金沢市の森源二副市長の力強い挨拶で始まったeAT'11、そのオープニングを飾るプログラムは、毎年秋口から応募が開始される「イートアワード作品」の表彰式。動画、グラフィック、ミュージック、キャラクターの各部門と、小学生から高校生までを対象とした同アワードジュニア部門があり、各優秀賞に輝いた作品の上映と壇上での授賞式が執り行われた。
ジュニア部門のテーマは「笑い」で、総数3433点の応募があった。金沢美術工芸大学・村中稔教授は、「どれもストレートに笑いが表現された作品が多く、感動した」と講評し、会場からはあたたかい拍手と笑顔に包まれた。また壇上では、イート審査員のほか、フォーラムおよびセミナーのゲストの面々(しりあがり寿氏、明和電機の土佐氏、浦沢直樹氏など)とともに受賞者との記念撮影が行われた。
続いて一般部門の表彰式が行われた。募集テーマは「創造都市金沢」。各部門の優秀作品賞に輝いた作者にはアワードの審査員から楯と副賞が授与された。
そして、エレクトロニック・アートの分野でめざましい貢献をしたクリエイターに敬意をこめて表彰する名人賞には、今回、建築家でありデザイナーの鄭秀和(テイ・シュウワ)氏が選ばれた。デザイン家電「amanada」のデザイナーであり、文具から建築物に至るまで、住空間すべてのデザインを手がけている。鄭氏は今後、金沢で受賞記念制作に取り組んでもらうことになる。
表彰式では、eAT'10で名人賞を受賞したリリー・フランキー氏がプレゼンターとして登場した。授与式の後、リリー氏が昨年から取り組んでいる加賀繍の進行状況に関して、eAT実行委員長であるCMディレクターの中島信也氏との掛け合いで報告された。
中島信也「ぎりぎり(授賞式に)間に合いましたねえ」
リリー・フランキー「羽田から金沢(小松空港)行の飛行機に乗り遅れ、富山空港経由で会場に駆けつけました」
中島「友禅の着物に加賀繍を施す名人賞受賞記念制作の進捗は?」
リリー「おでんくんをモチーフにしたデザイン画をちょうど(加賀刺繍協同組合の担当者さんに)送りかけている状態です」
中島「ということは、まだできていないと?」
リリー「金沢の伝統工芸ですから、そこはじっくり時間をかけて」
中島「できれば、前に進んでほしい」
絶妙なトークが会場を大いに盛り上げた。
さて、eAT'11名人賞受賞記念講演では、'11の名人賞受賞者の鄭秀和氏と宮田人司実行委員による記念トークが行われた。
鄭氏にとってのデザインは「挑戦」が一貫したテーマであり、いつもゼロを1にするよう挑んでいるという。住空間で家電をデザインするというコンセプトのもと、自分が届けたいと思う人に確実に届けるにはどうすればよいかを考え、結果、amanadaというブランドでは、これまでの家電とは一線を画す、流通からデザインを仕掛けていった。
この過程において、実績も経験もない自分が新規参入するための苦労や挑戦には、とてつもない努力と工夫が必要だし、一方でまたデザインのみならずモノづくりの大変さを身に染みて学んだ。
現在はバリ島で村づくりに挑んでいる。三重県では重要文化財の中で、時間をつなげるリノベーションにもチャレンジしている。鄭氏は「受賞記念制作で何を作るかはまだ決めていないが、金沢は私の好きな街の1つであり、とても楽しみにしている」と意気込みを述べた。