Mozillaは、2月8日にFirefox 4.0β11をリリースした。今回のリリースでは、ユーザーのプライバシーを保護する「Do Not Track」機能が実装された。これ以外にも、多くのバグフィックスなどとともに、改良が行われている。
図1 β版のダウンロードサイト |
「Do Not Track」機能とは
「Do Not Track」機能の背景を紹介しよう。2003年まで遡るが、当時、米国連邦取引委員会(FTC)が、勧誘電話などを遮断するために「Do Not Call(電話勧誘拒否)」リストという制度が制定された。このリストに電話番号を登録すると、商品や営業に絡む一切の勧誘電話がかかってこなくなるというものだ。この制度の評判は高く、インターネット版として登場したのが、Do Not Track機能である。その内容などについては、2010年12月にFTCより発表された。
図2 FTCのDo Not Trackについての発表 |
Mozillaでは、ユーザーのプライバシー保護の観点から、実装したとのことである。これまでは、ユーザーがWebサイトを閲覧する際に、そのユーザーがどのような行動をとったのかといった情報が収集されていた。これらのオンライン行動の多くは、その内容を分析することで、ターゲット広告に利用されることなどが目的の1つとして存在する。ユーザーの好みに即した広告を提供することで、より広告の効果を高めるねらいがある。
それ以外にも、ユーザーに適したコンテンツやサービスの提供にも使われる。しかし、FTPなどが危惧するのは、ユーザーの許諾なく情報収集が行われるなど、オンライン行動の情報収集の方法が不透明な点にあると指摘している。そこで、オンライン行動の追跡を拒否するという仕組みである。Firefox 4.0β11では、Firefox[ツール]メニューの[オプション]→[詳細]→[一般]タブで設定する(図3)。
ここにある[Tell web sites I do not want to be tracked]にチェックを入れるだけである(正式版では、日本語になると思われる)。この結果、オンライン行動の追跡を拒否するHTTPヘッダ(DNTヘッダー)が、Webサーバに送信される。その流れを解説したものが、図4である。
図4 Do Not Trackを設定した場合の流れ(Mozillaのプライバシー責任者Alex Fowler氏のブログより) |
HTTPヘッダーを受け取ったWebサーバはオンライン行動は追跡せず、普通にWebページを表示する。広告サーバは特定個人向けの広告をださないといったことになる。現時点では、この機能自体が新しいものであり、今後、サーバ側の対応が必要になってくる。したがって、現時点ではユーザーにとっては、Webサイトの閲覧に関しては、大きな変化を感じることはないであろう。今後については、一部のブラウザベンダーなどでは、同じような広告や興味のない広告が表示されるようになると指摘する意見もある。
同様な方法として、広告配信用のCookieなども存在している(オプトアウトすることで、無効にすることができる)。上述のように、実際にはWebサーバがどのように対応するか、また他のサービスなどとの関連、各Webブラウザの実装方式も注目される(バラバラな方法で実装されると、効果が期待できない可能性がある)。さらに、広告を扱うWebサイトは非常に多い。広告のあり方なども変化する可能性を含んでいる。Firefox 4.0のみならず、Web環境の今後の動きも含めて注目したい。
その他のβ11の変更点
Do Not Track以外の変更点も見ていこう。まずはabout:home画面が大きく変更された。
この画面が、正式版で採用されるのか、少し興味深い。また、接続状況を表示するようになった。
ここでは、「journal.mycom.co.jpを読み込みました...」とオーバレイ表示されている。接続が完了すると、これらのメッセージは消える。さて、Firefox 4.0β11の変更点をざっと見てきたが、安定性なども向上してきており、正式版が待たれる。