昨日の欧米市場
欧州株式は堅調な地合い、米株式は強弱まちまちの展開へ。
ユーロ諸国の圧力により、アイルランドが欧州連合からの支援を受け入れるとの観測が台頭したことで、欧州債務懸念が後退。これを受け、売り圧力が強まり易くなっている金融株や資源系が相場をけん引した。また、10月の米小売り売上高が7カ月ぶりの高水準となったことを受け、米景気回復の底堅さが確認できたことも投資家の安心感を誘発し、主要な欧州株価指数は上昇した。
一方、米株も強い小売売上高の内容やM&A関連で底堅い値動きとなるも、金融緩和の規模縮小観測や根強い高値警戒感から終盤に失速。米SPX500は心理的ラインである1200が意識された。
為替市場では、好調な米経済指標により米金利が上昇したことを背景にドル買い基調が継続。
ユーロドルで目先のサポートライン1.36を再び割り込む展開となれば、ドル円も10月7日以来となる83円台へと突入。その後利益確定売りに圧されるも、根強いドル買い圧力に支えられたまま、アジア時間を迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・08:50 日本:9月第三次産業活動指数
・09:30 豪:RBA(豪準備銀)議事録
・18:30 英国:10月消費者物価指数
・18:30 英国:10月小売物価指数
・19:00 ドイツ:11月ZEW景況感調査
・19:00 ユーロ圏:10月消費者物価指数
・19:00 ユーロ圏:11月ZEW景況感調査
・22:30 米国:10月生産者物価指数
・23:00 米国:9月ネットTICフロー合計
・23:00 米国:9月ネット長期TICフロー
・23:15 米国:10月鉱工業生産
・23:15 米国:10月設備稼働率
・24:00 米国:11月NAHB住宅市場指数
要人発言
・16:30 ユーロ圏:ファンロンパイEU大統領の発言
・17:00 ユーロ圏:コンスタンシオECB副総裁の発言
・23:30 ユーロ圏:シュタルクECB理事の発言
アジア時間の見通し
株式市場のテーマが、徐々に米金融緩和から各国のファンダメンタルズへと軸足を移しつつある。
昨日は、欧州ソブリンリスクにより軟調な地合いとなっている欧州株式が、米小売売上高の好調な内容に牽引されるかたちで上昇した。本日アジア時間でも、米景気回復と欧州連合によるアイルランド支援観測が材料視されるか見極めたい。
日本225種は、ドル円相場が10月7日以来の83円台へ上昇したことで主力輸出株にとっては追い風が吹いている。加えて、7-9月期のGDPの伸びが短期的には好感される可能性もある。今回のGDPの伸びは、エコカー補助金やたばこの駆け込み需要等による消費の上昇が影響した結果だが、欧米ファンダメンタルズの改善という流れが上手く台頭している中で発表された強い数値は、市場でポジティブに受け止められるか。
チャートを見ても、11月5日に9500がサポートとして意識され、目先のレジスタンスポイント9800を上抜けている。現状、9900があらたなレジスタンスとして意識されているが、欧米市場からのリスクオンが継続すれば、突破する可能性は十分考えられる。
もちろん下落リスクもある。注目は、やはり中国の金融政策の動向だろう。ただ、前回の意表を突いた利上げも短期間で市場が消化したことを振り返ると、一過性の利益確定や調整売りの材料とされても、中長期のトレンドを作り出すまでに至らない可能性の方が、現状では高いか。
為替市場でも、従来の米金融緩和を背景にしたユーロや豪ドル買いからドル買い基調へと転じている。要因として、直近の米経済指標の好調さを反映した米金利の上昇が挙げられるが、米金融緩和に対して米国外(ドイツは公然と批判)だけでなく米国内からも批判の声が高まっていることも、これまでのドルキャリーの解消の動きを活発化させている。
昨日は、米ウォールストリートジャーナル紙が、エコノミストのコメントとして『米金融緩和は雇用促進どころか、為替市場の悪化とインフレのリスクを伴う』と報道。こういった批判の高まりは量的緩和の規模縮小や一部で台頭していた更なる追加緩和の期待感を後退させるのに一役買っている。
米金利上昇と米金融緩和の縮小観測による新たなトレンドに乗るなら、ユーロドルは目先心理的ライン1.35を、ドル円は84.00のラインを試す展開となってもおかしくはないか。
なお、本日は09:30にRBA(豪準備銀)議事録が発表される。市場はRBAの次の一手を探ってくると思われるがハト派の内容だった場合、調整地合いが強まっている豪ドルの売りを更に加速させる可能性もあるため要注意。