三菱電機は11月16日、マルチメディアワイド液晶ディスプレイ「VISEO」シリーズの新モデル、23型ワイドの「MDT231WG」を発表し、記者説明会を開催した。主なターゲットをゲームに高い関心を持つユーザーとし、ゲームや動画を高品質に表示する機能を豊富に盛り込んでいる。
「MDT231WG」の主な仕様などについては、別記事の「三菱電機、120Hz駆動IPSパネルとLEDバックライトの液晶ディスプレイ」を参照していただきたい。
HDMI搭載のマルチメディア液晶ディスプレイに注力
説明会の冒頭では、三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部長の田村直己氏が、日本国内における液晶ディスプレイの市場動向や、同社の液晶ディスプレイ事業について紹介。国内市場は2009年に若干落ち込んだが、ここ数年はほぼ横並びの市場規模で推移しているとした。その中でも、三菱電機の液晶ディスプレイは、店頭販売でも法人向けでも金額ベースでトップシェアを獲得しており、好調さを物語る。
三菱電機の液晶ディスプレイ事業は4つのセグメントで分かれており、グラフィック事業、パブリックディスプレイ事業、マルチメディア事業、スタンダード事業だ。スタンダード事業を除いた3事業を「強化セグメント」と位置づけ、今回の新モデルとなる「MDT231WG」が属するマルチメディア事業には特に注力している。同社ではHDMI端子を持つ製品を「マルチメディア対応」と定義し、2010年の市場規模を約66万台と推測。そのうち約40%は高性能/高機能を求めるハイエンドユーザーと想定し、ハイエンド領域で50%のシェアを目指すとした。
最後に、三菱電機が液晶ディスプレイに搭載してきた技術の流れも紹介され、常に新しい技術を先行して市場に投入することや、ユーザーの要求に応えられるオンリーワン製品の投入を心がけていくと締めくくった。
ゲームのジャンルを問わず高品質に表示する「MP ENGINE III」
続いて、三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 デジタルメディア事業部 モニター事業センター長の村田光司氏が、今回の新モデルとなる「MDT231WG」を紹介。話題の中心は、動画やゲームの表示で残像感を減らす「MP ENGINE III」と、解像感を高める超解像技術の「ギガクリア・エンジンII」だ。
まず「MP ENGINE III」では、IPS液晶パネル、LEDバックライト制御、120Hz駆動の倍速補間がポイント。この3点を組み合わせることで、さまざまなジャンルのゲーム表示に適した3つのモードを搭載する。IPS液晶パネルにおける倍速駆動/倍速補間、およびLEDバックライト制御は、業界初となる機能だ。
「レベル3」はアクションゲームやレーシングゲーム、スポーツゲームに適したモード。画面(フレーム)の描き換えに合わせ、LEDバックライトの点灯/消灯を繰り返す「LEDブリンキング」によって、ブラウン管(CRT)に近い表示を実現した。LEDバックライトは輝度の立ち上がり/立ち下がりが高速なので、人間の網膜に残る残像感を効果的にリセットできるという。
「レベル3」のLEDブリンキングは、フレームの描き換えに合わせてバックライトを点灯/消灯させる。前フレームの残像と後フレームの映像が、目の網膜上でほとんど重ならないという。これはブラウン管(CRT)の仕組みに近い |
「レベル2」はロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームに適したモード。120Hz駆動の倍速補間によって前後フレームから中間フレームを生成し、非常に滑らかな表示を行う。さらに、LEDバックライトの点灯部分/消灯部分を縦方向にスクロールさせる「バックライトスキャニング」を併用することで残像感も低減され、240Hz駆動に相当するスムーズな映像表示が可能とした。
「レベル1」は表示のフレーム遅延を最小限に抑えるモードで、FPSを含めたシューティングゲーム全般、音楽ゲームやリズムゲームに適している。60Hz入力の1フレームを単純に2フレーム分(120Hz駆動)描画し、バックライトスキャニングを行う。残像感を抑えつつ、表示のフレーム遅延を最小限にしている。
「レベル2」は、前後フレームを計算して中間フレームを生成する倍速補間がポイント。LEDバックライトスキャニングと組み合わせることで、非常に滑らかな映像表示を実現する |
「レベル1」は複雑な映像処理を行わずに、表示遅延の抑制を最重視したモード |
ちなみに、「MDT231WG」は120Hz入力による3D立体視には対応していないが、「将来的には備えたい機能」(村田氏)とした。
「ギガクリア・エンジンII」と「リフティングターン」にも注目
もう1つの「ギガクリア・エンジンII」は、簡単にいうと映像や画像を補正して解像感を高める技術/処理LSIだ。前世代の「ギガクリア・エンジン」と比較して、2つの機能が進化し、3つの新機能が加わった。
進化した機能の1つは「新・超解像技術」で、画面内でちらつきが発生しやすい部分を自動で特定し、超解像の処理をコントロールする。2つ目は「ブロックノイズリダクション」で、特にインターネット上の動画や画像に効果的だ。
新機能は、表示する映像/画像の解像度を判別して超解像処理の強度を自動で設定する「解像度判別」、画面内で白とびや黒つぶれを起こしている部分を改善する「エリアコントラスト」、人間の肌色を自動検出して超解像処理を抑制する「肌色検出」だ(人間の肌色に超解像処理を施すと、かえって荒れて見えることがあるため)。
また、ステレオスピーカー/サブウーハーの搭載と、独特のピボット(画面の縦回転)機能「リフティングターン」も見どころだ。ステレオスピーカーは3W + 3W、サブウーハーは5Wと、液晶ディスプレイとしては大きめの出力を備える。横長画面でも縦長画面でもスピーカー/サブウーハーの位置が変わらないため、安定したサウンドが得られるだけでなく、デザイン的にもメリットが大きい機能だろう。