米Microsoftは11月23日(現地時間)、同社が現在開発中の次世代ホームサーバOS「Windows Home Server "Vail"」(「Vail」は開発コード名)において、現行バージョンの主要機能の1つである「Drive Extender」を搭載しない予定だと発表した。Drive Extenderは容量の異なるHDDでも、WHS搭載マシンに接続するだけで自動的に1つのドライブにまとめて冗長性を持たせる機能で、RAIDに代わるソリューションとして簡易性をアピールしていたもの。同社によれば1TBや2TBなどの大容量ドライブの入手が容易になったことを受けての措置で、同機能を省いたベータ版を2011年初頭にもリリースする計画だという。
同件についてはWindows Team Blogで報告が行われている。Windows Home Serverの初代バージョンは2007年11月にリリースされており、Small Business Server 2003をベースにホームサーバ向けの拡張機能を施した形態になっていた。主要機能としてはローカルネットワーク内のPC/サーバの自動バックアップ、ファイル/プリンタ共有、リモートアクセスなどがある。またファイル共有機能を提供する一環として、Drive Extenderという独自のストレージ拡張/冗長化機能が搭載されている。Drive ExtenderはUSB接続であれ、WHSに接続されたあらゆる種類や容量のストレージを認識して1つのストレージ空間としてまとめあげ、"シャドウコピー"と呼ばれる機能を利用してドライブ間でデータに冗長性を持たせることで、仮にストレージの1つが故障してデータが失われたとしても、システム全体としてはデータを保持できるという機構だ。当時のWHSではソフトウェアRAIDを強化するよりも、異なるドライブサイズで拡張や冗長化が容易なDrive Extenderのほうがメリットがあるとして前面プッシュされていた経緯があり、ある意味でWHSを象徴するメイン機能の1つともいわれていた。
だがMicrosoftによれば、昨今の情勢を省みるにコンシューマやSMB市場でのDrive Extenderは、ユーザーニーズを満たしていないと判断したという。その理由は前述のように1TBのドライブが手軽に入手できる値段になっており、今後は2TBやそれ以上のサイズのドライブについても同様のことがいえるというのだ。OEMベンダー各社がこうした大容量ドライブを組み込んだWHS搭載製品をリリースすることで、相対的にDrive Extenderのメリットが薄れることになるだろうということだ。もともとWHSは「HP MediaSmart Server」に代表されるように、OEMベンダー向けの製品提供が主眼に行われていたこともあり、自作市場で一般的な「余ったパーツを組み合わせてマシンを安価に組み上げる」といった用途での利用は少ないと判断された可能性がある。なお、自動バックアップなど、WHSの他の主要機能はそのまま継続して利用できるという。
現行のWHSはベースとなるOSがWindows Server 2003ベースと非常に古く、特に2TBを超えるパーティションのドライブの扱いや、最近の大容量HDDで採用されているAdvanced Formatへの未対応、そのほか最新ハードウェアへの対応など、さまざまな面で問題を抱えている。現在開発中の"Vail"こと「Windows Home Server v2」では最新の「Windows Server 2008 R2」をベースとしており、Small Business Server 2011 Essentialsなどの製品とともに2011年前半のリリースをめどにクローズドベータでのテストが続いている。2008 R2をベースにしたことで、前述の2TBドライブやAdvanced Formatへの対応の問題はクリアできる一方、OS自体は64ビット版のみのリリースとなる。そのため既存ハードウェアによっては新OSに対応できないケースも多数存在するとみられ、WHSv2へのアップグレードを考えているユーザーはハードウェアそのものを刷新しなければならないかもしれない。