昨日の欧米市場
欧米株式市場はリスクテイクへと転じた。英金融大手HSBC(HSBA.L)ホールディングスとバークレイズ(BARC.L)の投資判断が引き上げられたこと、独エンジニアリング大手シーメンス(SIEGn.DE)の第1四半期利益と売上高が前年同期の水準を上回る見通しとなったことを好感し、主要な欧州株価指数は軒並み上昇。商品相場が反転したことで資源セクター全般に買いが入ったことも、上昇のけん引役となった。
一方、米株式市場も企業決算への期待感から反転。
朝方発表された2010年第4四半期の米アルミ大手アルコア(AA.N)が市場予想を上回る業績(純利益2億5800万ドル、一株当たり利益24セント)だったことに加え、米小売り大手Sears Holdings Corp(SHLD.O)の第4四半期一株当たり利益予想が3.39-4.12ドルと、ロイター予想の3.09ドルを上回ったことが好感された。
また、野田佳彦財務相が欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が発行する債券を購入することを表明したことも投資家の安心感を誘発した。
為替市場は、株式市場のリスクテイクを受け、対ドルでユーロのショートカバーが入るも12日のポルトガル国債入札を控え投資家の慎重姿勢は継続。心理的ライン1.30手前で上値が抑えられる展開となった。
一方、円相場もリスクテイクの円安基調が強まり、ドル円は83.50レベルまで上昇。クロス円もユーロ円が108.25-30付近、ポンド円は昨年12月21日以来となる130円台を回復する展開となった一方で、豪ドル円はオーストラリア北東部クイーンズランド州の洪水被害が懸念材料となり軟調な地合いが続いたまま、本日のアジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・08:50 日本 : 11月国際収支-経常収支
・08:50 日本 : 11国際収支-貿易収支
・18:30 英国 : 11月商品貿易収支
・19:00 ユーロ圏 : 11月鉱工業生産
・22:30 米国 : 12月輸入物価指数
・24:30 米国 : 週間原油在庫
・27:00 米国 : 10年債入札(210億ドル)
・28:00 米国 : 地区連銀経済報告(ベージュ・ブック)
・28:00 米国 : 12月財政収支
要人発言、イベント
・17:00 ユーロ圏 : レーン欧州委員の発言
・22:30 米国 : ガイトナー財務長官の発言
・27:00 米国 : フィッシャー米ダラス地区連銀総裁、「金融政策の限界」について講演
・26:00 カナダ : フラハティ財務相
アジア時間の見通し
株式相場
株式市場のテーマはマクロ面から徐々に企業決算へと移りつつある。昨日の朝方好決算を発表した米アルミ大手アルコア(AA.N)を皮切りに、企業決算への期待感が株式市場を覆い始めており、本日のアジア株式市場もこの流れを引き継ぐ可能性が高い。
とかく外部環境の影響を受けやすい日本225種株価指数だが、昨日の欧米株式市場の反転に加え、中国株式市場でも当局によるさらなる金融引き締め政策や重慶市の不動産税導入計画の影響は限られるとの見方が台頭していることはリスクテイク要因となりそうだ。
本日も引き続き資源系セクターに注目したい。中国の金融引き締めの影響が限定的となれば、同国への資源需要拡大観測から鉱山セクターやエネルギーセクターで買いが入る可能性がある。非鉄金属や商社株は現在の日本225種の上昇のけん引役となっており、商品相場の反転も合わせて考えれば本日の市場を左右する可能性は高いだろう。
14日は1月限日経平均オプションのSQ(特別清算指数)算出にあたり、動きづらい面もあるが、すでにコールの権利行使価格1万0500円は突破しており、10500円がサポートとして意識されれば、昨年5月13日以来となる10600円台乗せの可能性も考えられる。更に株式市場で上値を試す展開となればその影響は円相場へも波及し、円安を誘発し易い地合いへとつながり、主力輸出関連株の押し上げ要因ともなろう。
為替市場
本日アジア時間の為替市場は、株式市場の動向をにらみながらの展開となりそうだ。
上述したように株式市場では、企業決算への期待感が強まっており、不安定な値動きとなっていた商品相場の上昇も投資家のリスクテイクを促す要因となる可能性がある。
そして株式市場が堅調な値動きとなれば、その影響は為替市場へも波及し、結果、円相場リスクテイクの円安基調が継続する可能性が高まるだろう。
ドル円は、目先のレジスタンスポイント83.30レベルを突破した。ただ、ローソク足ベースではこの水準を突破することに失敗したことに加え、83円ミドルレベル付近からの売り圧力も依然として根強いことが昨日の展開で再確認できた。本日も83.30、83.50そして83.68(1月7日高値)といった水準での攻防が注目される。
一方、欧州金融危機の再燃により上値が重くなっているユーロだが、アジア時間はドル円同様に株式市場をにらみながらの展開となりそうだ。対ドルでは1.30手前まで上昇しているものの、米企業決算への期待感と欧州債務懸念もあり引き続きレジスタンスとして意識される可能性が高い。しかし、対円では108円台を突破、ポンド円も追随していることもあり、株式市場の動向次第ではさらに上値をトライする可能性もある。目先のポイントは1月4日の高値を起点とした短期レジスタンスラインを突破できるかどうかだろう。昨日はこのラインが意識され反落した。本日朝方の動向を見ても、このラインを意識した状況が垣間見えるため、目先の重要なテクニカルポイントとして注目したい。
ただ、仮にアジア時間で上値を試す展開となっても、本日はポルトガルの国債入札が控えているため、欧州タイムが近付くにつれ徐々にリスク回避の傾向が強まる可能性がある。 市場関係者は、欧州中央銀行(ECB)による同国の国債購入によりかろうじて下支えされている状況を作り出しているものの、同国10年債利回りは依然として持続不可能とされる7%を超える高水準で推移しており、最終的には救済支援の要請は避けられないとの見方が強まっている。
そのため、入札前にポジションを整理し動向を見極めたいとの思惑から午後に入り、ユーロ売りへと転じる可能性がある点には注意したい。