Aviraは、フリーのセキュリティ対策ソフト「Avira AntiVir Personalで有名なドイツのITセキュリティの専門会社である。日本市場に参入してほぼ1年が経とうとしている。今回、Avira創業者であり、現CEOのチャーク・アウアーバッハ(Tjark Auerbach)氏とセールス&マーケット ディレクタのトラビス・ヴィッテベーン(Travis Witteen)氏の2人が来日。彼らに日本市場におけるAviraの過去・現在・未来などを聞いてみた。
日本市場への参入と今後の取り組みについて
日本市場に参入されて、約1年が経とうとしています。これまでの状況についてお願いします。
チャーク・アウアーバッハ氏:これまでの経過ですが、非常に多くのユーザーに満足をいただき、喜んでおります。そして、日本市場参入前は、75万人程度であったユーザーが、現在は250万人になっています。100%以上の伸びを示していますし、売り上げの数字も100%以上の数字を残しており、喜んでおります。そして、今日1周年のパーティがあるのですが、100人以上のユーザーが参加されるということで、ユーザーの皆さんとお会いできることを非常に楽しみにしております。
Aviraとして、他の市場との違い、もしくは、特に日本で力を入れていることはありますでしょうか?
チャーク・アウアーバッハ氏:どの市場も多少の違いというものはありますし、それぞれに個々の特殊なニーズというものをある程度抱えていると思います。ですので、いかに我々の側で日本のユーザーのニーズの応えるよう市場に適合していくかがポイントかと思います。いろいろな方策や試みを行っているところです。ローカルのサポートやローカルの人員を配置して対処をしていく、そして、今何が起こっているのか、ファイルの中身には何があるのかをウォッチしていく、そして我々のソフトウェアの中でなにができるのかを考えていくことを含めて、いろいろな対処を考えています。その1つとして、アジアにおいてということになるのですが、アンチウイルスラボを近々、マレーシアに開設する予定です。
たとえば、日本では「ワンクリック詐欺」といったものがあります。最近では、検索サイトから本来の被害者ではないような、子供や高齢者までが被害に遭うといったケースが報告されています。
チャーク・アウアーバッハ氏:私としても、このような例に関してはもっと具体的な情報を知りたいです。日本語ですと、英語使いである我々には理解できないことも少なくありません。日本のスタッフでないとわからないこともあるでしょう。ですので、日本のローカルスタッフにもがんばってもらい、情報を収集していきたいと思います。似たような事例はドイツでもあります。たとえばGoogleの検索サイトで「Avira Antivir」と入力しただけでも、トップのハイライトであがる3つの結果が、偽者であったり、スケアウェアやマルウェアをダウンロードさせようとするWebサイトが表示されます。似たような事例といえるでしょう。
日本のユーザーにAviraの製品についてアピールしたい点は?
トラビス・ヴィッテベーン氏:我々の製品で注力しているのは、防御、検知、そして修復の3つになります。それと同時にパフォーマンスもよくなくてはいけないので、パフォーマンスも充実したものとなっています。そして、より一層のサポートを受けるために、Aviraからのサポートを受けたいという場合には、有償版に乗り換えていただきたいです。有償版には、さまざまなサポートが用意されています。インターネットのプロッフェショナルで、トランザクションの量も多い、非常に機密性の高い情報をやりとりしている、さらにモビリティも高いというユーザーであれば、有償のバージョンを使っていただく必要があるでしょう。
現在の脅威分析と対応について
最近の脅威の中で、非常に問題と思われるものがあれば教えてください。
チャーク・アウアーバッハ氏:過去10年間をめぐるセキュリティの様相はかなり変わってきています。以前は自分の力量を見せびらかせたい愉快犯やスクリプトキディと呼ばれる子供たちがやっていました。しかし、最近では集団で収益をあげることが目的となっています。
多様化、凶悪化する脅威、さらにはソーシャルエンジニアリングの手法を使った騙しのテクニック、もはや注意力だけでは、その脅威を防ぐことはできないと思います。強力、安全なセキュリティ対策ソフトが求められると思います。
トラビス・ヴィッテベーン氏:そうですね。Web閲覧におけるセキュリティは、セキュリティ対策のなかでももっとも重要な分野であると思います。我々のソフトウェアでもWebの悪用、既知のフィッシングサイトURLなどがすでに対処されています。いたちごっこになってしまい、最新の情報にアップデートすることが難しくなっている点が問題点かと思います。まだまだ改善の余地はあるかと思いますが、すでに対策はとっています。
Androidなどのスマートフォンも普及が進んできています。これらへの対応はいかがでしょうか?
トラビス・ヴィッテベーン氏:十分な数が出まわってきますと、それだけの市場性が生まれてくる、そして、お金儲けができるようになる。お金儲けができるようになれば、それに合わせた脅威を作り出してくるでしょう。ですので、もちろん対処しなければならないデバイスの1つとなります。
ソリューションとしてはPCに似たものとなるのですが、現在出まわっているスマートフォンなどのデバイスでは、パフォーマンスはPCよりも劣るものが一般的です。クラウド上のソリューションとデバイス上にローカルで配置するソリューションを組み合わせて使っていく必要があると思います。その方向性の第一段階として、2010年にデータセンタークラウドの企業を買収しました。
今後、こういったソリューションに向けての対応もしていく予定です。我々のコアテクノロジの部分ですが、エンジンについては、もともと可搬性に優れたポータブルな軽量なものとなっています。クリーンUNIXベースですので、スマートフォンのアンドロイドといったOSに対しても、十分対応が可能です。
今後のアジア地域、日本での予定について
今後、アジア地域、もしくは日本市場への新たな製品の投入予定など差し支えない範囲で教えてください。
トラビス・ヴィッテベーン氏:次のアクションということでいえば、韓国市場参入のために韓国版を予定しています。製品、ソリューションとしての次期バージョンについては、準備が整った時点で発表する予定です。日本の市場におきましては、現在、エンドユーザー向け製品のみを提供しています。しかし、準備が整い、企業向け製品もサポートすることができるという段階になりましたら、考えていきたいと思っています。
日本市場では大手セキュリティ製品では、年に1回のメジャーバージョンアップが行われています。
トラビス・ヴィッテベーン氏:一般的にいいますと、我々も同じことをやっております。2009年12月にバージョン9をリリースし、そして、数週間前にバージョン10をリリースしました。メジャーアップグレードのみに注目するというのは誤解を招くマーケティング上のツールのようなものだと思います。有償のプレミアムの製品であろうが、フリー版であろうが、つねにコンスタントにアップデートをしています。エンジン、シグネチャー、そして製品全体の改善もつねに行っています。
さて、最後になるが、今回のインタビューでもっとも印象に残った内容を紹介しよう。冒頭で触れたようにAvira AntiVir Personalはフリーであることも注目の1つである。しかし、Avira AntiVirでは、ウイルスの検出力などを評価するテストで、検出力の高さも目立つ。その点について尋ねてみた。
AV-Comparativesのテストでは、非常に強力な検知力が評価されています。
チャーク・アウアーバッハ氏:こういう賞は気に入りません。こんなものをもらうと怠けてしまいます。マーケティング素材としては、すばらしいものなのでしょう。しかし、これで怠けてしまっては本当に困るのです。Aviraの会議室では、1つの壁にはこれまでに受賞した賞が貼ってあります。私が背にしている壁には、今まで取れなかった賞が書かれています。会議の話題はいつも、取れなかった賞についてになります。
セキュリティ対策ベンダーとして、現在の評価に留まることなく、今後もより強力で安全なセキュリティ対策ソフトを提供していく姿勢をうかがわせるものであった点が強く印象に残った。