全国の学生から寄せられた91作品の頂点は?

「I am Getty Images! 学生バナー広告コンペティション」最終選考会の様子

東京 渋谷のゲッティ イメージズ ジャパンにて、「I am Getty Images! 学生バナー広告コンペティション」の最終審査会が開催された。当日は、ファイナリスト5名による最終プレゼンテーションが行われ、最優秀作品が決められた。学生のフレッシュな感性による企業広告を求めた今回のコンペティションでは、ゲッティイメージズという企業に対する理解力、それをキャッチコピーに纏め上げる表現力、それらのファクターを写真とどのように結びつけるかが審査の重要なポイントとなった。

審査員を務めたのは、ゲッティ イメージズ ジャパン 代表取締役社長の島本久美子氏、同社クリエイティブマネージャー 小林正明氏に加え、電通 中川ミナ氏、雑誌「Web Designing」馬場静樹編集長の4名。

ファイナリスト5名が各自作品をプレゼンテーション

最終プレゼンテーションのトップバッターとして登壇したのは、バンタンデザイン研究所の小林圭人氏。小林氏の作品は、最終選考に残った5作品のなかでもっとも作家性に溢れたイラストがベースの広告だ。自分の作品制作でモチーフにしているという家電のなかでも最もお気に入りの冷蔵庫を、鉛筆を用いたモノクロの線画イラストと美しい色が魅力的な写真とで組み合わせた作品である。モノクロでありながらも、その中から色が見えてくるかのような表現力に溢れていた。

作家性の強いイラストをベースに、ゲッティイメージズの写真をちりばめた小林氏の作品「Images In A Refrigerator」

次いで登壇したのが、ゲッティ イメージズを自身で利用した際に感じた体験をストレートにキャッチコピーに乗せた総合学園ヒューマンアカデミー横浜校 佐藤由佳氏。作品のキャッチコピー「甘く見てました」は、まさかここまで多種多様な写真が存在し、写真のみならずイラストも豊富に用意されていることに驚かされたこと、「ふわふわ」や「キラキラ」といったニュアンスを入力して検索しても的確に写真がチョイスできることに対しての佐藤さんなりの勘定が込められている。

ゲッティイメージズを利用した際に受けた印象を色濃く反映させたという佐藤氏の作品「甘く見てました」

三番手に登壇したのは、デジタルハリウッド 内野由美子氏。内野氏がゲッティ イメージズに対して抱いた「世界中のイメージをゲットする、捕食する」というイメージや、「強く純粋な欲求」。これらをを表現するべくチョイスしたのは、作品のメインに据えられた素敵な表情の少女の写真。少女かぶりつくのはゲッティ イメージズに数多ある写真、そしてそこからみずみずしい果物のように果汁が滴り落ちる様を写真で表現するなど、コンセプトワークから最終的なアウトプットまで纏め上げていた。

まるでリンゴにでもかじり付きそうな女の子の写真が印象的な内野氏の作品「I am Getty Images!」

そして4番目に登壇したのが、今回のコンペティションで最優秀賞に輝いたデジタルハリウッド 大場真之介氏。大場氏のプレゼンテーションは、ゲッティ イメージズとはどのような企業なのか、どんなサービスを提供し、クリエーターにどのような価値を提供するのかを自らの研究結果に基づき論理立てて進められていったという。また、ファイナリスト5名の作品で唯一のFlashによる動きのある作品に仕上げられており、ゲッティ イメージズの写真とキャッチコピーが効果的に表現されていたのが印象的だった。下に掲載しているのが、最優秀賞を受賞した大場氏の作品だ。

最優秀賞「あるものから選ぶのではなく、作るために撮る」

プレゼンテーションのトリを務めたのは、福岡より最終選考に挑んだ麻生情報ビジネス専門学校 丸山ひかり氏。「すべての素材に愛を込めて」というタイトルへとたどり着いた経緯は、ゲッティ イメージズで提供されている作品に対する企業としての「愛」、そして、それらを利用するクリエーターにも「愛」をもって接してもらいたいという想いから。イメージを象徴するフィルム、愛を象徴するハートを巧みに用いて閃きと思いやりをもって制作されていた。

オープンリールとロゴタイプで構成されたシンプルかつスタイリッシュな丸山氏の作品「すべての素材に愛を込めて」

「企業広告デザイン」の本質を知る良い機会

前記の通り、同コンペティションの最優秀賞受賞者はデジタルハリウッド 大場真之介氏に決定した。審査員の島本氏は「正直選考に悩みました」と率直な感想を述べるとともに、「広告を打つ会社の立場をよく考えられている。企業研究の賜でもあるメッセージの強さ」において大場氏の作品を評価した。中川氏も「クライアントのことを理解しようとしがみついている姿勢、何か糸口はないかという熱意が見えたこと。それが最終的なアウトプットに繋がってくる」と高評価。「実際のWebのバナーで考えた場合、限られた容量の中で、どれだけユーザーから注目を集められるかが重要。まだブラッシュアップすべきところはあるけれど、これからの勉強によって期待が持てる」とやや辛辣な意見を述べたのは馬場氏。そして小林氏からも「まだまだブラッシュアップの余地はある。シンプルなメッセージに帰結する前に、もっともっと頭の中で考えを巡らせる作業を行うと、より洗練されたシンプルなメッセージへと昇華する」とクリエイティブマネージャーならではのアドバイスがあった。

最優秀賞に輝いた大場氏(画像左)とゲッティ イメージズ ジャパン 代表取締役社長 島本氏

学生の段階からクリエイティブの流儀を味わうことの意義

ゲッティ イメージズが今回このような学生向けのコンペティションを開催した理由は自由闊達なアイディアや表現が学生から生まれてくることを期待したからだという。また別の軸では、社会でクリエイティブな仕事に従事した際に必須となるクライアントのことを考え抜き、クライアントの背後にいるコンシューマへどうアプローチするかといった、一連の広告制作の思考に触れて欲しいという意図があったという。今回ファイナリストに選ばれた5名は、それぞれ光る部分を持っていた。筆者から見れば「誰が最優秀賞に輝いてもおかしくなかったのでは」と思える程、実力は拮抗していたという印象がある。今後、同様のコンペティションを定期的に行うという計画もあるようなので、クリエイター志望の学生は是非参加して、プロのクリエイティブとはどのようなモノなのか、考える/感じ取るきっかけにして欲しい。

ファイナリスト5名と今回の審査を務めた審査員で記念写真