――実の話、コンパクト機の光学的な性能は頭打ちに近付いているでしょう。従来技術の延長上でオマケ機能だけ付加していっても、それ以上前進できなくなる。その点に、カシオさんは早くから視点が定まっていたということですね。

今村「ハイスピードシステムの開発には、いずれ動画と静止画の垣根が無くなるだろうという視点がありました。そこで、高解像度動画の中の一枚を切り出して写真にする、ということを標榜して作り上げたんです。

しかし、今回はそこからさらに一歩進んで、一枚の画像を撮る、一回のシャッターを切るだけではどうすることもできない性能の壁を複数枚の画像を使うことで超えようと考えました。解像力の問題、ズーム倍率の問題、レンズの明るさの問題、ラチチュード(ダイナミックレンジ)の問題など、そういった光学的な性能の壁を超高速連写とデジタル画像処理で補助、改善しようという発想が生まれました。

簡単に言えば、一回のシャッターで多くの情報を得るためには、露光時間を増やさなければなりません。すると、手ブレや被写体ブレが起こりやすくなる。ではシャッター速度を上げればいいかというと、今度はセンサー感度を上げる必要があり、ノイズによる画質劣化が起こるんです。EX-ZR10のエクシリムエンジンHSは、これらの複合的な問題をマルチフレーム合成、つまり"超高速連写した4枚の画像を合成する"ことで克服しています」

――これはまさに目から鱗。ハイスピード処理技術は、このためにあったのかと思いました。

今村「実は、この発想は初代ハイスピードモデルであるEX-F1の頃からあって、当時から、明るさの扶助やノイズリダクションに高速連写を利用していました。それ以来、カタログなどでは大きく明記はしていませんが、マルチフレーム(複数回撮影結果)の合成をする際には、それを利用したノイズリダクションを採用しているんです。合成した画像の点数が多ければ多いほどノイズが低減され、ラチチュードが広くなり、解像度も色再現性も向上します。EX-ZR10の大きなウリでもある、HDR(High Dynamic Range)アートやプレミアムズーム(超高速連写した4点の画像を合成して解像感を高める機能)は、この最大の恩恵といえますね」

ハイスピード機能を応用した「HS夜景」や「HDRアート」などの設定は、本体上部に設けられた「HSボタン」から

――では、その「HDRアート」についてお聞かせください。

今村「シャッター音をオンにしておくとよく分かると思いますが、秒間約40コマの速度でレリーズしています。動く被写体に対処しつつ性能を上げるには、これくらいの速度が必要ですね。ここに私たちのハイスピード技術が活きています」……つづきを読む