昨日の欧米市場
米経済指標が市場予想を上回り好結果だったことを受け、米景気回復期待から米債利回りが上昇。これを受けドル買い圧力が強まった。ただ、トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁がユーロ圏の景気回復へ自信をのぞかせたことからユーロを買い戻す動きも散見され、ユーロドルは1.32台でのこう着状態が継続。ドル円も84.00がレジスタンスとして意識される時間帯が長く続いたまま取引を終了した。
一方、株式市場でも米経済指標が好感され投資家のリスクテイクは継続。特に米国時間朝方に発表された10月の米貿易収支が、輸出の伸びにより387億ドルの赤字と市場予想(-438億ドル)を大幅に下回る赤字幅だったことで米企業の収益改善期待が市場で台頭した。 これにより欧米株式は総じて堅調な値動きとなり、米国SPX500種指数は2008年のリーマン・ブラザーズ破綻後の最高値を更新する展開へ。
しかし、10日に中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率を50ベーシスポイント(bp)引き上げ12月20日から実施すると発表したことで、同国の金融政策への懸念が台頭していることに加え、週末の中国の一連の経済指標への警戒感もあり、過度のリスクテイクは限られた。
本日の主要経済指標
・09:01 英国 : 12月ライトムーブ住宅価格
・17:15 スイス : 11月生産者・輸入価格
要人発言
・26:10 カナダ : カーニーBOC総裁の発言
・27:30 ユーロ圏 : トリシェECB総裁の発言
アジア時間の見通し
11日に中国国家統計局が発表した11月の消費者物価指数は前年比5.1%となり、10月の4.4%、市場予想の4.7%を大きく上回った。これは2年4カ月ぶりの高水準であり、加速する国内インフレ抑制のため年内に1回の利上げがあるのではないかとの観測が市場で台頭している。
また、同国では既に金曜日には預金準備率が0.5%引き上げられた。これらの強い内容を受け(後者はある程度織り込み済みの感もあり欧米株式や為替市場への影響は限定的であったが)、週明けのアジア市場では同国の金融引締めに対する警戒感が更に強まる可能性がある。また、東南アジア諸国でも国内へ流入する資本への規制強化が市場で注目されている点を考慮すると、今回の中国金融引締め観測の強まりと重なり新興国市場からの資本流出が招かれ易い状況か。
日本225種は、引き続き先進国株買い / 新興国株売りの流れに乗り底堅い展開となる可能性もある。10200円では買い需要が依然として根強いものの、10300円レベルに近づくと勢いが失速するところを見ると、今日は10200-10300円のレンジを中心にもみ合う可能性がある。また、今週は木曜日に日銀短観が発表されるが前回よりも悪化するとの見通しが有力。特に大企業製造業業況判断の予想値は3と、9月の短観から5ポイント悪化すると見られており、中国の金融引締め観測と共に重石となりそうだ。
為替市場では、中国の堅調な経済成長と直近の米経済指標を受け、米景気回復への期待感から米金利に上昇圧力が高まり易い状況となっている。追加の米金融緩和観測も囁かれる中、金利上昇には限界があるとの声も聞かれるが、欧州債務問題で依然不透明感が増している現状を考えれば、しばらくドル買いの勢いは続く可能性がある。
その欧州債務問題だが、ユーロ圏の債券市場では欧州中央銀行(ECB)の国債購入額の規模を巡り投資家の不安心理が増している。また、相変わらず欧州各国の足並みの乱れと共に15日に予定されているスペイン国債入札では利回りが上昇するのではとの懸念も指摘されており、これらも投資家のユーロ買い意欲を後退させる要因となるか。
更に、中国の利上げ観測に最も敏感に反応する可能性のある豪ドルでも積極的に買い進める状況にはないことを考えるなら、ドルの底堅い地合いは継続する可能性がある。ユーロドルは1.30、ドル円は84.40レベルを突破するかが焦点となりそうだ。