前回紹介したサイト「テラス」は、株式、日経225先物、FXのトレードシステムを、独自の統一的な基準で比較検討し、購入までできるサイトとなっている。口コミなども掲載されていて、レストランガイドサイトやパック旅行比較サイトで商品を選ぶような感覚で、トレードシステムを選ぶことができる。
同サイトを運営しているテラス 代表取締役の林芳郎氏は、「できれば一つのシステムではなく、複数のシステムを運用して、ポートフォリオを構築していただくのが理想です」と話す。
もちろん、最初は、最も利益のでそうなシステムを一つ選ぶというのが普通だろう。では、その一つを元に、どうやって次のシステムを選んでいけばいいだろうか。そして、どのように自分のポートフォリオを組んでいけばいいのだろうか。今回は、その方法を、林氏にお伺いする。
補完するシステムは「ランキングで目立たない」場合も
「テラスで紹介させていただいているシステムの中で、最も売れるのは、やはりランキングに登場するパフォーマンスの高いものです。ですが、ランキングに登場しない、目立たないシステムも数は少ないですが、それなりに売れています。どういう事かと分析してみると、すでにテラスでパフォーマンスの高いシステムをお買いになられたお客様が、それとはタイプの違うシステムを追加購入されているのです」。
例えば、最初に買ったシステムが毎日トレードをするデイトレードタイプのものだとしたら、次には、週に一度程度トレードをするスイングタイプのものを購入するという。
「真面目に投資をされている方は、常に自分の投資手法に足らないものや、自分の投資手法の弱点を認識されていて、それを補ってくれるシステムをお求めになられているのだと思います」。
まさに、テラスはロングテールビジネスといえる。補完するシステムは、単体であれば、パフォーマンスもさほど目立たず、売れるシステムではないかもしれない。しかし、あるシステムの補完をして組み合わせることで、投資家の投資成績が上げられるのであれば、それなりの市場が生まれてくる。
将来は、テラスであるトレードシステムを買うと、『追加で、このシステムをお買いになると、お客様の投資成績が、このように改善されます』という案内メールが来るようになるかもしれない。オンライン商店のAmazon.co.jpで『この商品を読んだ方は、こんな本も読まれています』というリコメンドが表示されるが、あれと同じ感覚である。
「そこまでやりたいですねえ。投資をされるお客様にとっても、システムを開発される開発者にとっても、私どもにとっても、三者が皆ハッピーになれますから。ただ、まだまだテラスはやるべきことが山積みで、なかなかそこまで手が回っていませんが、将来的にはぜひやりたいと思います」。
過去の運用成績ではなく「実際の運用成績」に注目
では、初めてトレードシステムを購入するという場合、まずはどこに注目して、システムを選んでいったらいいのだろうか。
「初めてトレードシステムをお買いになるというときは、運用成績に目がいくのは当然の事だと思います。ただ、その時に、過去の運用成績ではなく、実際の運用成績を見ていただきたいのです。むしろ、実際の運用成績を、より重要視していただきたいのです」。
トレードシステムを開発するときは、過去の相場データを使って、できるだけ成績が良くなるように開発されていく。この時、「過剰最適化」の問題が出てくる。つまり、いいパフォーマンスを出そうとして、過去の相場データに適応させすぎてしまうのだ。こうなると、過去の成績は素晴らしいのに、実際の運用になったらさっぱり成績が上がらないということが起こりえる。従って、何によりも重要視するのは、「実際の運用成績」であるという。
「もう一つは、開発者の熱意だとか対応というものを、直接かぎとっていただきたいのです。特にシステムトレード初心者の方は、開発側の熱意、対応を重視していただきたいと思います」。
それぞれのトレードシステムには、どのようなシステムであるかは説明書などに事細かに書いてあるが、細かくなればなるほど、初心者には理解ができなかったり、見逃してしまうことがある。そのまま、ボタンをクリックして始めてみた所で、損失が出れば不安になる場合もある。
