エンドユーザーだけではなく開発者の使い勝手も意識

「Windowsを用いる利点は開発側にある。PCベースでの開発が可能であり、そうすることで製品展開を加速させることが可能となる。ユーザー側とすれば、Silverlightはサブセットだが、開発する側としては、Webで製作したコンテンツなどを持ち込むことが可能となる。そこが従来の組み込み向けUIの製作と違うところ」と松岡氏はSilverlightを組み込みで活用する意義を表現する。

ただし、カスタマ側が勝手にチューニングをできないため、個々の性能としては、フルスクラッチで開発したものに比べると劣る。これについては「開発期間の短縮という命題を解決することをポイントにしている。プラットフォームを1から作って、それをチューニングして性能を上げてとしていると、開発期間がかかってしまう」ということで、差別化要因をどこにおくかの問題として、同社としては、限られたリソース(開発資金と人材)をどこの部分にかけていくのかを意識した提案を行うことで、組み込みでの適用拡大を狙うという。

「日本メーカーの製品の中身もすでにODMやOEM提供で、台湾製だったりすることを考えると、日本の製品が高品質というのは、必ずしも言い切れなくなった」ということを踏まえると、どこで差別化を図るべきかということになる。結論としては、「やはり見た目(UI)であり、使い勝手」ということとなる。そこが同社がSilverlightをプッシュする理由であり、「クラウドからサーバ、PC、組み込みと一気通貫で扱えるテクノロジーツールとして考えると、同様のものはほぼない」としており、開発の横展開がしやすいというメリットがポイントと強調する。

あらゆる機器がネットワークで接続される世界の中、同社としてはサーバ、PCといったものと技術的な部分がシームレスな連携を組込機器でもできることが開発者の負担を減らせることにつながることを強調する

ちなみに、Embedded 7では、Windows 7で搭載される機能をおよそ6~12カ月のビハインドで搭載してきている。そうした意味では、DirectX 11なども将来的にはサポートしていく予定で、Compactシリーズでも「おそらく7の次のバージョンで対応する予定」という。

こうしたPCで用いられる技術が組み込みでも使われるようになってきたことで同社としても、「よりビジョンの提示が重要になってきている」という認識であり、「Microsoftは"コネクテッドデバイス"ということをずっと言ってきたが、ようやく時代が追いついてきた感じ。またMicrosoftのエヴァンジェリストは"コネクテッド エクスペリエンス"を語っているが、これはユーザーの使い勝手に加え、開発や運用のしやすさなども含めた意味として使っている」とのことで、エンドユーザーの使い勝手のみならず、開発側の扱いやすさを考えると、PC向けインターネットで培ったノウハウを活用できることは、組み込みの世界でも優位に働くはずという見方を示す。

開発側を意識したWindows Embeddedにおけるコネクテッド エクスペリエンス

さらに、「Windows 7に搭載されている機能。例えば、センサロケーションフレームなども含めて、可能な限り使えるようEmbedded 7でも提供していく。例えばタッチパッドなども標準化することで、開発が楽になる。次世代のバージョンではそうした標準化機能がさらに増えるので、開発負担をさらに減らせることが可能となる」とするほか、「今、世の中に売られているものの機能で、自分たちも活用したいというものがあれば、Windows 7ベースで開発できるため、開発の制約はあるものの、昔に比べてはかなり容易に開発できるようになったはず。そうした環境において、エンドユーザーが欲しているのは、使いやすいアプリケーションと使い勝手、そしてコスト。2011年春にはEmbedded 7のすべてのシリーズが揃うことになり、そうした意味では、そうした要求を意識した開発が可能となる」としている。

結果として、さまざまな組込機器の領域で、Windows 7をベースとした開発が可能となることから、そうしたさまざまな組込機器ベンダに2010年度第4四半期(2011年1-3月期)に評価をしてもらい、2011年度で本格的に開発を行ってもらい、対応を図ってもらうというステップが可能となる。同社としても、そうしたカスタマの手伝いを行っていければ、と意欲を示しており、今後は、よりそうしたカスタマの事業の拡大に向けた手伝いをして行ければとの展望を示してくれた。