レノボ・ジャパンは1月19日、Facebookのレノボ・ジャパン公式ファンページで募集した一般ユーザーを対象に、今年の1月上旬に行われたCES 2011の同社展示の報告や、次世代ThinkPadで搭載予定の新技術の詳細などを披露するイベントを開催した。レノボと"ファン"とが直に交流するという趣旨のイベントであり、当日は会場に集まれなかったファン向けに、USTREAMや各種SNSを利用したイベントのライブ中継も実施されている。

レノボが一般のファンを集めたイベント。内容はUSTREAMでもライブ中継された

司会もレノボのスタッフでなく、ソーシャルメディア研究所の熊坂氏(写真中央)が担当

イベントは、前述の公式ファンページのスタートに際しコンサルタントの役割を果たした、ソーシャルメディア研究所代表取締役の熊坂仁美氏がメイン司会を努める中で進行。まずは、今年のCES 2011にbloggerとして参加したアジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏が登場し、今回のイベントに集まったファンに向けて、CES 2011でのLenovoブースの展示内容を中心に、CES 2011の模様をレポートした。

アジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏がCES 2011をレポート。現地のLenovoスタッフの様子から「Lenovoではパソコンが、IBMの頃の一事業部門ではなく、パソコン中心の会社になったから、スタッフがとにかく楽しんでやってるのが感じられた」という

「CESはうんざりするほど(笑)の広さと群集だった」(徳力氏)。筆者もCES 2011に参加していたが、確かに今年の人出は大変なもので、会場内をただ歩くだけでもひと苦労。昨年までは経済危機後の沈みがちなCESもあっただけに、盛り上がりが際立っていた

徳力氏がもともとblogやTwitterのマーケティング支援の専門家であることもあり、今回の同レポートが、FlickrとYoutubeなどを効果的に駆使したものとなっていたのが印象的だった

レノボ・ジャパン 製品マーケティング ビジネス・マネージャー ThinkPad製品の土居憲太郎氏も登壇していた。集まったレノボ"ファン"にThinkPadの歴史などを紹介

大和の技術者が「Enhanced Experience 2.0」を解説

続いては、レノボ・ジャパンのThinkPad開発拠点である大和研究所の、TVT・ノートブックSW開発 第一TVT開発主任 開発技術担当部員の金子敦氏と、TVT・ノートブックSW開発 第三TVT開発主任 開発技術担当部員の木村由布子氏による、「Lenovo Enhanced Experience 2.0」の解説が行われた。

大和研究所から駆けつけた、TVT・ノートブックSW開発 第一TVT開発主任 開発技術担当部員の金子敦氏(左)と、TVT・ノートブックSW開発 第三TVT開発主任 開発技術担当部員の木村由布子氏(右)が、「Lenovo Enhanced Experience 2.0」を解説

Enhanced Experience(EE)は、レノボとマイクロソフトが共同で取り組んだ、Windows 7搭載パソコンのシステム高速化技術で、現行のThinkPadで既にひろく採用されているため、その効果の高さを実感済みのユーザーも多いことだろう。今回紹介されたEE 2.0は、次世代のレノボ製品で搭載が計画されているEEのバージョンアップ版。いわゆる第2世代Intel Coreプロセッサ搭載のレノボ製品に組み込まれる予定だ。EE 2.0と初代EEの違いは、既存技術のチューニングによる速度向上ももちろん施されているが、ポイントとなるのは、「RapidBoot」と「RapidDrive」という2つの新規技術が搭載されることである。

EE 2.0はSandy Bridge世代のThink製品とIdea製品から導入予定。さらに高速になるだけでなく、使い続けても高速化を維持できるのも特徴

起動時間は初代EEからさらに12%の短縮を目標基準とした。Microsoft/Intel/AMD他との開発協力も強化して進められている

こちらは初代EEとEE 2.0の現時点での成果の発表。ThinkPad T410sとその後継機の例では、先ほどの目標基準を上回る成果が既に出ているようだ

EE 2.0のポイントとなるのが、「RapidBoot」と「RapidDrive」という2つの新規技術の搭載である

RapidBootでは、PC出荷時のシステムの起動速度が高速化されていることは初代EEと同じだが、その後に、ユーザーがPCを利用し続ける上で他のソフトウェアを追加していった際にも、高速化を維持することができる。普通であれば起動プロセスに追加ソフトがあれば、その分の速度が落ちるのだが、RapidBootではCPU負荷を効率よく分散できるフローの対象を、追加ソフトにまでひろげている。さらに、例えばアンチウィルスソフトなど、起動がプロセスの最初の方に無いと問題がある追加ソフトなどは、Windows 7のレジストリ情報をもとに最初期のプロセスに組み込まれるなど、しっかりと配慮がされている。

「RapidBoot」では、出荷時初期状態だけでなく、ソフトウェアが追加された実利用時の環境での高速化も目指した

「RapidBoot」の仕組み。起動プロセスの順番やタイミングを精査し入れ替え、CPU負荷に最適な状態に分散させる手法は、初代EEでもあった考え方の延長線上にある

もうひとつのRapidDriveは、ストレージ構成がSSD+HDDの製品に提供される技術で、SSDのパフォーマンスと、HDDの大容量というメリットの両方を同時に実現するもの。2つのストレージを論理的に統合し、1つの仮想ディスクドライブとして認識させることで、ユーザーから見ればSSD並に速い大容量HDDのようなストレージとして利用できるのだという。物理的には、PCの初期導入イメージのうち、OSやドライバなどをSSD側に格納しているそうだ。なお、開発中の現状では、RapidDriveは初期のロードイメージのみで適用され、ユーザーが自らHDDの交換などしてしまうと、無効になってしまうとのこと。

「RapidDrive」の概要。ユーザーは難しいことを意識せずに、SSDとHDDのいいとこどりができる

「Enhanced Experience 2.0」のまとめ。写真右側にロゴがあるが、初代EEの様に、対応製品には同ロゴが貼付される

なお、このEE 2.0は新製品のみで採用される予定なので、残念ながら現行の初代EE搭載製品からアップデートで適用することはできない見込みだ。ついでに、上のおおまかな説明文を読むより、論より証拠ではないが、実際の効果を見てもらったほうが、EE 2.0の魅力が伝わりやすい。以下に、SSD+HDD構成のEE 2.0テスト機で、システム起動状態から再起動をかけてみた際の動画を掲載しておく。動画では、再起動をクリックしてからシャットダウンして再びデスクトップに戻ってくるまでおよそ15秒だ。

動画
(※動画はCES 2011のLenovoブースで撮影したもの)