出走順も今年から変更になった。昨年までは、トライアルでのタイムが速かった順番だったが、それだと開会式直後の人混みの中でスタートすることになり、これが「一番手は完走できない」というジンクス(?)の一因となっていた。トライアルで頑張ったチームが一番不利な状況で走るのはおかしい、ということで、今年からはランダムに。速いロボットと遅いロボットが混在することで、追い越しが増えるという効果もある。

スタートしたらあとはロボットの判断のみで走行し、基本的に人間は操作できないというルールは第1回から共通している。そのためロボットには、自己位置の同定、障害物・人間の検出といった機能が必要で、完走のためにはセンサーやアルゴリズムをどうするかが重要。自己位置の同定には、当初はGPSに頼ったロボットが多かったが、あまり精度が期待できないということで、昨年あたりからはレーザーレンジファインダ(LRF)を使っているチームが増えてきている。ビルや木の位置は変わらないので、LRFで見ればこれが目印になるわけだ。

今年の完走は以下の7チーム。競技ではないため、順位は付けられていないが、日立製作所 機械研究所の「Sofara-T」がタイムとしては最短だった(とはいえ、時速4kmまでというレギュレーション上の制約があるため、ほとんどこれ以上早いタイムは出しようがないという側面もある)。日立製作所はこれで2年連続の完走。

以下、今年の完走チーム(出走順)

チーム名 ロボット名 タイム
防衛大学校 情報工学科 ロボット工学研究室 Smart Dump IV 21分20秒
千葉工業大学 fuRo アウトドア部 Papyrus III 43分46秒
筑波大学 知能ロボット研究室 屋外組2010 ひとつぼ 30分05秒
日立製作所 機械研究所 Sofara-T 20分22秒
電気通信大学 知能システム学講座 CARTIS TypeR 25分48秒
Scuderia Frola AIST Marcus 24分31秒
富士ソフト/筑波大学MRIMプロジェクト TUFS2010 26分26秒

Sofara-Tは、LRFを5つ搭載。両肩の2つで高い場所のランドマークを見て、側面と正面の3つは主に障害物を検出している。非常に走行が安定しており、ほとんど「迷い」が見られなかったのだが、実は10m先から障害物を回避しているとのことで、そういったアルゴリズムの優秀さが、安定さに繋がっていたようだ。オマケとして、このロボットはゴールからスタート地点に戻るところまで自律で動かしていた。

白線の手前でピタリと一時停止した「Sofara-T」。完成度が非常に高かった

まったく危なげなくゴール。それもそのはず、前日にはコースを7周もしたそうだ

日立に次ぐタイムだったのは防衛大学校 情報工学科 ロボット工学研究室の「Smart Dump IV」。防衛大学校チームは昨年の完成度も高かったのだが、そのときはスタート直後の人混みでロボットが誤った判断をしてしまい、本走行はわずか25mでリタイアだった。今回はそういった状況にも対応できるようにアルゴリズムを改良しており、こちらも非常に安定した走行を見せていた。

何度も追い越しが見られた「Smart Dump IV」。自動ドアの向こうがゴールだ

GPSも搭載しているが、ボディの両脇に内蔵されたLRFをメインに使っている

千葉工業大学 fuRo アウトドア部の「Papyrus III」もLRFで自己位置を同定するが、コース後半、遊歩道の橋を渡ったあたりからは、あえて画像認識に挑戦。広角カメラで路面の白いタイルを見ており、この情報をナビゲーションに利用したそうだ。時間はちょっとかかってしまったが、これは途中で安全のために速度を落としたのに、プログラムのミスで元に戻らなかったためとのこと。

バーの上に広角カメラを載せている「Papyrus III」

こんな感じに白いタイルが見えているので、これを利用した