米Amazon.comは1月21日(現地時間)、同社の電子出版プラットフォーム「Kindle Digital Text Platform (DTP)」の70%ロイヤリティプログラムの対象地域をカナダに拡大した。さらにDTPの名称変更も同日に発表されており、「Kindle Direct Publishing」というサービスの内容を直球で表現するものとなった。次世代の標準プラットフォームを巡り、大手の動きが加速しつつある。
Kindle DTPは、個人筆者などが書籍データを自らアップロードしてAmazon.com内のストアでKindle Editionの電子書籍が販売可能になるツールだ。個人の自費出版だけでなく、作家として独り立ちした人物らを招き、流通網を提供することで出版社を介さずに直接取引を行うことも想定している。その最大の特徴は「70% Royalty Option」と呼ばれるロイヤリティプログラムの存在で、従来は35%程度だった電子書籍における筆者の印税取り分を一気に70%まで引き上げ、可能な限り著者に還元しようという試みにある。売上から3割を引き、そこからさらに販売コストを差し引いた額が筆者に支払われるため、価格設定にもよるが、通常の紙の出版における1割程度の印税に比べれば筆者にとってメリットが大きいというのがAmazon.com側のアピールポイントだ。そして、これが筆者を出版社から引き離す戦略の一種だと指摘される理由でもある。
そうした経緯もあり、Kindle DTPからKindle Direct Publishing (KDP)への名称変更は、より実態を反映した名称だともいえる。今回、KDPによる70%ロイヤリティ対象地域がカナダに拡大されたことで、今後さらに世界展開に向けた筆者へのアプローチ作戦が強化されることになるだろう。