iAd

高い効果や従来にないタイプの広告であることが評価を受けるAppleの「iAd」だが、一方で広告クリエイティブに関してAppleと広告主とのトラブルがたびたび伝えられたり、100万ドル以上といわれるイニシャルコストの高さが出稿時のハードルとなるなど、両極端の評価がある。これに関して、Appleとスープ缶で有名なCampbell's(キャンベル)の両社が行ったiAd利用後のブランディング調査結果が話題となっている。

この調査はAppleとCampbell'sが共同で行い、テレビ視聴率調査などでもお馴染みのNielsenがデータをとりまとめたものだ。iAdは2010年7月のスタートから7カ月が経過し、初期の広告出稿フェイズが一巡した段階にある。そのため、次の広告集めに向けて企業や広告代理店に対して説明資料を用意する必要があり、こうした広告効果を示す測定データをまとめたわけだ。調査の結果はクローズドな内部資料として一般には公開されていないが、Advertising Age (AdAge)がその一部を報告している

それによれば、Campbell'sが用意したiAdの1種類はその露出効果がテレビ広告に比べて2倍ほど高く、さらに「Campbell's」というブランドの認知度でいえばiAdはテレビに比べて5倍の効果があったというのだ。さらにiAdに反応したユーザーは、Campbell's製品の購入意向がテレビの4倍ほど高く、さらに広告に好意的な印象を持っている割合が5倍になったという。これらは、5週間にわたってNielsenによって調査されたもので、テレビについては従来のNielsenの手法で、iAdの測定については各種アプリを通しての計測で行ったという。

もともと、iAdはアプリ内にバナーを表示してそれをクリックしたユーザーを「より動作が重い」広告の本体へと誘導し、そこでプロモーションを行う形態をとっている。そのため、iAdをクリックすることは「すでにその商品やサービスに興味を持っている、あるいは興味を持ってより詳細に情報を知りたい」と考えるユーザーである可能性が高い。漠然とバナーを表示してユーザーを別サイトに誘導したり、TVでスポット広告を流すよりも、このようにユーザーのプレミア率が高くなるのは必然かもしれない。Campbell'sの例では、今回のiAd広告制作にあたって広告代理店のBBDOが協力し、各種スープの新製品を紹介するとともに、料理レシピの紹介、クーポンの表示、新しく作り直した同社のiPhoneアプリをダウンロードするためのリンクを付与したものだったという。そうして5,300万インプレッションのうち、およそ1%のユーザーが実際にクリックして広告本体へと誘導され、約1分にわたって広告内に滞在したようだ。

とはいえ、前述のようにiAdの最初のハードルはその出稿コストの高さだ。クリエイティブを作る難易度(Appleが深く介入するといわれている)のほか、ローンチカスタマーということでのプレミアを差し引いても、最低コストが100万ドルというのは非常に高い(一部顧客はさらにその10倍は払ったといわれている)。これは後に段階的に下がってくることがあっても、競合の広告サービスと比べても1-2桁は数字が違う。またプロモーション対象がiOSユーザーに限定されることもあり、今後どのようにこの効果の高さをうまくアピールできるかが鍵となるだろう。