名刺を管理する方法はいろいろある。最もアナログなのは、名刺専用のファイルに名刺本体を収納する方法だ。ファイルさえ手に入れば誰でも簡単に実行できるものの、自分なりの整理方法を確立できるまでは、ただ収納してあるだけで情報を引き出せないファイルが山積みになるだけという問題がある。

物理的な量を減らす方法としては、デジタル化がある。一般的なフラットベッドスキャナを利用する名刺管理ソフトも存在するが、ある程度まっすぐに何枚も名刺を並べてスキャンするというのはかなり面倒だ。

やはり名刺専用のツールが必要だろう。そうなった時に選択肢として登場するのが、名刺専用の小型シートフィーダ式スキャナやPITRECだ。どちらも名刺を1枚ずつデジタル化し、文字認識によって検索を可能にするということに変わりはない。選択のポイントとなるのは、その管理された内容をPCの中で検索できれば十分なのか、外出先でもさっと見られる方が良いのか、というところになる。

PITRECの本体サイズは約W120×D60×H13mm。3.5インチワイド液晶はちょうど名刺のサイズだ。重さは約85g。手帳が1冊増えるくらいの感覚で持ち運べ、スーツの内ポケットにもすっきりと収まる。ディスプレイ以外の部分はマットなブラックで、専用のフラップ式ケースも付属する。持ち歩いていればさっと取り出し、画像で直接名刺を確認できる。

専用ケースは本体と噛み合う爪で取り付ける

専用ケースを付けると、手帳風の外観になる

ボタンは決定ボタンを囲んだカーソルキーと、プラスマイナス、MENU、BACKのみと非常にシンプルだ。電源ボタンは側面に配置されており、持ち運び中に誤って起動してしまわないようロックボタンも用意されている。

ボタンパネルの並びにある、ひときわ大きな四角部分がカメラだ。手前のレバーをスライドさせると、レンズが跳ね上げ式に現れる。このカメラが狙っているディスプレイの向こう側に名刺を配置すれば良い。

ボタンは最小限のものだけが並んでいる

カメラはレバーを引くとパチンと音をたてて跳ね上がる

名刺を支えるスロットは溝が露出しているのではなく、端のパーツがバネで取り付けられているのを引き出して挟む方式になっている。ディスプレイの端あたりから強めに指を押し付けて引くか、爪をかけると簡単に小さな溝が露出させられるから、ここに名刺をはさめば良い。横置きデザインの名刺ならば上を天にし、縦置きデザインの名刺は手前を天にする。

名刺を挿入するスロットはバネ式で引き出せる

名刺を立てると下端1mm程度が読み取れなくなる

電源を入れた後、カメラを露出させると自動的に名刺読取モードになる。文字のOCR認識は会社名と姓名のみだ。検索と整理に必要なキーワードだけを読み取り、他の情報は表示される名刺画像から取得する、という考え方になっている。考えてみれば、千代田区の会社はどこだっただろう、と検索する人はあまりいなそうだし、引き出したデータから直接メールや電話をするわけでもないのだから、これで十分だろう。

読み込んだ名刺は個人の名前基準のほかに、会社単位での分類、読み取った順での列挙、取得日付単位での整理が行える。特に重要な人にはスターを付け、スター付き名刺だけを表示させることも可能だ。また、「マイリスト」としてリスト登録ができるから、複数企業が集まってのプロジェクト単位のグループなども簡単につくれる。

電源ボタンとロックボタンは本体右側面に配置

名刺管理は会社単位でも行える。先に同名会社が登録されていれば、文字登録時の補助にも使える

読み取れる名刺はメモリ容量によっても変わるが、管理できる最大数は9,999件。そこまで多くなると会社名等での分類では追いつかないだろうが、普段は参照しない名刺を「倉庫名刺」という扱いにして、リストに非表示にすることもできる。

面白いのは、名刺の裏面も登録できるということだ。おもて面を普通に登録した後、裏面を追加登録することができる。企業PRなどが書き添えてあったり、裏に顔写真が入っているような場合にはぜひ活用したい。

名前基準で並べることもできる

文字修正や検索キーワード入力時に使用するソフトウェアキーボード。カーソルキーで1文字ずつ移動して入力する