本稿は「レッツ! Windows 7」と題して、Windows 7の便利な機能を中心に、初心者が判断に悩む設定や、気付きにくい場所に設けられた設定を解説していきます。Windows 7から初めてコンピューターに触る方はもちろん、Windows XP/Vistaからアップグレードした方も是非ご覧ください。また、読者からの質問をお待ちしておりますので、本稿末尾にあるリンクから投稿をお願い致します。前回に引き続き、Windows Live Essentials 2011を構成するアプリケーションの使い方を解説しましょう。

Microsoftと電子メールクライアント

Microsoftにおける電子メールクライアントの開発は、Microsoft Internet Mail and Newsまでさかのぼります。当時の日本はインターネット黎明期にさしかかった直後であり、パソコン通信などでつちかった電子メールの利便性を高めるため、多くのユーザーが電子メールアドレスを取得するようになっていました。前述のMicrosoft Internet Mail and Newsは、Internet Explorer 3.0に付属するツールでしたが、当時のインターネットで暗黙的に守られてきた文字コードルールを無視した使用になっており、「Microsoft製インターネットアプリケーションを使う輩(やから)は初心者以下」と揶揄(やゆ)された時代があったのも事実です(図01)。

図01 Internet Express 3.0に付属していたMicrosoft Internet Mail and News。文字どおり電子メールの送受信、およびネットニュースの購読が可能でした

その後、後継版として公開されたOutlook Expressも同様の文字コード問題をはらんでいましたが、Windows 95/98の爆発的ヒットにより、多くのユーザーがOutlook Expressを標準の電子メールクライアントとして使うようになっていきました。普及度の高さがあだとなり、多くのセキュリティホールを狙うワームが多く広まり、目利きが利くユーザーは、有償・無償の電子メールクライアントを用いた方もおられました(図02)。

図02 多くのユーザーが使っていたOutlook Express。Windows XPをメインOSとして使っている方のなかには、いまだ現役で使っている方も少なくありません

そして、Windows Vistaの時代になりますと、Outlook Expressに代わってWindowsメールが搭載されるようになりました。フィッシング詐欺メールの検出機能や迷惑メールやフィルタ機能を搭載し、ユーザビリティの向上につながる新機能を搭載しています。しかし、Windows Vista自身の市場的不振も相まって、使用している方は比較的少なかったのではないでしょうか。かく言う筆者も原稿執筆などで何度も使いましたが、プライベートの場で常用するには至っていません(図03)。

図03 Windows Vistaに付属するWindowsメール。Outlook Expressユーザーが移行しやすくするため、UIに大きな変化は加わっていませんが、セキュリティ面は向上しました

このほかにも、ビジネスユーザーに向けにはOfficeスイートのひとつOutlookシリーズを用意し、WebアプリケーションとしてはWindows Hotmail(現Windows Live Hotmail)を展開していましたが、今回のターゲットとなるWindows Liveメールは、Windowsメールと2006年頃に開発が進められていたWindows Live Mail Desktopの後継版に当たります。

スプラッシュスクリーンからもわかるとおりWindows Liveメールは、Windows Liveと同じくバージョンを重ねており、現行バージョンは3つめとなるバージョン2011(ビルド15.4)。リボンUI(ユーザーインターフェース)を採用し、RSSフィードやWebメールのサポート、Windowsカレンダーの廃止によるスケジュール管理機能などを備えています。それでは次ページからWindows Liveメールの特徴を確認していきましょう(図04~05)。

図04 Windows Liveメールのスプラッシュスクリーン。正式名称は「Windows Live Mail 2011」となります

図05 Windows LiveメールのUIは従来の複数ペインによる分割型を採用。また、RSSフィードの購読やスケジュール管理機能も備えています

Windows Liveメール2011の新機能

Windows 7登場時のWindows Liveメールに関する概要は、以前の記事をご覧頂くとして、まずは変更箇所を確認しましょう。一つめはメイン画面にカレンダーの表示領域が加わっている点。当月のカレンダーおよび近々のスケジュールが表示されるようになったため、これまで異なるタスクとして独立していた、電子メールとカレンダー機能の親和性が高まったことになります(図06~07)。

