昨日の欧米市場
欧米株式は、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁がユーロ圏でのインフレ懸念を表明したことで利上げ観測が浮上したことに加え、米新規失業保険申請件数が昨年の10月以来となる高水準(44.5万件)まで増加したことを受け反落。
英FTSE100は、昨日の弊社『今日のCFD&テクニカル』でも指摘したように、大手スーパーのテスコ(TSCO.L)やディクソンズ・リテール(DXNS.L)といった小売りセクターの軟調な地合いが上値を抑えた。ただ、注目されたスペインやイタリア国債への需要が堅調だったことから銀行株が上昇したことで下落幅は限られた。
一方、米株式市場も米新規失業保険申請件数の増加が嫌気され、銀行株を中心に利益確定売り優勢の展開となった。また、米企業決算を控え業績内容を見極めたいとの思惑も重石となった模様。そのような状況の中、食品や小売りが堅調な値動きとなった事を受け、欧州株式市場同様下落幅は限定的なものとなった。
為替市場は、ECBによる利上げ観測が台頭したこと、スペインやイタリア国債が無事消化されたことを受けユーロのショートカバーは継続。対ドルでは1.3380レベル上昇した。
対照的にドル円は、米株式と米債利回り低下を受けドル売り優勢の展開へ。83円前半での上値の重さも嫌気され82円ミドルレベルまで下落した。ただ、クロス円が堅調な値動きとなったことから82円後半まで値を戻した後、同水準でこう着したまま本日のアジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・08:50 日本 : 12月国内企業物価指数
・16:00 ドイツ : 12月消費者物価指数(確報値)
・17:15 スイス : 12月生産者・輸入価格
・18:30 英国 : 12月生産者仕入価格
・19:00 ユーロ圏 : 12月消費者物価指数
・19:00 ユーロ圏 : 12月貿易収支
・22:30 米国 : 12月消費者物価指数
・22:30 米国 : 12月小売売上高
・23:15 米国 : 12月設備稼働率
・23:15 米国 : 12月鉱工業生産
・23:55 米国 : 11月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)
・24:00 米国 : 11月企業在庫-11月
要人発言、イベント
・18:00 ユーロ圏 : アルムニア欧州委員の発言
・26:45米国 : ラッカー : リッチモンド連銀総裁、経済見通しについて講演
・27:15米国 : ローゼングレン : ボストン連銀総裁、講演
アジア時間の見通し
株式相場
米景気回復のネックとなっている米雇用情勢への不透明感を理由に、昨日の米株式は終始軟調な地合いとなった。
しかし、米市場引け後に発表された米半導体大手インテル(INTC.O)の第44半期決算は、1株利益が0.59ドル(予想0.53)、売上高が115億ドル(予想113億ドル)と好調な業績だったことに加え、2011年第1四半期の売上高についても市場予想の107.4億ドルを上回る115億ドルとの見通しを示したことで、企業業績の改善期待から本日のアジア株式を下支えする可能性が出ている。
日本225種株価指数は高値警戒感もあり、欧米株式に追随して利益確定売りが入る可能性もあるが、海外の年金基金などの長期資金も出遅れ感の強い日本株へと流れており、下落幅が限定的になる可能性が高い。引き続き10500円をサポートと想定し、上値は昨日高値10622円レベルを突破するか注目したい。
為替市場
本日もユーロを中心に相場の動向を見極める必要があろう。
ポルトガルに続き、スペイン国債の入札は目標の上限となる30億ユーロを調達した。一方、イタリアの5年債と15年債の入札も堅調な需要を示したことから両国と独連邦債との利回り格差は縮小し、欧州債務危機は一時的に後退している。
これに加え、昨日トリシェECB総裁は記者会見にて、金利は依然として適正水準にあることを言及しながらも、『相対的にインフレの短期的な上昇圧力がみられる』と発言した。債務危機が市場の懸念材料として存在を継続する中、このような発言が出ることはECBの金融政策と債務危機への措置は別問題であり、ECBが近く金融政策を引き締め方向へと転換するシグナルを発したとの認識が、市場で広まりつつある。
周辺国の堅調な国債入札と唐突に浮上した利上げ観測は、積み上がったユーロのショートポジションをいつ解消しようかと待ち構えていた市場に絶好のアンワインドの機会を与えることなったわけだが、このまま上値トライの展開となるかは未だ不透明だ。
スペイン国債への需要が旺盛だったとはいえ、応札利回りは上昇している。この問題は事あるごとにモグラ叩きのように突然顔を出すリスクを投資家が依然警戒していことの表れだろう。また、今週に入ってからユーロドルは前日比で一度も下落することなく1.3400のラインまで上昇したことにより、相当のユーロショートポジションが解消されている。加えてこのラインはテクニカル的に昨年12月以降、幾度となくユーロの上値を抑えた水準であり、短期的には最大のレジスタンスポイントとして市場の警戒心も強いだろう。
ただ、アジア株式が堅調な値動きとなればリスクテイクの波はユーロドルへと波及し1.3450レベルを試す展開になる可能性もあろう。本日は1.3400の攻防に注目したい。
なお、ドル円相場はユーロドルとは対照的に市場のエネルギー感がないことから、本日も82.50-83.05の1円レンジを軸に考えたいところ。