健康は毎日の仕事や生活の基盤。とはいえ自分の体調に気を配っている人は意外と少ないのではないだろうか。仕事に穴を空けまいと、心身の不調を無視してしまうこともある。
そんな問題を解決すべく、企業の労働衛生や福利厚生に関するコンサルティングおよびアウトソーシングを手がけるクリックベネフィット社が「BENECAカード」サービスを開発した。「これからは個人が医療と積極的にかかわる時代」と語る佐藤真由美社長に、BENECAカードで楽しみながら自分の健康を守る方法をうかがった。
仕事に追われる人の健康を守りたい
――クリックベネフィット社の概要を教えてください
佐藤 : 私はもともと大手監査法人で労務管理の責任者をしていました。いわば公認会計士の健康管理業務です。そこで痛感したのは、激務に追われて健康診断も受けられず、身を削るように働いている人が非常に多いということ。そんな人たちを助けたいとの思いから監査法人独自の健保組合を立ち上げ、その経験をもとに企業の労働衛生改善のためのアウトソーシングサービスを手がけるクリックベネフィットを設立しました。
――従来の労働衛生の問題点はどんなことですか?
佐藤 : 健康診断の実施が形式化していたり、「産業医にかかると自分の評価が下がるのでは」と社員が懸念していたりする企業も少なくありません。しかし、組織を支える社員の健康を大切にしなければ、経営が行き詰まってしまうことは明らかです。厳しい社会情勢にあって賃金を上げることが難しいなら、企業はせめて社員の健康管理体制だけでも充実させるべきではないでしょうか。
――企業からのサポートはもちろんですが、個人が健康のためにできることはありますか?
佐藤 : 体に不調を感じたらすぐ病院に行き、なおかつ医師と対等な関係を築くことです。私はかかりつけの病院に行くと、遠慮なく自分の要望を伝えたり、質問したりします。医師もそれに応じて詳しい説明をしてくれるので、お互いに了解したうえで治療を進められるのです。医療先進国の欧米では「マイ精神科医」や「マイ内科医」を持つことも珍しくありませんし、これからは私たちも積極的に医療とかかわることが大事だと思います。そこで当社はBENECAカードを通して、個人による主体的な健康管理を促進したいと考えています。
BENECAカードのメリットとは
――BENECAカードとはどのようなものですか?
佐藤 : BENECAカードは「医療のSUICA(スイカ)」とも言うべき個人医療カードです。勤務先の企業や組織の保険組合がBENECAサービスに加入していれば、このカードで定期健診の支払いや保険料の納付ができ、BENECAと提携している全国の医療機関を自由に利用できるようになります。以前かかったことがある病気のデータも登録されているので、外出先で突然発病しても、このカードがあれば迅速な処置が受けられます。加入者の家族一人ひとりにカードを発行することも可能です。
またBENECAカードに加入するとウェブ上に個人専用ページが開設され、病院の予約管理が一元化できるようになります。勤め先が助成している医療機関や各種サービスの一覧もあり、規定の健康診断のほかに必要な医療サービスを自主的に選んで受診することもできます。さらに「勤め先(人事部など)」「BENECAカスタマーサービス」「各種医療機関」からのコメントや連絡事項も表示され、各方面から個人の健康をサポートしてくれます。
――自分専用のウェブページがあると、医療に関する情報が得やすくなりますね
佐藤 : 「医療機関からの情報発信」も、私たちが重視していることの一つです。最新ニュースや俗説を含め、さまざまな情報に振り回されている人も多いので、ウェブページを通して確かな医療情報を提供したいと考えています。
ここでは医療や健康に関する質問も受け付けています。先ほど「産業医にかかると自分の評価が下がる」と心配する社員がいると申し上げたように、私たちのような第3者のほうが話しやすいこともあります。「BENECAに相談しても本人の評価に影響しない」という条件で委託を受けていますので、メンタルヘルスにかかわることやセクハラ、パワハラの相談もしていただきたいと思います。
――職場の人間関係の問題も受け付けてくれるのですか?
佐藤 : BENECAの共同経営者には弁護士もいますので、個人の健康をおびやかす要因となりうることには、幅広く対応していくつもりです。心身の不調には個人的な借金や家族の問題が絡んでいることもあるため、BENECAはより踏み込んだ方法で改善に導く必要があると考えています。
――個人でもBENECAカードに加入することはできますか?
佐藤 : もちろんできます。会社に健保組合がない場合や、国民健康保険にプラスしてもいいと思います。費用は毎月100円です。
ポイント制度で楽しみながら健康に
――BENECAカードはほかにもユニークなサービスを展開しているそうですね
佐藤 : 「みんなで楽しく健康になろう」がテーマですので、いろいろと面白いサービスを考えています。特徴的なのがポイント制度です。例えばある病院で治療を受けるとポイントが付与され、それを貯めて優待サービスを受けたり、協賛企業の製品と交換できたりします。
現在も健康にかかわる企業と提携を進めていますが、薬局やフィットネスクラブといった分野だけに限らず、マッサージやエステ、化粧品、はたまた映画館など、幅広い企業と協力していきたいと考えています。各種メーカーや医療機関のアンケートに答えることでもポイントが得られるようにするつもりです。これは利用者だけでなく、企業側も顧客満足度調査ができる一石二鳥のしくみではないかと思います。
――今回お話をうかがって、BENECAカードの発展が非常に楽しみになりました
佐藤 : 人間には「衣・食・住」が必要ですが、そのためには健康で働けることが大前提です。これからは医師や医療機関と積極的にかかわり、自分や家族を守る時代になると思います。BENECAカードの申し込みは個人、法人ともに2月から開始し、本格的な稼働は来年度となります。みなさんの健康を楽しく支援するサービスなので、今後の展開にご期待ください。