昨日の欧米市場
欧米株式市場はリスクテイクが継続。欧州市場では、市場の関心を集めたポルトガルの国債入札が良好な結果となったこと、欧州連合(EU)が債務危機打開に向け、包括的な措置を講じる可能性が高まったことを受け、銀行株が相場をけん引。また、引き続き堅調な商品相場も投資家のリスクテイクを促した。
米株式市場も欧州市場の流れを引き継ぎ、堅調な地合いを維持。米地区連銀経済報告では、12地区のうち6地区は景気が「穏やか、もしくは緩やか」に拡大、4地区も「改善」や「緩やかな回復」と報告したことを受け、あらためて米景気回復への期待感が強まった。また、それを支える米企業決算への期待感もリスクテイクを後押しした。米銀の投資判断が引き上げられたこと、米金融大手ウェルズ・ファーゴ(WFC.N)の増配観測を中心に主要株価指数は、2008年8月以来となる高値水準まで上昇した。
一方、為替市場も欧州債務危機後退がユーロのショートカバーを誘発。ユーロドルは1.31台、ユーロ円は109円台へと到達した。ただ、市場では今日のスペインやイタリア国債入札を控えていることから、ショートカバーは限定的との声も聞かれた。
ドル円もリスクテイクによる円安基調に下支えされるも、83.50レベルを超えることに失敗するとテクニカル要因から反落。ただ、クロス円の反転や株式市場で堅調な値動きもあり、82円後半でサポートされたまま、本日のアジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・08:50 日本 : 11月機械受注
・09:30 豪 : 12月雇用者数変化
・09:30 豪 : 12月失業率
・15:00 日本 : 12月工作機械受注(速報値)
・18:30 英国 : 11月鉱工業生産
・18:30 英国 : 11月製造業生産高
・21:00 英国 : BOE(英中央銀行)政策金利発表
・21:45 ユーロ圏 : ECB(欧州中央銀行)政策金利発表
・22:30 カナダ : 11月国際商品貿易
・22:30 米国 : 新規失業保険申請件数
・22:30 米国 : 12月生産者物価指数
・22:30 米国 : 11月貿易収支
・27:00 米国 : 30年債入札(130億ドル)
要人発言、イベント
・21:15 ユーロ圏 : ファンロンパイEU大統領の発言
・22:30 ユーロ圏 : トリシェECB総裁記者会見
・27:00 米国 : バーナンキFRB議長の発言
アジア時間の見通し
株式相場
前日の欧米株式のリスクテイクを受け、高値警戒感がくすぶる日本225種株価指数を引き続き下支えする可能性が高い。
マクロ面では、注目されたポルトガル国債の入札は旺盛な需要を見せただけでなく、応札利回りも持続不可能と市場で指摘されている7%を割り込み、一時6.716%まで低下した。これまでの傾向をみると、需要はあっても債務危機の伝染リスク懸念を背景に応札利回りは上昇する傾向にあっただけに、一時的にせよ欧州債務懸念の後退は金融セクターの押し上げ要因となりそうだ。
また、堅調な商品相場も引き続き相場の下支え要因となろう。
金融引き締めの懸念が根強く残る中国だが、一方では世界的に同国経済発展に伴う資源需要の拡大観測も根強い。同国の資源需要観測は非鉄金属価格に大きな影響を与えるが、スポット金価格は3営業日連続で続伸、原油先物価格は1バレル=92ドル台へと到達する等、トレンドが上向いている現在の状況を考えるなら、中国と関連の深い資源系セクターや資源開発に必要な重機セクターが相場をけん引するか注目したい。
そして金融や資源といった景気敏感セクターを中心にリスクテイクが高まれば、円相場は円安基調を維持する公算が高くなり、ユーロ円をはじめとしたクロス円を中心に日本225種株価指数を下支えするという好循環の相場となるシナリオも考えられる。
一方、ミクロ面でも企業業績改善期待が市場を覆っている。
欧米金融機関による相次ぐ企業の投資判断の引き上げに加え、米金融大手ウェルズ・ファーゴ(WFC.N)の今年の配当支払い額が増加するとの見通しも浮上したことで、米金融機関は2008年の金融危機と2009年の低迷期を完全に脱したとの思惑が市場で強まっている。株式市場のメインテーマが企業決算に移る中、こういった好材料に市場は敏感になっており、マクロ面での好転と共に投資家のリスク資産への投資を促しそうだ。
目先のサポートは10500円。昨日は高値警戒感により後場に入り下落スピードを速めたものの、このレベルが見事に意識された。明日の1月限日経平均オプションのSQ(特別清算指数)算出日を意識し上値の重い展開となる可能性もあるが、海外勢の買いスタンスや中小型株への物色の広がりを考えるなら下落しても、新たな買い場を提供するきっかけとなる可能性がある。
為替市場
注目されたポルトガルの4年債と10年債の国債入札は旺盛な需要を見せ、応札利回りも低下したことからユーロが買い戻される展開となっている。これに加え、欧州要人からは、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の規模と適用範囲を拡大させ、ユーロ防衛に向けていかなる措置も講じることを表明した。市場では今回の意思表明、特に独メルケル首相も協力姿勢を表明したことにより欧州連合の意思統一がかなり浸透してきたとの認識が広まっており、本日アジア時間のユーロを下支えする要因となるだろう。
ただ、このままユーロが買い進められるのかといえば、事はそう単純ではない。なぜなら、本日はスペインとイタリアの国債入札が控えているからだ。
市場の注目は、域内で4番目の経済規模を誇るスペイン国債の入札に集まっている。応札結果如何で再びユーロ売りが強まるとの懸念は市場で根強い。注目のユーロドルだが、1.31後の次のターゲットと考えられる1.3200レベルにはフィボナッチ(1.2875-1.4282)の23.60%戻しが位置している。ユーロ円も直近の動向をみると109.50レベルを超える水準では依然として売り圧力が強い。仮に突破しても次は心理的節目110.00が控えている。
アジア時間は、アジア株の動向次第だろう。堅調な値動きとなれば上述したレジスタンスポイントを試す可能性がある。ただ、高値警戒感から上値の重い展開となれば、テクニカル的に83.50レベルが重いドル円の状況も合わせ、徐々に利益確定売りが強まる可能性も出てこよう。
本日も、株式の動向をにらみながらの展開となりそうだ。