ウィニングクルーが販売する日経225先物mini専用のトレードシステム『ハンニバル』は、「出来高の多い方向に相場は動いていく」という相場観を利用し、相場の流れに乗っていくトレードシステムだ。ハンニバルの開発コンセプトとロジックについて、ウイニングクルー 代表取締役の仲島友紀夫氏と、開発を担当したティーツープロデュース 代表取締役の菅原貴靖氏のお二人に話を伺った。
日経225先物mini専用のシステム、夕場にも対応
ハンニバルの特長は三つある。一つが、日経225先物mini専用のトレードシステムであるということ。もう一つがイブニング(夕場)にも対応したデイトレードシステムであるという点。三つ目が、出来高に着目して相場のトレンドを読み、それに順張りで乗っかっていく素直なロジックであるという点である。
まず、なぜ日経mini専用なのだろうか。
「単純な理由です。日経miniは5円刻みですが、ラージは10円刻みで、どうしてもスリッページが避けられません。トレードシステム=自動売買プログラムにとっては、刻みが細かいほど、うまく機能するんです」(菅原)。
もう一つは、夕方4時半から夜11時半までの夕場にも対応したシステムである点。「取引時間が大幅に延びたわけです。当然、これは利益を得られるチャンスが拡大したということですから、夕場に対応していくのは当然のことです」(菅原)。
コンセプトは、「素直に相場の流れに乗っていく」というものとなっている。
「さまざまな指標を使って、相場のトレンドを感知します。トレンドを見つけたらポジションを順張りで持ち、利益が乗っている間はポジションを持ち続けて、どこまでも利益を伸ばしていく。その途中で、トレンドが変わったことを感知したら、利益確定をするというきわめて素直なロジックです」(菅原)。
システムトレードにとって、「順張りの方が楽に利益をとれる」
シンプルで素直なシステムと聞くと、「利益をガツガツ取りにいかない、穏やかなシステムで、成績の方もそれなりなのではないか」と勘違いされる方もいるかもしれない。菅原氏は、今までに200以上のシステムを開発してきた。トレードシステムを開発するには、大きく分けて二つの手法があるのだという。
一つは、勝っている人が行っている裁量トレードの手法をプログラム化していったもの。もう一つが、過去の相場のデータを統計的に処理して、相場の歪みを探し出し、そこに着目して、利益をとるロジックを考えだしていくもの。もちろん、実際の成績は、システムの出来不出来、相場の大局的な状況によってさまざまだが、長続きするのは圧倒的に、「人間のトレード手法をプログラム化したもの」という。しかも、凝った手法ではなく、素直な順張りの手法が長続きするとのことだ。
順張りとはまったく反対の逆張り手法というものもある。相場が下落している最中に、最安値=底値を見極めて、そこで買いを入れ、次に訪れる上昇幅をめいっぱいとろうという手法である。
「今の相場は、もみあいの状況が続くことが多いですね。こういうときは、逆張り手法は有効だと思います」(仲島)。だが、「私も裁量トレードをされる方にとっては、逆張り手法は有効だと思いますが、システムトレードには向かないんです。逆張りは非常にプログラム化が難しい」(菅原)。
例えば、最安値を見極めることすら、プログラム化することは難しいという。今、5分足を見ているとする。今、直近の足の始値から始まって、5分後には終値ができて、一つのローソク足ができあがる。では、この終値が、今まででいちばん安かったら、それを最安値と考えていいのだろうか。そうはいかないのだ。次の足が、さらに安い値段になることがある。つまり、さらに5分後に、次の足もできあがって、それが安値を更新していないという事実が確認できて、初めて、一つ前の終値が最安値だと決められるからである。
「結局、最安値を決定するために、10分かかってしまうんです。逆張りのキモは、最安値、最高値をピンポイントで見つけ、そこでポジションを持つことです。これはプログラム化するのがとても難しい。一方で、トレンドに乗っていく順張り手法は、トレンドがでたと判断したら、すぐに成行き注文を入れればいいのです。システムトレードにとっては、順張りの方が、楽に利益をとれるんですね。いわば、順張りはシステム、逆張りはロマンなんです(笑)」(菅原)。
「難しい相場状況のときは、ポジションを入れない」
ハンニバルは、トレード回数が決して多いとはいえない。
「平均すると、1日1トレードないしは2トレード程度になります。もちろん、ポジションを持っていて、トレンドが変わると、決済をしてすぐに逆のポジションを入れるドテンをすることもあります。トレードをしない日もあります。ならすと、1日1~2トレードになるということです」(菅原)。
これは、取れる可能性の高いトレンドが明確に表れているときだけ、ポジションを取りにいくというハンニバルの性格からくるもの。
「もみ合いになっているような難しい相場状況のときは、ポジションを入れません。トレンドがでると、さっと入って大きな利益を取って勝ち逃げをしてしまうというイメージです。具体的には、もちろん一概にはいえないのですが、あくまでもイメージですが、最近の相場であれば、100数十円勝って、負けるときは30円~50円ぐらいで抑えるという感覚です」(菅原)。
使う指標は「出来高」「VWAP」が基本
ハンニバルは、トレンドを察知するために使う指標もさほど多くない。ロジックについては、次回詳しく触れるが、ハンニバルが使っているのは、「出来高」「VWAP」が基本で、これに移動平均を補助的に使うだけだ。コンセプトもシンプルだが、ロジックもシンプルである。
「裁量トレードでも、勝ちつづけているトレーダーの方は、あまりあれこれ指標を見ません」(仲島)。よく、非常にたくさんの指標を使って、すべての指標がシグナルを出していることを確認してエントリーする人がいる。慎重にということなのだろうが、逆効果になってしまうことも多いという。
「よくチャートパターンを見て、移動平均線を見て、MACDを見て、一目均衡表を見てと、たくさんの指標を見る方がいらっしゃいますが、すべての指標がシグナルを出すなどということは滅多にありません。結局、シグナルが出ていない指標でも、指標が出ていると強引に歪めて解釈して、エントリーしてしまうことになります。要は、毎回違った指標に頼ってしまうことになるのです」(仲島)。
「ただし、同じ指標を月足、週足、日足、時間足と異なった時間軸で見比べてみることは、トレンドを見極めるという意味で重要です。ハンニバルでもそのような考えを取り入れています」(菅原)。
これは、裁量トレードであっても、システムトレードであっても同じことだが、決して複雑で精密な計算をしたからといって利益が出るわけではない。むしろ、シンプルな考え方の方がうまくいくことが多いのだ。といっても「移動平均線がクロスしたら買い」のような機械的、安直な方法ではもちろんうまくいかない。
「ハンニバル」はシンプルなロジックだが、"安直な"ロジックではないという。なぜ、そう言えるのか。次回は、ハンニバルのロジックについて、詳しくお話を伺う。