市場においては、現状の米経済指標の回復基調(いや、期待か)に加え、欧州に対する懸念が終息するのかどうかというのがポイントとなりそうです。その意味では、今週の経済指標はやや少なめですし、木曜日はアメリカが感謝祭ということで休日になることから、実質アメリカ側の話題は3日間だけ(金曜日は休日のはざまで、仕事モードではないでしょう)なのが気になります。

HS指数

まずは、週明けから話題になりそうなのがアイルランドでしょう。

先週では、支援を受けることに対して懐疑的なスタンスを出していたアイルランドでしたが、金融機関に対する懸念が増大し、CDS市場に見られるように信用リスクがかなり低下している基調の中では、背に腹は代えられない状態でしょう。

ただ、EUさらにIMFから支援を受けるとなれば、アイルランド政府自身による緊縮財政方針に対して、かなり突っ込んだ要求が援助する側からとしては出てくる可能性が高いです。メディアで話題になっているのは、他のEU諸国同様の法人性への引上げなどが挙げられており、主だった産業もなく金融立国として発展してきたアイルランドとしては、かなり厳しい経済状態に陥る可能性があります。

そして、信用リスクという点では、ユーロの動向の興味を持っていればアイルランドだけではなく、他のポルトガル・スペインなども今後どうなるのか、という話題にも注意しておく必要があります。

アイルランドの金融機関における債務削減策に絡んで、ヘアカット(債務者側の一部元利金の返済を免除すること)の問題に対する懸念がかなり懸念されています。アイルランドの金融機関であるアングロ銀行においては劣後債の元本が事実上80%圧縮されることになります。

他に懸念されている金融機関もそれ相当の劣後債を発行していることから、今後の債務削減において投資家側としてもかなり警戒することになる可能性があり、欧州における信用不安がアイルランドの事実上の支援要請だけで収まるかどうかはまだ不透明なのが、市場では気になるところです。。

その上、仮に南欧諸国全体に懸念が波及することになり、スペインまでもがターゲットとなるとかなり問題が大きくなります。欧州系金融機関は膨大な融資残高をスペインに対して持っていることから、救済額が巨額になる可能性があります。市場においては『Too Big to Bail』(大きすぎて、救済できない)とも言われており、今年度において貯蓄銀行の話題がスペインで話題になっているだけに、はたして構造改革が進んでいるかどうかをしっかりとアピールできるかどうかがカギとなりそうです。

こういった中、今週の欧州側のイベントとしては、火曜日のドイツのGDP、ユーロ圏のPMI指数、そして水曜日のドイツIFO業況指数が注目されますが、信用リスクの前では影が薄くなりそうです。

ちなみに、週明けのアイルランドの支援規模は800-900億ユーロといわれ、一部金融機関では1000億近くという予想も出ています。その点では、ユーロは対ドルで下支えされる可能性があり、先週の調整で付けた1.34台半ばは、8月以降の50%付近に当たり、38.2%である1.3635-40水準をしっかりと回復していることから、これらのポイントは当面のサポート水準となりそうですが、信用リスクが再燃した場合には、注意しておきましょう。

ユーロ

一方、FRBのQE2の効果を図るのは、まだ先の話でしょう。

資金供給をしたとしても、経済の先行きに対してのマインドが向上した上で、各企業などが資金需要を喚起して金融機関に対して要請することになります。その上で、雇用促進・設備投資などが行われることを考えれば(企業が前向きであれば)、経済データの上でしっかりと回復基調が出てくるのは年明けではないでしょうか。

ただ、FRBのQE2に関して、規模に関する予想幅があったにせよ、行われるというシナリオが市場ではできていたことから、各金融機関からのレポートを受けている各企業としては、そのシナリオを前提とした展望を描いていたはず。ポジティブなマインドであるならば、今年のクリスマス商戦に対する期待感は市場ではあるかもしれません。

今月発表された小売売上高においては、まだそれほど明るい兆しというほどではないにせよ、一般消費財に対する売上増加がみられていることから、前倒しのクリスマス商戦となると思われますが、企業側としては期待していることでしょう。

その意味では、イベントとして注目されるのは、火曜日のFOMC議事録と四半期見通し。

最近の経済指標を受けて、一部では金融緩和に対するトーンが若干後退している向きもあります。

また、過渡のアメリカの金融緩和に対する他の国からの牽制もかなり厳しくなっており、G20などで保護主義的な行動を行わないというスタンスを考慮すれば、さらなる金融緩和を行うことには慎重にならざるを得ないでしょう。

よって、前述のFRB四半期見通しに絡んで多少落ち着いてきた米金利動向の動きには注意しておきたいです。今週もいくつか米経済指標が発表されますが、10年債利回りが3%を超してくるのかどうか。

