11月2日(米国時間)、Fedora Projectより最新のLinuxディストリビューション Fedora 14が公開された。FedoraはRed Hat Enterprise Linuxに取り込まれる可能性のある技術が実験的に導入されるLinuxディストリビューション。開発コードに"Laughlin(ノーベル物理学章を受賞したRobert Betts Laughlin氏より)"が与えられた今回のリリースではどのような技術や機能が導入されたのか。Fedoraの標準配布であるGNOME版を使ってレポートしてみたい。
Fedora 14の新機能&改良点
さっそく、Fedora 14をインストーラしてみる。インストーラは数回のクリックと入力ですむよう容易なインストールとなっており、前回と特に差異は見受けられなかった。
Fedora 13より実験的ながらBtrfsがサポートされたが、Fedora 14でも引き続き実験的な扱いになっている。Fedora 14をBtrfsで構築するにはDVD版のISOよりインストールする必要があり、ブート時に"btrfs"をつけなければならない。また、インストール時にパーティション設定ツールを使って手動でBtrfsを選択しなければならない。/bootにBtrfsを指定することはできない。
Fedoraの特徴のひとつといえるブルーに統一されたデスクトップ画面はこれまでのやわらかなイメージとは異なり、シャープな背景が取り入れられた。
次にFedora 14で導入された新機能や改良点を見ていきたい。
- C++ライブラリBoostを1.44にアップデート
- D言語の導入(Dコンパイラ及びDランタイムライブラリの追加)
- EclipseをHeliosにアップデート
- NetBeans IDEを6.9にアップデート
- Erlang言語をR14にアップ
- Rakudo Starの追加
- Python 2.7にアップデート
- Ruby 1.8.7にアップデート
- Perl 5.12にアップデート
- 仮想デスクトップフレームワークSPICEへの取り組み
- Amazon EC2でのFedora 14の即時提供
- JPEGライブラリをlibjpegからlibjpeg-turboに変更
- 学習環境Suger Ver0.9の導入
- ipmiutilのサポート
- MeeGoをサポート
Fedora 13ではデスクトップに大きな変更が入ったリリースだったが、今回リリースされたFedora 14では追加された機能や改良点から見るにデベロッパに向けての更新が多く行われていることがわかる。
EclipseやNetBeansといった開発環境からTR1(C++ライブラリの拡張を定めたドラフト文書)の3分に2をすでに実装しているC++ライブラリ"Boost"、著名どころのスクリプト言語であるPerlやPython、Ruby、Perl 6を実装したRakudo Starなど開発者向けの機能強化が行われている。ほかにもD言語への対応やErlangをR14にアップデートするといったマイノリティなプログラミング言語へのサポートも行っている。
D言語の対応では、フロントエンドにDMDが、バックエンドにはLDC(LLVMのD Compiler)を採用。D言語のスタンダードランタイムライブラリであるTangoもRPMに追加された。同じランタイムライブラリであるPhobosはまだ公式にサポートしていない。
デベロッパ寄りの変更が多いが、システム管理者向けに仮想化への対応も行なっている。たとえば、Fedora 14のリリースと同時にAmazon EC2ユーザ向けにFedora 14のイメージの提供を開始している。デスクトップ仮想化としてSPICEも正式に導入された。SPICEとはイスラエルのQumranetが開発したリモートデスクトップシステムで、2008年にRed Hatが買収した仮想化技術。
その他、JPEG画像の処理を高速にするlibjpeg-turboやIPMIサーバの管理ツールであるipmiutilの採用といった細かな強化やサポートも実施されている。また、NetbookといったモバイルPCに対応するためにデスクトップ環境としてMeeGoをサポートしている。