冬晴れの気持いい朝、早起きをして中央線に揺られる。快晴の休日とあって、奥多摩方面に向かう始発列車は、大きなザックを背負った登山者たちで超満員。なかにはカラフルなウェアに身を包んだ「山ガール」たちの姿も目立つ。奥多摩駅の少し手前にある「軍畑(いくさばた)」駅で下りると、小さな無人駅に老若男女、20人ほどの登山グループがわいわいと集っていた。

こちらが「無名山塾」塾長の岩崎元郎さん。60代になってもほぼ毎日のように山に登っておられるとか。みんなのアイドル的存在

じつは今日は無名山塾主催の「奥多摩PROTREK体験ツアー」。アウトドアウオッチ「PROTREK PRW-5000」の機能を、山好きの方々と一緒に山を歩きながら体感してみようという企画なのだ。今回モニターとして集まってくれたのは、山岳会「無名山塾」のみなさん。「無名山塾」とは中高年の方々の登山ブームの火付け役ともいわれる、登山家の岩崎元郎氏が主宰する山岳会。年齢、経験を問わず、低い山も高い山も、岩も雪も、好きな山を楽しく登れる知識と技術を学べるとあって、老若男女、多くの会員をもつ会なのだ。

今回のツアーには、PROTREKシリーズの開発者であるカシオ計算機の牛山和人さんも同行。何をかくそうこの牛山さん、PROTREKの開発のためには山を知らなければならない! と、一念発起して「無名山塾」の門を叩いたというツワモノ。塾長の岩崎先生とは子弟関係にあり、岩崎さんはPROTREKシリーズ開発のアドバイザーでもあるのだ。

牛山さんいわく、今回のツアーで体感してもらいたい機能は

(1)方位計
(2)高度計

だそう。

牛山「PROTREK PRW-5000の最大の特徴は、アナログインジケーターを採用したことです。独立駆動のインジケーター針によって、方位、気圧、高度を数値情報としてではなく、視覚的に把握できるようになりました。アウトドアスポーツでは、時刻をアナログ針で把握したいというユーザーも多く、こうした視認性の高さはとても重要です」

というわけで、塾長の岩崎さん、PROTREKの機能を体感するために今日登るのは、 いったいどんな山なんでしょう?

岩崎「今回目指すのは、標高969メートルの棒ノ折山です。山頂からの展望が素晴らしく、都心の高層ビル群まで見渡せますよ。途中、高水三山と呼ばれる3つ山のうち、高水山(たかみずさん・759メートル)と岩茸石山(いわたけいしやま・793メートル)の2つの山を越えていきます。地図上に標高が表記されているポイントが要所要所に出てくるので、高度計の使い方をマスターするのにうってつけです」

ということで、出発前にまず高度計の高度を合わせることに。牛山さんが持ってきてくれた地形図を見せてもらうと、駅周辺の高度は250メートル。何もせずに高度計で高度を測ってみると270メートルとズレが…。

駅前にて、まずは高度計のチェック。標高250メートルに高度を合わせなくてはいけないのだけれど、まだ使い方がよくわかりませーん!

カシオ計算機の方に教えてもらい、私もなんとか高度を250メートルに設定。文字盤の右側に3つあるボタンが、上から方位、気圧、高度計。3種の神器!

牛山「高度計は気圧を元に換算しているので、気圧配置が変わると、高度計の数値は変わります。必ず、山に入る前はどこか標高のわかる場所で正確な高度に合わせることが重要。さらに歩いているうちにも気圧は変化しますから、山頂や山小屋など、正確な高度が分かる場所で、その都度微調整することで、高度計を正確に保つことができます」

なるほど、時計に任せっぱなしで高度がわかるというわけではないのですね…。

岩崎「じゃあまずは、次に標高がわかるポイント、標高400メートル地点にある堰堤を目標にして歩きはじめましょう。そこでもう一度高度計をチェックしてみましょう」

奥多摩線の軍畑駅が登山のスタート地点。駅から歩いて登山口までアクセスできる棒ノ折山は、気軽に登れるとあって人気の低山

準備体操をして、いざハイキングスタート。駅からは川沿いの舗装道路を歩き、登山口へと入る。低山と聞いていたから、のんきな山歩きかと思っていたのに、想像以上の急坂&階段に息があがってしまう。15分もかからないうちに大きな堰堤が見えてきた。高度は410メートルと表示した。さっきと比べて確実に高度があがっていることがわかると、なんだかやる気が湧いてくる!

岩崎「高度計は、自分がどれくらいの高さを登ってきたかを知れることはもちろん、歩行時間と合わせて考えると、自分がどの程度のペースで山を登っているかも知ることができます。この場合なら、標高差150メートルを15分程度で登ったことになる。自分が1時間でどれくらいの標高差を歩けるか、ざっくりでも把握していれば、自分の体力にあった、安全な登山計画を立てることができます」

たしかに、山の地図に書いているコースタイムはあくまで標準のもの。自分がどの程度のペースで歩けるのかを知っていれば、無理なく行程を組めて安心だ。高度計はただ高度を知るためだけのモノではなく、いろいろ使い道があるのだ。

