次期Android OSの「Gingerbread」に関する話題が盛り上がっている。以前にGingerbreadのバージョン番号が「3.0」になるという話も出ていたが、現在では「2.3」のバージョン番号が付与され、12月中にもリリースされるとみられている。今回はこのGingerbreadに関して現在わかっている情報を簡単に整理していこう。

Gingerbreadに搭載される新機能

リリース間近といわれながら、Gingerbreadに関してわかっている情報がほとんどないのが現状だ。噂では多くの新機能を搭載することが言われているものの、Google自身からアナウンスされている新機能はわずか2つしかない。それが次の2つだ。

  • WebMサポート
  • NFCサポート

WebMはGoogleがオープンソース化したVP8ベースのビデオコーデックで、一時期問題となっていたWebブラウザが標準サポートするビデオコーデック問題を解決すべく登場した経緯がある。現状でもこの問題は解決したわけではないが、Google自身はSDKのリリースやChromeでの対応を進めており、オープンソースの各種ツールもWebM対応を進めている。流れとしてはGoogleの携帯OSであるAndroidがWebMをサポートするのも至極当然で、GingerbreadでのサポートがWebMのFAQページで明記されている。なお、WebMの技術を応用して静止画像の不可逆圧縮を行う「WebP」という画像フォーマットもGoogleによって提供されているが、こちらのサポートは明記されていない。

もう1つのNFC(Near Field Communication)とは、非接触型ICカードやRFIDタグなどで採用されている近距離通信の世界規格だ。日本ではSuicaやEdyなど「Felica」ベースのものが主流となっているが、一方でISO/IEC 14443という国際規格も存在し(「MIFARE」などと呼ばれることもある)、両者に互換性がない問題が存在していた。現在ではFelicaの拡張規格にあたるNFC IP-1がISO/IEC 18092 / ECMA-340として標準化され、さらにISO/IEC 14443のType-Bにあたる「MIFARE」にも対応したNFC IP-2がISO/IEC 21481 / ECMA-352として標準化された。このNFCのAndroidでのサポートについて米Google CEOのEric Schmidt氏は11月中旬に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたWeb 2.0 Summitの講演で、Gingerbreadを搭載したスマートフォンのデモを行っており、これがAndroidとして初のNFCをサポートした端末になるとアピールした(参考記事)。NFCサポートにより、対応ハードウェアとGingerbread以降のAndroid OSを搭載したスマートフォンは、いわゆる「おサイフ」機能を利用できることになるが、この初の端末となるのがGoogleケータイ「Nexus One」の後継にあたる「Nexus S」というのだ。

「Nexus S」と「Xperia X12」

このGingerbreadだが、最新の情報では12月6日(米国時間)に正式発表が行われ、これまでの例にならってNexus Oneなどの端末を中心にアップデート配布が順次開始されるという。この12月6日という日付は予測でしかないが、その根拠はWeb 2.0でSchmidt氏が数週間内のGingerbreadリリースを予告したこと、そして6日のこの日にサンフランシスコ市内のホテルで「D: Dive Into Mobile」という携帯系イベントが開催され、ここでAndroidの開発責任者であるAndy Rubin氏がスピーチを行う予定であることに由来する。いまのところGoogleが大々的にAndroid関連の発表を直近で行う場はこのイベント以外ないため、タイミング的にもぴったりというわけだ(参考記事)。

今回のGingerbreadだが、単に新バージョンの正式リリースが行われるだけでなく、同時にSchmidt氏がアピールしたGingerbread搭載の新端末が発表されるとの噂もある。その1つが前述の「Nexus S」で、おそらくSamsung製の端末ではないかとみられている(Nexus OneはHTC製だった)。SamsungがGoogle向けに「Nexus Oneの後継機種」を提供するという噂は以前よりあったが(当時は「Nexus Two」と呼ばれ11月上旬の登場とみられていた)、Web 2.0でのNFC発表を受け、それに対応したGingerbreadを搭載しての12月リリースになった可能性がある。

一方でSamsung製端末以外にもGingerbread搭載が噂されていた機種として、Sony Ericssonが開発中といわれる「Xperia X12」(開発コード名「Anzu」)の名前も挙がっていた。だが現在ではX12はGingerbreadではなく、現行のAndroid 2.2 "Froyo"を搭載して登場する可能性が高いという話も出ており、リリース時点でGingerbreadを搭載している機種は比較的限られる可能性がある(参考記事)。

タブレットサポートはHoneycomb (3.0)までおあずけ?

以上がGingerbreadに関して現時点でほぼ確定しているとみられる情報と、正式発表にまつわる話題だ。Froyoから比較してマイナーバージョンアップのため、確かに機能アップデートがほとんどない点はうなずける。だが当初は「3.0」のバージョン番号が噂されていたことからもわかるように、より広い視点でのAndroid拡張を目指していたともいわれる。その1つが「タブレット」などの大画面端末のサポートで、現状でWVGA (800×480または854×480ピクセル)と言われる解像度に対し、より大きいサイズ(例えば1366×768ピクセルのWXGA)をカバーし、さらに大画面向けのユーザーインタフェース刷新実現を目指した改良が行われていたようだ。

この大画面サポートとUI刷新がGingerbreadで行われるのかは不明だが、実際に「3.0」として2011年第1四半期のリリースが見込まれる「Honeycomb」(「ハチの巣」の意味)での正式サポートになる、あるいは実験的に先行してGingerbreadに投入されるという2つの可能性が考えられる。一部にはタブレットサポートを主眼にしたHoneycomb登場までAndroidタブレットの市場投入を見送ることを表明したベンダー(LGなど)もあり、仮にGingerbreadでのサポートが行われたとしても、非常に限定的になる可能性が高い。このHoneycomb登場は、スペインのバルセロナで2月中旬に開催されるMobile World Congress前後の時期が1つの目安になるとみられる。