文字だけをインターネットで追いかけることが最近多くなった。検索Webサイトでの検索結果にPDFファイルが表示される場合、それを開くのを無意識に近いレベルの感覚で避けてしまうことも多々。別のアプリケーションが起動することの煩わしさからだろう。しかし、PDFファイルには、纏まった情報がそこにあるのも事実だ。
纏まった情報の"収集"や"蒐集"という観点から見ると、PDFは非常に大切な情報源なのだ。論文などはその一例になるが、論文検索や政府官報などがPDFで配信されていることも、その表れなのだと思う。見る環境に依存せず、レイアウトを維持したまま"読む"ことが可能なPDFには、発信者の情報にそれなりの覚悟が感じられる。文字だけを"見る"日常とは、用途・目的が違うのだ(図1)。
実践している方も多いと思うが、スキャナーを利用して紙の情報を取り込みデータベースとしてPCに保存しておくと、アナログとデジタルの橋渡しとしてPDFファイルを存分に活用することができる。スキャナーしてOCRで取り込んでおけば、これらを検索対象として検索することもできる。纏まった情報を管理しようという試みと符合する。
なんでもいいだろう。自分が興味のある分野、たとえば哲学に興味があるのであれば、ソクラテス、プラトン、ニーチェ、カント、レヴィストロースと片っ端からそれに関連する記事や書籍をスキャナーにかけてPDF化してデータとして取り込んでおく。これをフォルダに分けてPCに保存しておけば立派な知的生産活動の第一歩。蒐集が第一歩である。
集めておかなければ、区分や分析はできない。WebからPDFを収集するのであれば、より手軽だ。同様に、マチュ・ピチュ、カッパドギア、モヘンジョダロ、アンコール遺跡、タージ・マハルと世界遺産に関連する記事やコンテンツをPDF化してハードディスクに保存しておく。時間が空いた時に、これらのPDFを分類したり、メモを追記したりというのもIT時代の良い趣味といえるのではないだろうか。
そんなわけでPDFを取り扱うツールとして試してみたいのがFoxit J-Reader。FoxitJapanから無料で公開されているPDFリーダーだが、ストレスを感じない高速な起動スピードや編集機能など全世界1億ダウンロードの実績がある。同社のWebサイトからダウンロードできる。対応OSは、Windows XP(SP2) / Vista / 7、32/64ビットともに対応する。また同社ではFoxit PDF Creator 日本語版も提供している(図2)。これを入れておくと印刷メニューから印刷する感覚でPDFファイルを生成できる。Webブラウザや各種アプリケーションから簡単にPDFファイルを作成できるようになるので、これも併せてインストールしておくと、Webサイトなども簡単にPDF化してFoxit J-Readerとのスムーズな連携も可能になる。
図2 Foxit Japan |
高速なビューワーとしての役割以外にも、メニューを見ると様々な機能が一目瞭然(図3)。まずはわかりやすいアイコンがならぶ注釈コメントツールの数々。PDFファイルにコメントや注釈は大きく分けると2つの意味がある。ひとつは誰か別の人間との情報の共有である。たとえば筆者の場合、編集者とのやりとりなどに使う場合もあるし、社内など会社で活用する場合には企画書や必要書類のやりとりで使える。とかくこちらの意味が前面に出ることが多いように思うが、もうひとつは、先ほど述べたように、自分自身で集めたデータを貯蔵しておく場合にこれらを使えるだろう。
図4 下線、ハイライト、波線、取り消し線、置換、挿入、注釈ツール |
教科書の重要な箇所に蛍光マーカーを引くあの僅かな達成感は心地よいものだ。Foxit J-Readerには、下線、ハイライト、波線、取り消し線、置換、挿入、注釈のツールが一目で把握できるアイコンで表示されている(図4)。ツールを選択して、テキスト上をなぞるだけで目的の表現が可能だ。校正などの作業では大いに役立つだろう。
注釈ツールは付箋のようなメモをPDF上に作成する。この注釈ツールは、万能型のメモでテキストを目立つ付箋の形でペタペタと貼り付けることができ、使用頻度も高くなるであろうツールだ。オプションでは、承認/却下/キャンセル/却下などのステータスの設定、形状や色の設定も可能になる(図5~13)。
図14タイプライタツール |
タイプライタツールには、テキスト入力で利用できるツールが集約されており、クリックした位置に自由にテキストを入力したり、引き出し線付きのテキストボックスを作成したりすることもできる(図14/15)。
[表示]メニュー>[ツールバー]>[描画マークアップツール]を選択すると図形作成ツールが表示される(図16)。また編集メニューからは画像や映像、しおりを追加できる。向かって左側にある矢印をクリックするとサムネイルでの全体表示、しおり、注釈の一覧、ドキュメント内の添付ファイル一覧などが可能で、加工した箇所を一目で把握(図17)。複数人数で回覧する場合などでは、たとえばいそがしい上司にPDFを閲覧してもらう場合には、注釈の一覧のみを見てもらうことで迅速な稟議として活用できる。画像の追加では透明度の設定も可能で"透かし"として設定など、PDFファイルを"資料"として加工できる。左側には全体を把握するためのメニューが設置されている(図18)。
Foxit J-ReaderにはファイルやWebへのリンクやテキストを選択するだけでポップアップWeb検索を行う機能も搭載されている(図19)。軽快・高速な動作が際立つこのソフトを利用するとPDFを中心とした知的生産活動も楽しめるのではないだろうか?同じく公開されているFoxit PDF Creatorを使えば、インターネット上のWebサイトを簡単にPDF化できる。Webから集めた資料をボタン一つでPDF化して保存しておけば、テキストを"選択"して表示されるアイコンをクリックするだけで検索可能だ。大量のPDF資料を分析している場合などにはとくに重要な機能。
上位版となる「Foxit Phantom PDF Suite Premium」にはOCRユーティリティソフトが付属している。先にも述べたように、紙の情報をこれらPDFに変換しておけば、選択するだけでWeb検索を行ってくれる。わからない用語が収集した資料の中にあれば、Foxit J-Readerで開いて文字をなぞる。ハードディスクに保存してある別の資料ファイルにリンクを貼り付けておく。こうやってオリジナルなPDFファイルを創造していくことができるのだ。
また年末のこの時期には書店に来年用の手帳なども並ぶ。手帳というアナログなデータもスキャナーとPDFを活用することで、貴重なデジタルデータとして活用できるだろう。ピカソやヘミングウェイも活用していたという手帳「モレスキン」などは、丈夫な作りとDIY(Do It Yourself)な発想でノートを構築してくアナログツールだが、モレスキンで作成した絵や文字がちりばめられたノートの二次加工として、Foxit J-Readerを利用してみるのもおもしろそうだ(図20)。