次々と記録を塗り替え、既に社会現象とも言えるほどの人気を集めているアイドルグループ「AKB48」。進化を続けるAKB48の生の姿を記録したドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』が公開中だ。この作品を手掛けた寒竹ゆり監督に話を訊いた。
寒竹ゆり 映画監督・脚本家
1982年生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部在学中に岩井俊二監督にシナリオを送り、ラジオドラマ『ラッセ・ハルストレムがうまく言えない』で脚本家デビュー。同監督に師事し、映画やCF等の監督助手を務めたのち、佐藤健、上野樹里らのDVD作品を手掛ける。2009年、『天使の恋』で劇場映画初監督。以後、MVやTVドラマの脚本・演出を手掛けるなど、幅広く活動。
AKB48のメンバー自身のためのドキュメンタリー
――寒竹監督は、『天使の恋』でも少女を魅力的に描かれていました。今回の作品は、意外にもドキュメンタリーですが、どのような経緯で本作を監督することになったのでしょうか。
寒竹ゆり(以下、寒竹)「岩井俊二さんがAKB48の『桜の栞』のPVを撮った時、ドキュメンタリータッチで撮りたいという構想があったそうなのですが、実現しませんでした。私はこれまでに映画のメイキングや、女優さんのDVDも監督していたので、その流れで今回のお話を頂きました」
――AKB48に関して、寒竹監督はどの程度詳しいのでしょうか。
寒竹「このお話をお受けする前は、世間一般の方々と同じ程度だったと思います。メンバー全員の名前を覚えているとか、いうことはなかったです」
――今回のようなドキュメンタリーの場合、AKB48の現象を追うというのが正攻法だと思うのですが、この映画では何人かのメンバーにフォーカスするという形になっていました。最初からそのような方向性で撮影されたのでしょうか。
寒竹「最初は決めていませんでした。ただ、NHKで放送されたテレビ版ドキュメンタリーもあったので、映画として棲み分けをする必要はありました。この映画のために、AKB48の1,000本以上ある膨大な記録映像を3カ月かけて見ていて、テレビ版のような作りをする方が間口が広いというのはわかっていました。ただ、劇場で観る映画として作る場合、それで良いのだろうかという思いもありました。今、この時期にAKB48の映画を作る必然性や意義も考えました。この作品には、『10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』という副題がありますが、メンバーの皆さんと接していくうちに作品の方向性として、"AKB48の彼女たちのために作るのが良いのではないか"という気持ちになりました。それを観たファンの方々にも喜んでいただけたらと思いました」
――あらかじめ存在した記録映像以外で、監督が撮りおろした部分はどのぐらいあったのでしょうか。
寒竹「インタビュー部分を15人分撮ったのですが、ひとりにつき1時間半以上かけて撮影させていただきました。また、インタビュー以外の部分でも、かなりの時間を撮影させていただいています」
――インタビューに登場する15人は、どのように選ばれたのでしょうか。
寒竹「私が選ばせていただきました。人気があるメンバーを選ぶという基準もなかったですし、オーダーとしても『誰をピックアップしてくれ』というものはありませんでした。この作品の、もう1本の縦軸として秋葉原の劇場で行われているチーム公演を描こうと思っていたので、それを描くために外せないメンバーをピックアップしてインタビューしていくうちに、当初10人前後の予定が、どうしてもインタビューしたいメンバーが増えていき、最終的に15人になりました」