jQuery Mobile開発の第1段階はjQueryの改善

jQuery Mobile開発の第1段階はjQueryをモバイルデバイスやモバイルプラットフォームに対応させることにあったという。最初に述べたように、あくまでもすべてのデバイスに単一のjQueryを提供するというのがjQueryのやり方だ。この実現が第1段階となる。

結果的に、モバイルデバイス向けの開発したWebサイトやWebページはそのままPCのブラウザにも適用できるようになっている。これはjQuery Mobileの大きな強みといえる。

jQuery Mobile開発第2段階はモバイルUIの開発

jQueryがモバイルWebに対応したあとの開発が、いわゆるjQuery Mobileの開発だ。すべてのモバイルに対してそれぞれに適切な機能を提供するというプログレッシブエンハンスメントを適用するとともに、さまざまな工夫が凝らされている。John Resig氏から紹介があった特に優れたポイントは次のとおり。

フィックスツールバーの実現

実のところ、ブラウザで常に動かない固定されたツールバーを実現するのはとても困難だという。jQuery Mobileではこれを、移動時にはフェードアウトして消え、動作がとまるとフェードインして表示されるツールバーとして実装することで実現。動作も高速化し動きもなめらかになっている。

さまざまなフォームの提供

複数のデバイスで一貫した体験を提供するためにさまざまなフォームが用意されている。

柔軟なデザイン設定

さまざまなデザインに対応するためにデザイン変更可能性の高さを設計して実現している。最初から提供されているテーマだけでもかなりのデザインに対応できるし、これを変更して利用することもできる。

高いアクセシビリティ

たとえばiPhoneやiPadでネストリストで表示されていても、実際にはネストになったul要素を表示しているだけ。JavaScriptをサポートしていないデバイスからはただのHTMLのul要素としてレンダリングされるし、サポートしているデバイスならiPhoneやiPadのようななめらかなUIを体験できる。

jQuery MobileはPCブラウザにも対応している。最新のブラウザで閲覧すれば、どのブラウザでもほとんど同じUIが実現されている。

jQuery Mobile 1.0リリースも2011年1月

どのブラウザでもほとんど同じ見栄えにすることがjQueryのテーマ。モバイルでもそれは変わらないと断言するResig氏

現在2つ目のアルファ版が公開されているjQuery Mobileは、12月に次の試験版をリリースし、来年の1月には正式版リリースが計画されている。次の試験版がAlpha 3になるのかBetaになるのかはまだ未定だが、できればBetaとしてリリースできるクオリティにしたいというのがJohn Resig氏の希望。

追加したい新機能やプラットフォームはあるが、現在の開発はjQuery Mobile 1.0リリースへ向けたものになっており、新しい機能を取り込むよりも、現在サポートしているプラットフォームにおける動作をより安定して高品質なものにすることに注力しているという。

試験にはモバイルベンダに相談してデバイスを提供してもらっていると話があった。まだ発表されていないデバイスなども試験用に提供されているということだ。

ほかのプラットフォームのサポートはいつ?

jQuery Mobile Alpha 2はWindows Mobile、古いBlackBerry、Nokia/Symbianなどをサポートしていない。これらプラットフォームのサポートはいつになるかという質問に対しては、それぞれのデバイスの状況に拠ると前置きしたうえで、JavaScriptのサポート状況とCSS3メディアクエリのサポートで最終的にかわってくると説明があった。

特に重要なのは対象となるプラットフォームでCSS3メディアクエリがサポートされているかどうかだという。Windows Mobileのチームに対してすでにCSS3メディアクエリをサポートするように申請しており、次のバージョンのWindows Mobileで対応することになるだろうという説明もあった。特に、IE9の実装がWindows Mobileに反映されたあとには、jQuery Mobileの対応も期待できる。Windows Mobileへの対応は次のバージョンのWindows MobileとjQuery Mobile 1.0以降のバージョンが現実的といったところだ。

開発現場での感じたリアルな未来

John Resig氏がふだんメインで使っているモバイルデバイスはiPhone 4ということだ。やはりよく出来ていると感じるという。しかし、開発で使っている感じではAndroid 2.2とPalm Pixiもとてもいい仕上がりということだ。John Resig氏としては向こう2年間ほどで、Androidがシェアの上で主要プラットフォームとして台頭してくるだろうというといった感触を得たという。

Androidのシェアが急速に増えるという予測はすでに上がっている。しかし、それぞれのデバイスへのカスタマイズや複数のバージョンが混在するという「フラグメント」が問題視され、その意味において単一デバイス単一OSであるiPhoneとは比較にならないとみる向きもある。

しかしJohn Resig氏からみれば、jQuery Mobileにとってそれはほとんど問題にならないという。ネイティブアプリ開発にとってはこうした違いが大きな問題になるが、細かく構成が変わっても搭載されているブラウザには大きな変化はない。このため、jQuery Mobileを活用して開発する限り、そうしたフラグメントはほとんど問題にならないという。

また、Mozillaが進めているOpen Web Appの取り組みに関する言及もあった。これはAppleのデバイスに限られるApple App StoreやAndroidに限定されるApp Store、Chromeに限定されるApp Storeとは性格が異なるという。もっと多くのプラットフォームやブラウザが対象になるため、開発したアプリを販売したり配布するための大きな原動力になる可能性があることを示唆していた。

読者へのメッセージ - 最新技術のキャッチアップと活用を!

マイコミジャーナル読者へメッセージを求めたところ、John Resig氏は「常に最新技術に目を向けていくことが大切だ」と説明した。たとえば今は特にHTML5やモバイルWebが大きなトピックになっている。たしかに、3D関連技術など、こうした技術がすべてがすぐに使えるというものではない。しかし逆に、今まさに利用できる技術もある。たとえばWeb Workerやキャッシュ技術などがそれで、そうした技術を活用することもで高速化も可能だ。最新の技術に常に目を向け、こうした技術を活用していくことが大切だと結んでいた。

Mojilla Japanのオフィスで。Resig氏はこのインタビューの直後、中国・北京に向かい、その数日後にまた東京のイベントに参加するという過密スケジュールだったが、時間ぎりぎりまでたくさん話してくれました。感謝!