米New York Timesが間もなく同社オンライン版コンテンツの有料課金へと移行するが、これに関する詳細を同社ではまだ明らかにしていない。だがWall Street JournalやBloomberg Newsなど、複数の報道機関が関係者からの話として「月額20ドル未満」という、現在Amazon.comのKindleで閲覧可能な電子ペーパー版紙面の価格を下回る課金額が想定されている話を紹介している。
New York Times (NYT)のオンライン版サイト、通称「NTTimes.com」が有料課金型へと移行することは昨年1月のタイミングで明らかにされたが、このたび1年の時を経て正式に有料化へと移行することになる。課金方法については同社の今年1月21日付けの記事で明らかにされており、Webサイト上の記事に対して一定回数までのアクセスは無料で、それを超過するとユーザー登録なしでのアクセスは不可能になる。課金は一律フラットの料金設定で、以後は無制限での記事へのアクセスが可能。こうした回数カウント方式で一般ユーザーにも記事を開放するやり方は、英Financial Timesなどがすでに導入している。だがNYTでは何回の閲覧で課金が発生するのか、また月額料金がいくらに設定されるのかなどは不明で、正確な開始日時を含めたこの詳細に注目が集まっていた。
だがBloomberg Newsの21日同日に伝えた情報によれば、関係者の話としてKindle版の19.99ドルを下回る設定になる見込みだという。またWall Street Journal本紙も24日付けの紙面でこの件に触れており、NYTの課金メニューには「バンドル版」と「Webオンリー版」の2種類が存在し、バンドル版が20ドル前後、Webオンリー版がそのさらに半分程度になる見込みとの関係者の話を紹介している。バンドル版が何を意味するのか不明だが、おそらくPCやiPadなどデバイス向けの専用リーダーで閲覧できるフル紙面版のことを指すとみられる。つまりWebのみの閲覧であれば月額10ドル程度、専用リーダーを利用するのであれば20ドルでWeb版の記事も閲覧可能になる。実際、NYTは最近になりiPad版アプリの更新で記事へのフルアクセスを可能にしており、このバンドル提供に向けた下準備なのだとみられる。また紙面購読者については、特に追加料金の支払いなしにWeb版へのフルアクセスが可能だ。
Webの有料課金への移行に際して、NYTではかなり入念にバランスをとって価格設定を行っている。専用リーダーの「TImes Reader」の月額課金が20ドルなのに合わせ、20~30ドル程度の価格を主張する派閥と、より多くの読者を取り込むべくその半分の10ドル程度の課金を主張する勢力とが存在していたといわれるが、最終的にはこの両方の意見を反映した形で落ち着いたようだ。またライトユーザーや新規読者を取り込むための回数カウント方式を取り入れ、頻繁にアクセスするようなユーザーからはある程度の料金をもらうという形で違和感のないようにしている。paidContentでは24日、NYTオーナーのArthur Sulzberger Jr. 氏の「フリーインターネットの世界から消えようとしているのではない。強固な壁を作るのではなく、Googleからの防波堤にするためだ」とのコメントを紹介している。検索エンジンからの誘導トラフィックの効果を認めながらも、それらが売上に結びつかない現状に対し、一定のラインを引くのが狙いのようだ。