また、仮に現状の2%台後半で推移している間でも、米株式市場が堅調に推移するのであれば、一般的にいわれている年末のドル需要とも合わせて、ドルの買い戻しが出てくる可能性があります。

こういった中、波乱要因として注目しておきたいのは中国や新興国の引き締めスタンスです。

先週金曜日には、あるメディアが中国人民銀行が『政策金利』を0.5%引き上げると報道したことでかなりドル買いが進んだ局面がありましたが、預金準備率の0.5%ということで元の水準でのもみ合いとなりました。一旦は資源関連などにも影響しましたが、市場では年内にでも政策金利の引上げという予想が出ています。

ちなみに、引き締めスタンスにあるには中国だけではなく、他の新興国においても同様です。ブラジル、インド、さらにはお隣の韓国、など。ただ、単に政策金利引き上げを行ったのでは、先進国の低金利という状態ではかなり投資家の資本を引き付けることになり、過剰な資本流入に対する警戒感が台頭するのは当たり前のことです。

資本が流入して経済が活性化するから良い、と単純に思われるかもしれませんが、いずれに国においても過去に過剰な海外資本によって、かなり手痛い過去の経験があったことを忘れてはいません。

私もアジア通貨危機の際に、アジア系の金融機関にいたのですが、信用リスク・各企業の設備意欲が怒涛のようになくなっていき、市場における資金調達においてはかなり厳しい状況でした。ましてや、グローバル経済が発展している時期を考えれば、現状での信用リスクの急低下というのはもっと厳しい状況になることでしょう。

よって、新興国においては過剰な資本流入による悪影響を防ぐ意味でも、規制をかけてくる可能性は当然のことだと思います。

ブラジルは金融取引税を6%に引き上げていますし、韓国においては新たな規制導入を模索しているようです。中国では海外投資家の国内不動産に対する規制枠をさらに厳しくしており、政策金利+規制というセットが今後の先進国の金融緩和スタンス次第では、新興国当局から出てくる可能性があります。

この場合には、投資コストが上昇することになり投信などの小口投資家に対して転嫁されることになります。様々な分野で大幅に投資残高が積み上がっている金融商品がありますが、年末ということもあり、新興国の金融規制次第では、ポジション調整圧力が出てくる可能性は考えておいた方がよさそうです。

よって、各市場においては、信用リスク次第という展開で、その中でドルへの回帰がどの程度進むのかという点で見ていったほうがよさそうです。ただ、アメリカが実質的に3日間のトレード意識になっていることから、流動性低下にともなって先週のレンジを大きくはなれるかどうか。それとも、投資家と実需の興味で上下、しっかりと固められてしまうのでしょうか。

ドル円

今週の主な経済指標

11月22日(月)
(米)10月シカゴ連銀全米活動指数
(米)財務省2年債入札
(米)コチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁 講演
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 議会証言
(ユーロ圏)スタークECB理事 講演
11月23日(火)
(独)第3・四半期GDP
(ユーロ圏)11月製造業PMI 速報値
(ユーロ圏)11月サービス部門PMI 速報値
(スイス)ヒルデブランドSNB総裁 講演
(独)12月消費者信頼感指数
(米)第3・四半期GDP 改定値
(米)10月中古住宅販売
(米)財務省5年債入札
(米)FOMC議事録 発表
(米)FRB、四半期見通し発表
11月24日(水)
(独)11月IFO業況指数
(英)第3・四半期GDP 改定値
(ユーロ圏)9月鉱工業受注
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)10月個人所得・消費支出
(米)10月耐久財受注
(米)新規失業保険申請件数
(米)11月ミシガン大消費者信頼感指数 確報値
(米)10月新築1戸建て住宅販売
(米)財務省7年債入札
11月25日(木)
(日)10月貿易統計
(日)10月企業向けサービス価格指数
(ユーロ圏)コンスタンシオECB副総裁 講演
米国休場[感謝祭]
11月26日(金)
(日)10月全国コア消費者物価指数
(日)11月東京都区部コアCPI
(豪)スティーブンスRBA総裁 議会委員会に出席
(仏)10月消費支出
(ユーロ圏)10月M3
(独)11月消費者物価指数 速報値

IMM通貨先物ポジション(11/16日時点)

11/16/10 week 11/09/10 week
Net 22,858 36,654
ユーロ 11/16/10 week 11/09/10 week
Net 8,606 23,283
ポンド 11/16/10 week 11/09/10 week
Net 23,771 21,266
豪ドル 11/16/10 week 11/09/10 week
Net 36,202 47,616