定期購読で消費者が不満に思っている面倒な解約、契約後に舞い込むセールスや勧誘などを避けられる仕組みだ。
一方、パブリッシャーに対してはいくつかの制限が設定されている。App Storeを通じてユーザーがコンテンツのサブスクリプション契約に至った場合、iOSアプリ販売と同じように売上げの30%がAppleの取り分になる。パブリッシャを通じた契約の場合は、売上げの全額がパブリッシャに支払われる。例えばパブリッシャのWebサイトを通じたデジタル版サブスクリプションの販売、既存の雑誌定期購読に対するデジタル版への無料アクセス提供などは、トランザクションにAppleが関与していないため売上分配の対象にはならない。ただしアプリの外でデジタルサブスクリプションを販売する場合、同じサブスクリプションをiOSアプリ内でも同額またはより低価格で提供することをAppleは課している。またパブリッシャに対して、アプリ外でユーザーがコンテンツやサブスクリプションを購入できるようにするアプリからのリンクの提供を禁じた。
iOSデバイス市場、iTunesにクレジットカードを登録しているユーザー数、課金・配信まですべてが揃ったストアシステムなどはパブリッシャにとって大きな魅力である。しかしApp Storeのサブスクリプションサービスはユーザーにとって使いやすい仕組みだけに、iOSアプリ内で契約したサブスクライバーをパブリッシャが取り込むのは難しい。加えてiOSアプリ内契約者の情報の収集も制限されており、サブスクライバーを自身で管理したいと望むパブリッシャにとっては厳しい条件と言える。