アップルが「忘れられない一日になります」と予告していた発表はビートルズだった。同社は17日、iTunes Storeでビートルズの全スタジオアルバムと、シングル曲集Past Masters、赤盤・青盤の通称で呼ばれるベスト盤、ボックスセットなどの販売を開始した。
2003年4月に米Appleが米国でiTunes Music Storeをオープンさせてから、これまでに何度もビートルズ作品の登場のタイミングが話題になってきた。それはビートルズがポピュラー音楽史上で最も成功した音楽バンドであり、その作品はレコード会社の至宝であるからだ。ビートルズ作品を獲得できれば、iTunes Storeに代表されるオンライン音楽配信が認められたことを意味する。iTunes Music Store開始当初はコピー対策などサービスの信頼が問われた。近年はCD販売の下落とのバランスが議論され、iTunes StoreがCD販売に代わる勢力に成長し、iPodがデジタル音楽プレイヤー市場で圧倒的なシェアを獲得してもなお"ビートルズ作品"というお墨付きに届かなかった。ビートルズ作品配信開始には特別な意味があるからこそ、今回Appleは大々的な宣伝を実施した。
iTunes Storeとの関係の他にも、Appleにとってビートルズは特別な存在となっている。まず同社CEOのSteve Jobs氏が、スピーチにビートルズの話題を巧みに織り交ぜるほどのビートルズ・ファンだ。例えば、D5カンファレンスにおいてBiil Gates氏と共にインタビューを受けた際に、Gates氏との関係をビートルズの「Two of Us」の歌詞で言い表した。今回もLet It Be収録の「The Long and Winding Road」を引いて「ここまで"長く曲がりくねった道のり"だった」とコメントしている。一方で、Appleがビートルズの管理会社であるAppleと「Apple」の商標問題で何度も衝突してきたという歴史もある。2007年に和解合意して決着となったが、同じAppleという名前を持つ2つの会社の争いはビートルズ作品のiTunes Store登場の障害になった。
ビートルズ作品は、昨年にデジタルリマスターのステレオ版およびモノ版のCDボックスセットの発売が大きな話題となったばかり。気になるiTunes Store版の価値だが、全アルバムとPast Masters、つまり14枚分のアルバムと二枚組1つを収めたボックスセットが23,000円。1964年のワシントン・コロシアムでの米国初コンサート(完全版)のビデオを収録したiTunes LPが付属する。他のアルバムもiTunes LP版となっており、高精細なジャケット写真やライナーノーツなどLPレコードの感覚と共に今日のスタイルでビートルズ作品を楽しめる。スタジオアルバムは2,000円、ホワイトアルバムと赤盤・青盤などの2枚組および2枚のアルバムを1つにまとめたPast Mastersは3,000円だ。
なおAll Things Digitalによると、ビートルズのオンライン配信に関してAppleはEMIと独占契約を結んだという。契約期間は明らかにされていないが、ビートルズ作品を購入できるオンラインストアはしばらくiTunes Storeのみとなりそうだ。