地区で情報交換、基礎を磨き上げてレベルアップ
それではいよいよ優勝インタビュー本編をお届けしよう。インタビューは表彰式の直後に実施。2008年までアンリツエンジニアリングのETロボコン監督を努め、2009年からは南関東地区大会の発足とともに同地区の審査委員長を務めている統合エンジニアリング推進部の林啓弘さんと、今回の総合優勝チーム「AEK RUNNER10」のメンバーに話を聞いた。
アンリツエンジニアリング「AEK RUNNER10」のメンバー。前列左からリーダーの宮崎泰貴さん、中嶋博貴さん、山口強さん、岩井孝之さん。後方におられるのが南関東地区審査委員長を務める同社統合エンジニアリング推進部の林啓弘さん |
「AEK RUNNER10」のメンバーは、ETロボコン暦4年目のリーダー、計測システム開発部の宮崎泰貴さん(27歳)と、ネットワークシステム開発部より、ETロボコン暦2年目の山口強さん(26歳)、中嶋博貴さん(25歳)、今年初参加の岩井孝之さん(28歳)の4人だ。
それぞれ通常業務で担当する分野はバラバラで、岩井さん以外はズバリの組み込み分野には携わっておらず、UMLモデリングはETロボコンを通じて学んだそうだ。
――この度は優勝おめでとうございます。
一同(以下、各氏発言の敬称略):ありがとうございます。
――南関東のチームが総合部門入賞を独占する結果になった訳ですが、地区大会の時から相当レベルは高かったのでしょうか。その辺り、どのような印象をお持ちですか?
宮崎:入賞した「こっぺぱん♪」、「i-K∀S」もそうですが、今回チャンピオンシップ大会に出場した南関東の5チームは、集まって合同練習をしたり、お互いにモデルのレビューをしたり、「南関東連合」として力を合わせてやってきました。ウチには(本番同様の)コースがないので、神奈川工科大に出向いて走行テストをしたりとかもしました。
――皆さんライバルであり戦友であり、という感じだったんですね。地区大会でもすごいタイムが続出していたんでしょうか?
山口:地区大会の時点では、タイムとしては突出していなかったと思いますね。ただ、合同練習するうちにお互い技術供与というか情報交換できたことが大きな収穫になったんじゃないかと思います。
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――新しい"難所"も登場しましたが、今回のコースはどうでしたか。
宮崎:一番の難関だったのはやはり、3D難所と言われる「シーソー」と「階段」ですね。今まで考えていた方法、通常のライントレースのテクニックで走破するのではなく、段差を越える、という新しいジャンルと言うか…そこではやはり一番苦戦しましたね。
――自分たちはここが強かった!というポイントはどの辺りにあると思いますか?
宮崎:特に奇抜なことはしていないんですが、ラインを走る、ライン以外を走る、そうした基礎を使って組み合わせて…目立つところはないかも知れませんが、リスクを負った危なげな走行ではなく、基本に忠実な走行のレベルを上げていった形ですかね。
岩井:ロボットが自分でコースを見て判断するのに加えて、きっちりマップ全体のデータも入っていて、それを午前中の試走でちゃんと調整できたのもポイントだと思います。場所によってコースの状態は微妙に違ってくるので、全くの決め打ちでもダメですし、ロボットが自動的に見るだけでもダメで。自動の部分と人間が絡め手を打つ部分のバランスがよかったのかなと。
林:コースは布なので、のびたり歪んだりしているんですよね。そのマップと現実世界のギャップを調整するのがライントレース。ガレージ・インなどは走行体とガレージの幅がたぶん小指一本ぐらいの精度で入れていかないとダメで、それだけマップデータの精度も必要なんですが、3Dの難所を越えた時などは大幅に位置が狂う訳です。そうしたズレを途中途中で補正をかけながらマップと現実世界を合わせて走行させるモデルになっている。そこがポイントなんですが、それも基礎がちゃんとできていてこそなんです。