その際、開発元に電話やメールで質問をしても、"木で鼻をくくったような"答えしか返ってこなければ、それ以降、怖くなって続けられなくなる可能性が高い。いかにロジックが優れていようと、いかに運用成績があげられるシステムであろうと、続けられないシステムは、ダメなシステムといえる。逆に、続けていけば、長い時間をかけて利益を積みあげていくこともできる。
資金額を増やそうとする時が「2番目のシステム」を選ぶチャンス
では、一つのシステムを購入して、それなりに満足できる成績があげられた場合、どのようなタイミングで、どのようなシステムを買い増せばいいのだろうか。
「一つのシステムを運用されてみて、成績に満足がいくと、投資額を1枚だったものを、2枚に増やそうと考えますね。ここがいいタイミングです。2枚に増やすのではなく、もう一つ別のシステムを入れて、そちらに1枚入れるのです。これが、最終的なポートフォリオ構築の第1歩になると思います」。
一つのシステムで投資額を2倍にしたら、利益は2倍になるかもしれないが、損失も2倍になる。しかし、性格の異なる別のシステムを入れたら、利益は2倍にならず、1.5倍にしかならないかもしれないが、損失も2倍ではなく1.5倍になるだろう。
「勝ち幅と負け幅が小さくなって、投資全体が安定します。これはものすごく安心できるんですね。ポートフォリオを作りましょうといわれても、それがいいことだとわかっていても、人間って実感できないとなかなかできないものです。まずはシステムを二つにすることで、ポートフォリオの安心さを実感していただくことが重要だと思うのです」。
テラスの「マイリスト」機能も活用を
では、二つ目のシステムは、どのように選べばいいのだろうか。一つ目のシステムと二つ目のシステムが、似たような性格のものだったら、安定化するという効果は得られない。利益も2倍、損失も2倍という不安定なことになる可能性がある。
「システムのコンセプトが異なるものを追加するというのが基本です。例えば、順張りシステムであれば、次に入れるのは逆張りシステムです」。この他にも、早朝にポジションを持つという時間が決められているシステムであれば、昼過ぎにポジションをもつシステムを入れてみる。あるいは、FXのシステムを使っているのであれば、日経225先物のシステムを入れて見るという方法もある。
「それから、リーマン・ショックなどの大きな経済イベントの時の成績にも注目して下さい。あるシステムは、リーマン・ショックで大きな利益を稼いでいるとすると、二つ目は、リーマン・ショックを無難に乗り切っているシステムにするなどということも考えてみていいと思います。二つとも、リーマンショックで大きな利益をかせいでいるという組み合わせにすると、逆に出たときに、両方とも大きな損失を被ってしまう可能性があるからです」。
どのような組み合わせが最適かは、テラスの「マイリスト」機能を利用するといいかもしれない。このマイリスト機能は、気になるシステムを30個まで登録しておくことができ、そのうち三つまでを組み合わせて、合算した資産曲線を描くことができる。
「いちばんいいポートフォリオ資産曲線は、右肩上がりで、凹凸がなく、できるだけ直線に近いものが理想的です。角度(=利益)よりも直線になっていることの方が重要です」。直線に近ければ近いほど、毎月着実に利益を積み重ねていっていることになるという。
投資に重要なのは、一時期に大きな利益を上げることではない。それを狙うと、ギャンブルに近くなってしまう。理想的なのは、長年に渡って着実に利益を生んでくれ、いつの間にか定期預金の利息のような感覚になることだろう。そのためには、システムトレードが正しい道の一つだろうし、複数のシステムを組み合わせてポートフォリオを作っていくというのが、長い道のりではあるが、"一番の近道"ではないだろうか。まずはテラスをのぞいて、どんなシステムがあるのかを漠然と眺めてみていただきたい。実際の利用者の感想や口コミを読んでみるだけでも、大いに参考になるので、そこから始めてみてはいかがだろうか。
なお、ひまわり証券では、第4回シストレコンテストを8月16日~10月30日まで開催。11月8日に最終結果が発表されるが、このコンテストでの上位入賞作は、テラスで掲載、購入できるようになる予定となっている。シストレコンテストの途中経過は、常時閲覧できるようになっているので、このコンテストで、気に入ったシステムに目をつけて、テラスで購入してみるというのも面白いかもしれない。