一方、同社の主力事業のひとつである血糖値測定システムに利用されるセンサーを生産する、血糖値測定センサー新工場についても初めて公開にした。
建築面積約4,200平方メートル、延床面積約8,900平方メートルを持つ3階建ての工場で、投資額は約30億円。1階は部品供給エリアと製造エリア。2階が品質管理エリアと今後増設する製造エリア、事務施設。3階が空調関連施設やUPS室などがある。1階の製造エリアでもまだラインの増設が可能だ。
2011年4月から生産を開始し、2012年度には、徳島県脇町地区の生産拠点とをあわせて、月産3億6,000万枚(年産44億枚)の体制を整える。「現在、第1世代、第2世代、第2.5世代の3種類のセンサーを生産している。新工場では第2.5世代のセンサーを生産することになる」という。
第1世代の血糖値測定センサーは包装形態がアルミであり、検体量が2.0μl、測定時間が15秒、校正や検量線切り替えがそれぞれチップで行っていたが、第2世代および第2.5世代では、包装形態がボトルであり、検体量が0.6μl、測定時間が5秒、校正や検量線切り替えが自動で行われる。「第2世代の血糖値測定センサーは、少ない血液で、短時間に結果ができるように改良が行われている」という。
生産ラインでは、Pdロールと呼ばれるシートがライン投入され、まずは電極形成工程によって枚葉カットやパターン描画などが行われる。その後、試薬塗布工程で、試薬の塗布や乾燥、上カバーの貼り付けが行われ、さらに、カット・包装工程でそれぞれのセンサーに番号の印字と、ボトル包装が行われる。最後にバルク包装が行われ、出荷されることになる。この間のすべての作業が人手を介さず機械化されている。
「1991年から血糖値測定センサーの供給を開始しているが、医療分野においては、一度発売した製品を継続的に供給することが前提となっており、第2世代のものが登場した現在も第1世代の製品を提供しつづけている。第1世代の製品は徳島県脇町で生産している」という。第1世代の生産工程は、第2世代のものよりも工数が多くなっているという。また生産量は第2世代のものが多いという。血糖値測定センサーは、血液をセンサーの上に載せ、専用の機器で測定する仕組み。一度使ったセンサーは廃棄することになる。
パナソニックは、血糖値測定センサーでは、国内では約60%のシェア、海外では20%強のシェアを持つという。
新工場では、大規模地震が発生しても生産設備への被害を最小限にとどめるために、免震構造を採用。医薬品を扱う工場に求められる厳しい品質要求に対応した構造としており、防虫・防塵対策、ゾーニング動線管理、バリデーション、製造環境対策を施している。
山根社長は、「糖尿病は血糖値により、インスリンの投与量や食事の調整が必要なため、きめ細かいチェックが必要になる。重症患者の場合、一日4回の検査が必要になる。免震構造としたのも、市場への供給責任という観点から取り組んだもの。また、すべての国の薬事対応が可能な環境にした」という。
免震構造では60本の滑り支承を設置。揺れを2分の1から5分の1程度まで抑えることができる。また、環境面においては、建物環境総合性能評価(CASBEE)Aランクを取得している。「新工場は機能と環境保全を重視したクリーンでコンパクトな最新鋭の医薬品製造工場になる。品質対応、環境対応、危機管理対応で最先端のものになる」と、山根社長は自信をみせた。