フィンランドNokiaは11月8日、モバイルOSの「Symbian」を社内に取り込むことを発表した。共同出資した英Symbianを買収したのが2年前、その後Symbian Foundationとしてオープンソースプロジェクトを立ち上げたが、結局SymbianはNokiaの下に入ることになった。

NokiaのSymbian担当上級副社長、Jo Harlow氏

Symbian Foundationが11月9日から2日間、オランダ・アムステルダムで開催した「Symbian Exchange & Exposition 2010」で、NokiaのSymbianデバイス担当上級副社長のJo Harlow氏がNokia側から今回の発表について説明した。

Harlow氏はまず、Symbianチームと会場に集まったSymbianコミュニティに対し、Symbianのサポートに対して礼を述べた。韓国Samsung、英Sony EricssonがSymbianから距離を置くことを発表しており、Symbianを採用する携帯電話メーカーはNokia、富士通などとなった。

今回の発表がNokiaにとって何を意味するのかという点について、Harlow氏はFoundationの変更であってプラットフォームには変更はないことを確認し、Nokiaのコミットは変わらず、「ハイエンドからローエンド、多様なフォームファクタを持つ幅広いデバイスで利用する。Nokiaにとって多様性を実現する唯一のプラットフォームだ」と述べた。そして、秋に発売開始となったフラッグシップ「Nokia N8」をはじめ、9月の「Nokia World」で発表した「Symbian ^3」搭載機4機種(N8/C6/C7/E7)を紹介した。Symbian ^3では250以上の機能強化が加わり、「ベター、シンプル、高速になった」とHarlow氏は説明する。4機種の中でも、N8については、「40カ国以上100社以上のオペレータから提供されている」と「iPhone」との違いを強調。また、過去最高の事前予約数になってこともアピールした。

Nokiaの新しいフラッグシップ端末「Nokia N8」。HD動画を再生中

12メガピクセルカメラを搭載。N8のカメラ機能への評価は高く、説明してくれたスタッフは「デジカメは不要」と言い切る

ビジネス向けだがコンシューマユーザーも多いEseriesの最新機種「Nokia E7」

スライドするとQWERTYキーボードが現れる

カメラは8メガピクセル

Cシリーズの最新機種「Nokia C6」と「Nokia C7」。画面サイズはC6が3.2インチ、C7は3.5インチ

C7で「Ovi Store」にアクセス。先にSymbian対応した「Angry Bird」が

C6。推定価格は349ユーロ。手ごろな価格のスタイリッシュなスマートフォンという位置づけ

カメラはC6、C7ともに8メガピクセル

Harlow氏は今後のSymbianについて、プラットフォームと開発の2つの点からNokiaの計画を説明した。

アップグレードについては先に、バージョン制ではなく、少しずつ改善していく方針を発表している。Symbian ^3の後は、「50以上の最新機能をソフトウェアアップデートで自動的にユーザーに配信していく」とHarlow氏。具体的な機能として、テキストインプット分割画面、ポートレイトQWERTY、スワイプ、最新のブラウザ(バージョン7.3)などを挙げた。これらの配信は2011年初に開始するという。「Symbian ^3端末のユーザーは、最新の機能、エクスペリエンスを利用できる」とメリットを強調する。

開発についてもNokiaはすでに、今後「Qt」に一本化する方針を発表している。Qtは、Nokiaが買収したTrolltechのクロスプラットフォームアプリケーション開発フレームワークだ。すでにSymbian向けのポーティングが実現しているが、NokiaはSymbian開発者に対し、「Qt 4.7」とデザイン主導のUI開発技術「Qt Quick」をメインに打ち出していく。Qtを利用することで、開発が容易になり、市場投入までの期間を縮小できる。これだけでなく、QtはNokiaがハイエンド用としている「MeeGo」アプリケーション用の開発技術でもあるため、開発したSymbianアプリを容易MeeGoに対応させられる。「MeeGoとSymbian間のアプリケーションポーティングのニーズを解決できる」とHarlow氏は言う。なお、MeeGoはモバイルだけでなく、タブレットや車載システムなど幅広い組み込みセグメントを狙っている。

QtとHTML 5へのフォーカスと同時に、UIフレームワークの「Orbit」はサポートを停止すると述べた。

Nokiaはここで、SymbianとMeeGoの両方に対応するSDK「Nokia Qt SDK」を用意している。同SDKのメリットとして、アプリケーション開発が簡素化され「コードの行数を70%削減できる」と述べた。

開発したアプリケーションは、Nokiaのアプリケーションストア「Ovi Store」で提供できる。Harlow氏はこの日、Ovi Storeのデータとして、毎日20万人の新規登録があり、ダウンロードは毎日270万件あると説明。強みはグローバルリーチで、「世界190カ国、33の言語で利用できる」としている。

また、Ovi Storeでは90以上のオペレータでオペレータ課金が可能なことにも触れた。アプリケーションストアではクレジットカードを利用した購入が一般的だが、クレジットカードの普及率は国によりさまざまで、たとえばドイツでは30%だという。7月にオペレータ課金を導入後、3分の2のユーザーがオペレータ経由で支払うことを選択し、ダウンロード数は30倍ペースで増えているという。

Harlow氏は最後に、「Symbianエコシステムは今後も続く」と述べNokiaのコミットを強調した。