NTTドコモは、次世代通信規格のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」を12月24日から開始する。世界でも早い段階でのサービス提供により、山田隆持社長は「ネットワークもネクストステージへ」と先進性をアピールしている。
屋外37.5Mbps、屋内75Mbpsの高速通信サービス
Xiは、次世代通信サービスとして従来のW-CDMAやその高速規格HSPAなどの3Gとは異なり、無線方式にOFDMAを利用するなどの技術的進化を遂げており、FOMA(HSPA)との比較で約10倍の高速、約3倍の大容量、約1/4の低遅延といった特徴を備えている。単なる通信速度の高速化だけでなく、電波効率が向上したことで、より効率的にユーザーを収容して安定した通信が可能になる。
フルHDのストリーミング動画を再生しているところ。映像が途切れることもなく、なめらかに再生されている。この時の通信速度は10Mbpsほど |
こちらはデータダウンロードを行ったところ。発表会場は10MHz幅で通信が行われており、最大75Mbpsの速度が出る。会場では最大54.261Mbpsまで出ていた |
規格上は100Mbps以上の通信速度まで想定されているが、まずドコモでは2GHz帯の5MHz幅を使い、屋外で下り最大37.5Mbpsの通信速度でスタートする。カバーエリアはサービス開始時で東名阪の一部地域で、東京23区の一部、千葉県成田市の一部(成田空港周辺)、神奈川県横須賀市の一部(横須賀リサーチパーク周辺)、愛知県名古屋市の一部、大阪府大阪市の一部などがエリアになっている。この時点で基地局は1,000局を想定している。
その後、2012年3月までに各都道府県庁所在地と政令指定都市へとエリアを拡大し、この時点で約5,000局、人口カバー率20%を目指す。2013年3月には約15,000局、同40%をめざし、2014年3月までには「35,000局ぐらい、カバレッジ(人口カバー率)は75%ぐらいに行きたい」(山田社長)という方針だ。
ソフトバンクの孫正義社長には人口カバー率の展開の遅さを指摘されていたが、山田社長は、当初5年間で3,400億円の設備投資の計画に対し、3年間で3,000億円と前倒ししていることを強調し、順次サービスエリアを拡大していく計画だ。なお、基本的にXiの基地局は、既存の3G(FOMA)の基地局に追加する形で設置していくそうだ。
サービス開始時、一部の地下鉄・地下街もサービスエリアになる予定だが、基本的に地下鉄駅などは新規の基地局設置に時間がかかるため、どの程度のスピードで地下鉄駅がエリア化するかは分からないという。
なお、サービスエリア外ではFOMAの電波が利用できるため、通信が圏外になるというわけではない。
山田社長は、基地局設置については「トラフィックの高いところから導入していく」考えで、今後は「原則としてHSPA(FOMA)の増設はせずに、LTEで対処していくようにする」方針だ。容量不足のFOMA基地局の増設は行うが、なるべくLTEを導入し、そちらにトラフィックを流していきたい考え。
なお、通信速度に関してソフトバンク孫社長がXiの37.5Mbpsより高速なサービスとしてULTRA SPEED(下り最大42Mbps)をアピールしている。Xiは電波の5MHz幅を使って同37.5Mbpsを屋外で提供するが、10MHz幅を使った下り最大75Mbpsのサービスも一部施設内で提供し、より高速なサービスを実現する。
屋外での10MHz幅でのサービス提供には、電波の干渉の影響があるため、今後ユーザーの要望などを見ながら慎重に判断する考えだという。
2段階制の通信料金にキャンペーンも
Xiのサービス提供に辺り、ドコモは2段階定額制の料金プランを用意。2年間の契約を前提に通信量3,177KBまで月額1,000円、その後1KB辺り0.315円となり、20,667KBで月額6,510円となり、5GBまで定額で利用できる。5GBを超えた場合、その後2GBごとに2,625円が加算される仕組み。無制限での通信は行えないが、山田社長は「(ドコモ)ユーザーの99.6%が1カ月5GB以内の通信」だとして、「ほとんど影響ない」(同)とみている。
その上で、サービス開始直後は、「Xiスタートキャンペーン」を実施し、2年間の契約を前提に月額料金の上限を4,935円に割り引く。さらに5GBの上限も撤廃し、上限金額で無制限で利用できるようになる。キャンペーン期間は2012年4月30日までだ。
山田社長によれば、Xiサービスでの使用量による帯域制限はFOMAサービスと同様で、直近の3日間のパケット通信料が300万パケット(384MB)を超えた場合、その3日目に高トラフィックの状態であれば通信速度が抑えられる、という。利用しているアプリケーションでの制限は行わない。
2種類の対応端末、来春には無線LANルーターも
対応端末となるのは、USBスティック型の「L-02C」、「世界初」(同)というExpressCard型の「F-06C」の2種類を発売する。いずれもLTEと3Gのデュアル端末になっており、LTEエリア内ではLTEを利用し、LTEの圏外では3Gを利用する。ハンドオーバーによって、通信が途切れずにLTEと3Gの通信を切り替えられる。海外でもWORLD WINGサービスによってデータ通信を利用可能だ。
LTE端末としては、11年度初めにポータブル無線LANルーターをリリースする予定で、同年後半には音声端末も発売する計画だ。
山田社長は、「ドコモのネットワークは品質がいいと言われており、PC用データ通信端末で顧客満足度2年連続1位をもらったので、これをぜひ継続していきたい」と語り、LTEによる通信速度や低遅延などの特徴を武器に、満足度向上を狙っていきたい考えだ。