昨日の欧米市場
欧州株式市場はリスクテイク一色の展開へ。原油価格が節目の1バレル=90ドルを一時突破し、銅価格も過去最高値を更新した影響を受け、資源株が引き続き底堅い展開が継続。英FTSE100では、大手小売のテスコ(TSCO.L)の第3四半期売上高の伸びが好感されたことで、小売株も相場上昇の牽引役となった。
米株式も投資家のリスク許容度の拡大から幅広い銘柄で買いが先行。オバマ米大統領がブッシュ政権時代に導入された減税措置を2年間延長する方針を明らかにしたことが市場で材料視された。ただ、米債金利が10年債を中心に上昇したことで、ウォール街株価指数、米SPX500種は共に徐々に上値の重い展開となった。
一方、為替市場ではアイルランド議会が同日、2011年度予算案を可決するとの見通しからユーロ買いの展開へ。対ドルで一時1.3400のラインをタッチする場面も見られた。しかし、欧州債務問題への根強い不安を払拭するまでには至らず、また米債利回りの上昇を受けドル買い圧力が強まったことから、再び1.32後半まで急落する荒れた展開となった。
ドル円は米債金利上昇に加え、82.50レベルを割りこんでもそれ以上円高に走らなかったことが確認されたため、市場にドル買い安心感が広がり、83.66レベルまで上昇。その後利益確定売りにより上値が重くなるも、83円台を維持したまま本日のアジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・08:50 日本 : 10月国際収支
・08:50 日本 : 10月機械受注
・20:00 ドイツ : 10月鉱工業生産
・21:00 米国 : MBA住宅ローン申請指数
・22:15 カナダ : 11月住宅着工件数
・27:00 米国 : 10年債入札(210億ドル)
・翌05:00 ニュージーランド : RBNZ政策金利発表
要人発言
・18:20 オーストラリア : ロウRBA総裁補佐の発言
・25:00 ドイツ : ウェーバー独連銀総裁の発言
アジア時間の見通し
欧米株式がリスクテイク一色となったことで、本日アジア株式もその影響がどこまで波及するかが注目される。
朝方(午前7時前)の日本225種の動向を見ると、取引終盤に米株が売り圧力にさらされた影響から10250レベルで上値が抑えられたものの、懸念されたドル円での円高もひとまず後退しており、主力輸出関連を中心に底堅い展開となるかが鍵を握りそうだ。
そして、更に注目したいのは、世界の株式相場を牽引している資源セクターの動向。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が追加の金融緩和として量的緩和第2弾(QE2)の規模拡大(6000億ドル超の国債購入)を示唆したことで、将来のドル安やインフレヘッジの観点から、投資家の資金が商品市場へ引き続き流れ込んでくるとの観測が市場では強まっている。また、SPDR GOLD SHARESといったETF商品の存在がより商品市場に投資し易い環境を投資家に与えていることも大きいだろう。
これら要因が重なり、貴金属価格は過去最高値を更新、原油先物市場でも1バレル=90ドルに到達する状況となっている。特に後者の原油市場に関しては、ベネズエラのラミレス石油相からも原油価格は1バレル当たり100ドルが「適正」との発言があったことに加え、米大手金融機関JPモルガン・チェースは、11年の平均価格予想を従来の89.75ドルから93.00ドルまで引き上げ、更に12年末には120ドルまで上昇するとの見通しを発表しており、相場を下支えする可能性がある。コール・オプションで権利行使が各100ドル、105ドルの建て玉が増加している状況も考慮するなら、商品市場の活況が資源株の動向に与える影響を無視することはできず、特に商社株や鉱山株そして開発に伴い需要増加が見込まれる重機関連といった銘柄の動向に注目したい。
一方、為替市場ではユーロへの不安が消えない。米国で追加の量的緩和策も検討されている中、ユーロの上値が伸びないのはやはり欧州債務問題に対する投資家の懸念が根強い証左だろう。
レニハン・アイルランド財務相が予算通過へ絶対過半数を確保したと表明しても投資家の不安心理を払拭することができず、ユーロドルは1.3400から1.32ミドルレベルを窺う展開となっている。
欧州中央銀行(ECB)がアイルランドやポルトガルの国債を買い支えられるとの観測が継続する間は、1.30―1.34を中心レンジとし、売り買いが交錯する状況となりそうだ。しかし、域内4番目の経済規模を持つスペインの存在が背後にある限り、常に伝染リスクは付きまとう。ユーロ売り基調が継続した場合、本日のサポートポイントは目先、1.3250をブレイクするかが下値ポイントとなりそうだ。このレベルを破られると1.3200割れが再び焦点として浮上してくる。
一方、ドル円は82.50をブレイクしてもすぐに反転したことで、ドル買いトレンドが継続している可能性が高まっている。82.50からちょうど1円レンジの83.50レベルを突破すると売り圧力が強まっていることから、今日は基本レンジを82.50-83.50とし、84.00、82.00をそれぞれ次のターゲットと想定したい。特に上値を試す展開となった場合は、日本225種でもリスクテイクが強まる可能性があるため注視したい。