図06 左ペインに並ぶ<カレンダー>をクリックし、任意の日をダブルクリックしてスケジュールを登録します

図07 これでWindows Liveメールの右ペインにあるカレンダーにスケジュールが表示されました。また、メイン画面から直接スケジュール登録することも可能です

もう一つの新機能がデジタルカメラなどで撮影した写真を、相手に負担を与えず見せられるフォトメール機能。これまでは電子メールに画像ファイルを添付するのが一般的でしたが、Windows Liveメールのフォトメール機能は、Windows Live SkyDriveを使用するというもの。そのため、電子メールに添付されるのはリサイズした画像を添付します(図08~10)。

図08 <フォトメール>ボタンをクリックしますと、メール作成ウィンドウと共にファイル選択をうながすダイアログが起動します

図09 画像ファイルを選択しますと、

自動的にアルバムのデザインが作成されます

図10 アルバムデザインはボタンバーにあるサンプルから選択可能です

ちなみにSkyDrive上に保存される期間は90日に限定されていますが、その間であれば画像ファイルをSkyDriveの機能であるスライドショー表示で閲覧するか、ZIP形式ファイルでダウンロードできるため、“重い電子メール”を送信せず、撮影写真を楽しむことができます(図11~12)。

図11 受信した電子メールは画面のとおり。アルバムは縮小化した画像ファイルとして添付されます

図12 「スライドショーの表示」リンクをクリックしますと、Webブラウザでスライドショーが実行されます

このほかの新機能としては、従来のように複数の電子メールアカウントの管理にGmailに代表されるWebメールアカウントをサポート。アドレス帳はWindows Live Messengerとの共有、カレンダーはWindows Live Hotmail上のカレンダーと自動的に同期するため、同サービスの共有機能を用いることで、ほかのユーザーとスケジュールを共有可能になりました(図13~14)。

図13 アドレス帳はWindows Live Messengerと連動し、管理が容易になりました

図14 Windows Live Hotmailのカレンダー機能を用いることで、ほかのユーザーとカレンダーを共有することが可能です

このように電子メールの送受信だけでなく、Windows Liveの各アプリケーションや各サービスと連動することで、各機能を大きく高めています。もちろんやり取りする相手もWindows Liveサービスを使っていなければ、ここまで便利になることはありませんが、あらかじめ友人と申し合わせた上で使うのであれば、間違いなく便利になるでしょう。

さて、Windows Liveメール2011には、いくつかの不具合が発生しています。ネット上では様々な意見が出ていますが、筆者が実際に確認できたなかでも顕著だったのが、特定の文字列をサブジェクトに記述しますと、charsetが「utf-8」に強制されてしまうという問題です。

以前から日本語で電子メールを送受信する場合、ISO-2022-JP(JISコード)を用いるのが通例でした。しかし、MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)の登場で文字コードの扱いが、若干曖昧になってきているのが現状です。最近は電子メールクライアントやWebメールサービスは、これら文字コードの相違を厳格に処理するのではなく、正しく表示させられるかに注力することで、ユーザーはますます文字コードを意識しなくなりました。

しかし、相手が古い電子メールクライアントを使用している場合、文字コードの指定は重要です。Windows Liveメール2011には、この問題を含んでおり、サブジェクトや本文に「-(JISコード:215d)」を含めて送信しますと、相手の電子メールクライアントがUTF-8に対応していない場合、文字化けが発生する可能性が高まります。例えば若干古めの携帯電話はUTF-8をサポートしていませんので、この問題は影響を及ぼす可能性があります。

既に有志の方が本問題を発見し、Microsoftへ報告していますが、執筆時点では改善される動きは見えません。前述のように最近のコンピューター用電子メールクライアントはUTF-8をサポートしているため、ユーザーレベルでは使用を差し止めるほどの問題ではありませんが、同社には早期の対応を望みたいところです。

阿久津良和(Cactus