電子貸本「Renta!」を利用している方ならトップページのバナーで気になっていた方も多いことでしょう。言わずと知れた漫画の神様、手塚治虫の作品が手軽に安く読めるというのですから、これはもう手塚ファンとしては見逃せませんよね。ということで、子どもの頃から手塚作品を読みあさってきた僕が、「Renta!」でまとめ読みしてほしいお勧めの漫画をご紹介していきたいと思います。

ではまず、メジャーどころから。

ブラック・ジャック

『ブラック・ジャック(全22巻)』

もうこれは言うまでもないというか、定番中の定番というか、今さらここで取り上げるのがおこがましいほどの名作なのですが、やはり手塚作品で僕がもっとも感動し影響を受けた作品として外すことはできないのでご紹介します。

医師免許を持たず法外な手術料を要求するモグリの天才外科医、ブラック・ジャック。現代社会を舞台に様々な命のドラマを描く1話完結の物語は、一度読み始めたら最後まで止められなくなること間違いなし!

生涯に描いた漫画が実に15万ページとも言われる手塚治虫は、その膨大な作品群の中で何度も「命」というテーマに挑んでいるわけですが、特にこの「ブラック・ジャック」は医療を扱っていることもあってか、手塚の命に対するメッセージが強く感じられる作品となっています。

ブラック・ジャック、ピノコ、ドクターキリコ――魅力的なキャラクターの数々が織り成す永遠の名作。もしあなたが未読なら1冊100円で読める「Renta!」でこれを見逃す手はありません。また、思春期前後のお子さんがいるのであれば、大人になる前に絶対に読ませてあげてください。

ブッダ

『ブッダ』(全14巻)

タイトルにもある「ブッダ」とは「仏陀」、つまりお釈迦様のこと。要するに本作はお釈迦様の一生を描いた漫画なわけですが、「ああ、伝記漫画なのね」と思ったそこのあなた……違います!

本作はただ偉人の生涯を読みやすくするために漫画にしてみましたーというお手軽なコミカライズ作品などではなく、ブッダという人物を一人の人間として捉え、彼の人生と彼を巡る人間ドラマを手塚流に解釈し、生きるということはどういうことなのか、死ぬということはどういうことなのか、人にとって命とは何なのか――そんな壮大なテーマを余すところなく語り尽くした超大作なのです。

仏教というと、「宗教の漫画か」なんて敬遠する人もいるかもしれませんが、そういうのとはまったく違いますので勘違いしないように。また、絶妙な伏線がちりばめられた伏線や、手塚流に味付けされたキャラクターはとても魅力的で、純粋にエンターテインメント作品としても素晴らしい完成度を誇る作品です。

続いては、この2作品ほどメジャーではありませんが、やはり絶対に読んでほしい作品をご紹介します。短編が多いので、手塚治虫初心者はむしろこちらから手を出してみるといいかもしれません。

アドルフに告ぐ

『アドルフに告ぐ』(全5巻)

第二次世界大戦のドイツと日本を舞台に、3人の「アドルフ」の数奇な人生を描いた物語。

神戸に住むドイツ領事の息子、アドルフと、その友人でユダヤ人のアドルフ。そしてアドルフ・ヒットラー。立場も境遇も、何もかもが違う3人のアドルフの人生が、第二次世界大戦という時代に翻弄されていく様を、手塚治虫がその圧倒的な筆力で語っています。

単純に戦争の悲惨さを伝えたり、教科書的に歴史を追いかけるのではなく、年表に埋もれてしまいがちな"その時代を生きた人々"の姿を生々しく捉えている本作は、第二次世界大戦を直接体験した人が少なくなっていく現代にこそ読み継がれるべき歴史漫画だと言えます。

MW

『MW』(全3巻)

タイトルは「ムウ」と読みます。

実写で映画化されたのでご存じの方も多いでしょう。

映画も漫画も見ていないという方にはもちろんのこと、もし映画は観たけど原作は未読という方がおられたら、絶対に読んでほしい作品です。何しろ映画では大人の事情により、本作重要な要素である「BL」成分が抜けてしまっていましたので。

……といっても本作がジャンルとしての「BL」かというと、それもちょっと違う気がします。

本作は銀行員として働く結城美知夫と、賀来神父という二人の男性を中心としたサスペンスストーリーで、美しいルックスを持ちながらも純粋な悪である結城と、神に仕える立場にありながら結城を止められない賀来の複雑な関係がたまりません。

特に結城という男は、サイコパスとして飽くことなく犯罪に手を染める一方、賀来のもとで懺悔をし、そうかと思えば小悪魔的な魅力で誘惑してくるという様々な顔を持ったキャラクターで、その魅力は手塚作品の中でもトップクラスだと個人的には思っています。

悪と善、そして秘密毒ガス兵器"MW"を軸にした重厚かつスリリングな物語をぜひお楽しみください。

奇子

『奇子』(全3巻)

タイトルは「あやこ」と読みます。

タイトル、そして表紙のイラストからは内容が想像しづらいかもしれませんが、本作は田舎の旧家に生まれた「奇子」という一人の女の子を中心にして戦後史の闇を描いた問題作。

といってもタイトルにもなっている奇子自体は主人公というよりも、この作品のテーマの一つである田舎の旧家の抱える闇を浮き彫りにするシンボル的な存在というべきでしょう。

実際の主人公は、戦争終了後にGHQの秘密工作員として働く天外仁朗という男であり、読者は彼の視点で戦後史の裏を見つめていくことになります。

「奇子」も「アドルフに告ぐ」もそうですが、手塚治虫は歴史上の事件を、その時代に生きた名も無き人々にスポットライトを当てることで間接的に描き出すのがものすごく上手い漫画家なのです。

以上、メジャーどころからちょっとマイナーな作品まで、手塚作品のご紹介でした。

ハッキリ言って手塚治虫はどれがお勧めというのではなく、できれば全部の作品を読んでほしい漫画家です。

「Renta!」でもかなりの数の作品を読むことができますので、今回ご紹介した漫画以外にもぜひ色々と手を伸ばしてみてください。

では本年もよろしくお願いします!

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