昨日の欧米市場
欧米株式市場はリスク回避の地合いが強まった。欧州周辺国では、今週に入り国債入札を控える中、ポルトガル10年債利回りが7%以上で推移していることを受け欧州債務懸念が台頭。これにより欧州株式では銀行セクターで売り圧力が強まった。また不安定な商品相場も資源系セクターでの利益確定売りを誘発した。
序盤の米株式市場も欧州株式の流れを踏襲し、上値の重い展開となった。ただ、米金融緩和継続による流動性相場や今週より始まる米企業決算への期待感は根強く、徐々に盛り返す展開となった。
為替市場はユーロが対ドルで約4か月振りの安値水準まで下落したものの、米株式市場が反転するとユーロショートカバーが入る展開となった。ただ、欧州債務危機への懸念は根強く戻りも弱かった。
円相場は欧米株式でリスク回避の地合いが強まったことを受け、円高基調が強まった。ユーロ円は一時昨年9月14日以来の107円割れとなる等不安定な値動きが終始続いた。一方、ドル円でも米金利が低下した影響がかさなり上値の重い展開へ。83.00をレジスタンスに82円ミドルをうかがうムードを残したまま、本日のアジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・09:01 英国 : 12月RICS住宅価格
・09:30 豪 : 11月貿易収支
・14:00 日本 : 11月景気一致CI指数(速報値)
・14:00 日本 : 11月景気先行CI指数(速報値)
・20:00 南ア : 11月製造業生産
・22:15 カナダ : 12月住宅着工件数
・24:00 米国 : 11月卸売在庫
・27:00 米国 : 3年債入札(320億ドル)
要人発言、イベント
・22:30 米国 : プロッサー : フィラデルフィア連銀総裁、経済見通しについて講演
・28:00 米国 : コチャラコタ : ミネアポリス連銀総裁の講演
アジア時間の見通し
株式相場
3連休明けの日本225種株価指数は、外部環境の悪化により上値の重い展開となりそうだ。
先週末発表された12月の米雇用統計では、米労働市場の依然として厳しい現状が浮き彫りとなった。市場では、1カ月当たりに約20万人程度に達することが米労働市場の改善に必要との声も聞かれ、米景気の先行き不透明感から利益確定売りが今週に入り続いている。一方、欧州に目を向ければ、再び欧州債務懸念を背景にリスクに敏感な銀行株や資源株が売り圧力にさらされており、円相場ではリスク回避傾向が強まり易いムードが強まっていることも上値を抑える要因となりそうだ。
また、タイミング悪く新興国のインフレ進行も株式市場の懸念材料となる可能性があろう。
トリシェECB総裁は国際決済銀行(BIS)の中央銀行総裁会議後の会見で、急速な経済発展を遂げる新興国では先進国に見られないインフレ傾向があると指摘。特に、問題視されるのが食品価格の高騰だ。実際に中国では、倉庫と現金、そしてトラック数台があれば投機できることから、農産物市場へも資金が流入している。
実際、日本の食品業者の間ではにんにく(中国におけるニンニク生産量は世界の約4分の3)の価格高騰により打撃を受ける業者も出始めている。また、以前から指摘されている不動産投機に関しても、中国国内で先駆けて重慶市が早ければ第1四半期にも住宅価格抑制政策として不動産税を導入するとの報道もあり、日本市場との相関性が強まっている中国株式の上値を引き続き抑える可能性がある。
更に昨日の東南アジア株式市場でも中国同様インフレ懸念が強まっており、各国当局が対処しきれない可能性への懸念から海外投資家が資金を引き揚げる動きが継続している。このようなインフレリスクからアジア株全体が軟調な地合いとなれば、リスク回避の円高へと結びつき易い地合いであるだけに、日本225種も主力輸出関連株を中心に上値の重い展開となる可能性が高まる。
ただ、金融緩和による流動性相場の継続期待、根強い出遅れ感と新興国からの資金シフトの可能性、そして個人投資家の中小型株への物色の広がりが引き続き相場を下支えしよう。朝方発表された10-12月期の米アルミ大手アルコアの決算内容が、EPSが市場予想(0.19)を上回る0.21ドルだったことも材料視される可能性がある。
目先のレジスタンスを引き続き10500円と想定し、10300円台でどの程度底堅い展開になるのか確かめたいところ。
為替市場
為替市場は、株式市場の動向を睨みながらの展開となりそうだ。
上述した通り、米景気回復への不透明感や欧州債務懸念そしてアジア新興国で台頭するインフレリスク懸念から世界的に株式市場が下落基調を強める中、リスク回避から円が買われやすい地合いとなっている。
ポイントは、やはりユーロの動きだろう。
今週は、ポルトガル、イタリア、スペインと債務に喘ぐ欧州諸国の国債発行が計画されおり、警戒感からユーロが売られやすい地合いとなっている。その中でもポルトガル国債は、保証コストが7%を上回る高水準で推移しており、仮に今週の入札を乗り切っても、ドイツやフランスはポルトガルに対して欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)からの支援要請を受け入れるようプレッシャーをかけるのではないか、との憶測が市場で広まっている。
更には政治的リスクからベルギー国債への下落圧力も続いており、株式市場でリスク回避の地合いが強まる中、債務危機も合わさりユーロは更に売られやすい環境にある。
実際、ユーロドルは心理的節目1.30を割り込んだ後の戻りが鈍く、このラインがレジスタンスとして意識されれば、昨年9月14日の安値1.2830レベルを下抜け、約4カ月ぶりの1.27台も視野に入る可能性が出てこよう。
一方、ユーロ円をはじめとしたクロス円全般で円高傾向が強まる中、ドル円でも上値の重い地合いとなっており、目先のサポートポイント82.60もしくは82.30レベルが完全に突破されるようだと、円相場全体で一層リスク回避傾向が強まる可能性も出てくるため要注意。