いざ、登山スタート。はじめのうちは舗装道路を歩く。でもけっこう傾斜がキツくて、少し不安に…。参加者は20代~70代までと3世代です

その後も、要所要所で高度計のチェックをしながら、高水山の山頂を目指す。 うっそうとした森の中に続く登山道は、延々と上まで続いていて、果てしない。

本格的な登山道に入って、傾斜はさらに急になる。ツライときは高度計を見て…と心のなかで念仏のように唱えながら、ひたすら登る

牛山「登りがキツくてツライときに、オススメの使い方があります。高度計モードでフロントのアジャストボタンを押すと、インジケーター針(時刻モード時は秒針)が3時の位置に設定されます。これで今いる地点を0mに設定できます。高度が上がるに従って、インジケーター針も上がってくるので、自分がリアルタイムに何メートル登っているかが視覚的にわかります。これはかなりモチベーションアップになりますよ」

たしかに! 歩けば歩くほど高度計のインジケーター針が上がってくるから、ゲーム感覚でどんどん歩けるような気がする。心が折れそうなときは、高度計を見ればいいのだ!

その後、息切れして立ち止まっては高度計に励まされ、なんとか標高759メートルの高水山に到着。このころにはもう、参加者全員に「高度計チェック」の習慣がついていて、岩崎さんに言われなくても、各自自主的に高度計を合わせられるようになっていた。

地形図を使って、次なる標高チェックポイントを探す。高度を見るにも、方位を見るにも、地形図は必携のアイテム

牛山「高度計を使いこなせるようになったら、次は方位計の使い方を実践してみましょう。アナログモデルのPROTREK PRW-5000は、秒針がそのまま方位計の役割を果たします。方位計ボタンを押すと、秒針が真北を指してくれます」

行程も半ばになると、各自自主的に高度や方位をチェックするようになる。岩崎先生も真剣な表情

登山経験の浅い女性も、方位計と地形図を使って地図読みにチャレンジ!

岩崎「これは初心者にもってこいの機能! ふつうのコンパスが指すのは"磁北"といって、真北から少しズレた北です。だから、地形図とコンパスを使って現在地を把握するためには、あらかじめ地形図に"磁北線"という線を引いてこなくちゃいけないんです。これが初心者にとってはかなり億劫な作業。PROTREKの方位計も磁北を示しますが、あらかじめ磁気偏角補正機能を使うと、ワンタッチで真北がわかるので、誰でも簡単に地図読みができるんです」

高水山への分岐。こうした分岐は地図上に標高の表記があることが多いので、高度計を合わせるポイントにもなる

ためしに地形図とPROTREK PRW-5000を使って地図読みをしてみると… なんとも簡単! 秒針が指す方向に地図の北を合わせるだけ。これなら、自分が今どこへ向かおうとしているのか、さっと確認できる。

高水山の山頂ちかくにある常福院。棒ノ折山まで、途中トイレがあるのはここだけなので、しっかりトイレをすませましょう

つきました! ひとつめのピーク、高水山。標高は759メートル

そして、山頂での私の高度計は750メートルを示す。岩崎先生いわく、10メートル以内の差は許容範囲だそう

気が早いけど、高水山で記念撮影! この日はひとり1個、PRW-5000が貸し出された

高度と方位。これまでほとんど気にせず山に登っていたけれど、この2つがわかるようになると、ただダラダラ歩いていた山が、なんだか少し立体的に見えてきたような気がした。

棒ノ折山に向かって、見晴らしのいい尾根を歩く。右手には東京の街並みが

「あっちに見えるのはどこの山?」そんなときも方位計と地図を使えば、遠くの山の名前だってわかる。「あれはー…丹沢?」

高度計と方位計をあちこちで使いながら歩いていたら、あっという間に最終目的地の棒ノ折山についてしまった。山頂からは遠く都心の高層ビル群や、天に向かって伸びる東京スカイツリーまで見える。空気の澄んだ冬ならではの景色だ。

棒ノ折山からは東京の高層ビル群が。建設中の東京スカイツリーが、小指くらいの大きさに見えた

棒ノ折山の山頂は、広場のような開けた場所。標高は969メートル

そして、私の高度計は975メートルを示す。高度計は気圧を元にしているので、登山中の高度差を把握して自分のペースを確認したり、現在位置の高度の目安として使う

山頂では、みな思い思いに昼食。
「下山時は、各自今日学んだことを実践してみてください」という牛山さんの課題をもって、山を下りることにした。

下山中道は急な下りがえんえんと続く、ちょっとツライ道。
でも、高度計があれば大丈夫。5分歩くたびに50メートルずつ下がっていく高度。
「あと300…200…」と刻みながら下っていけば、いつもみたいに「日没までに下山できるだろうか…」なんていらぬ心配をする必要もない。

ご夫婦で参加していた2人は、持参したPROTREKでペアルック。上が「PROTREK PRW-5000Y-1JF」、下が「PROTREK PRG-110CJ-9JF」

高度や方位を知ることは、これまで以上に山を安全に、そして自由に歩くことにつながる。今回のPROTREK PRW-5000体験ツアーを通して、身をもって知った。「自分は低い山しか歩かないから高機能時計なんて必要ない」。そんな風に思っている方々、山に低いも高いもありません! 安全で楽しい登山のために、一度高度計や方位計の付いた時計と一緒に山に登ってみてください。新しい山の世界が開くこと、間違いなしですよ!