痛車(いたしゃ)とは、アニメ・ゲームなどのキャラクターやタイトルロゴ等をペインティング、あるいはステッカーで貼り付け装飾した車のこと。自虐的な名称の通り街中で見ると何とも痛々しいのだが、そんな中途半端なレベルはとっくに突き抜けたハイクォリティな痛車は、まさに作品と呼ぶに相応しい。

痛車 坂口トモユキ』は、写真家・坂口トモユキ氏が撮り下ろした痛車22台の写真を収録したiPad向け写真集。クルマらしい質感表現を抑え、一見CGのようにも見えるこの不思議な写真は、夜の駐車場で計9台のストロボを使って撮影されたものだ。「二次元の世界から現実空間に飛び出したクルマを、再び二次元の世界に戻したかった」のだという。

「痛車 坂口トモユキ」(600円)。二次元と三次元の狭間を感じさせる、独特の質感が特徴的

写真を拡大して細部のディテールまで見ることができるのは、電子写真集ならでは。また、写真だけでなく各オーナーの痛車にまつわる物語も収録している。痛車は、装飾・改造の技術とセンス(と予算)、そしてオーナーのクルマとキャラへの愛が詰め込まれた夢の乗り物なのだ。