TVの仮想化技術とも言えるイメージとなるDiiVAだが、「それだけの機器が接続されても、消費電力を極力抑えることが可能」という技術も搭載されている。例えば、DiiVAでは各種機器をデイジーチェーンで接続することができるが、TV-STB-BDプレーヤ-コンソールゲーム機とつながっていた場合、一般的な考え方ではゲーム機で遊びたい場合はTVとゲーム機の間にあるSTBとBDプレーヤの電源もONにする必要がある。しかしDiiVAでは、間のSTBとBDプレーヤはスタンバイ状態のままでゲーム機とTVだけON状態にすることが可能となっている。「スタンバイ状態のDiiVAポートを維持する電力は1A×5Vの5W」であり、信号の経由の仕方はデイジーチェーンでも、スター型でも、どのような形でも関係なく、使う機器だけ電源をONにすることができるという。

デイジーチェーンで各種機器がつながっていても、必要な機器だけ電源をONにし、その他のネットワーク上の機器はスタンバイとすることで、消費電力を抑制することも可能

こうした機能を備えたIPおよびチップを生産するのがプロモータの1社であるSynerchip。同社はDiiVAに対応したトランスミッタ、レシーバそしてスイッチ用チップの3種類を現在サンプル出荷している。製造はTSMCが担当しており、0.18μmプロセスを用いて製造される。

Synerchipでは物理的なチップに加え、ミドルウェア部分と基本的なAPIも提供しており、アプリケーションベンダは基本的な部分の開発を行う必要がない。また、IPとしての提供も行っていることから、例えばコントリビュータとして名を連ねている台湾MediaTekがSynerchipよりライセンスを受けてチップを開発するといったことも可能となっている。

DiiVAの各種レイヤの概要

DiiVA Consortiumのロードマップでは、2010年はデイジーチェーンで各種機器を接続する方法を提案するものの、2011年にはスイッチを経由して2つの部屋のTVと各種機器を接続する方法を、そして2012年には家中すべてのTVと機器をつなげる方法をコンセプトとして掲げている。

DiiVAのロードマップ。あくまでイメージ的なものだが、年を経るごとに、接続性能を強化していくという方向性となっている

伝送距離は現状の規格では25mだが、リピータを経由することで伸ばすことは可能とする。こうした伝送速度や距離については、コンソーシアムの参加企業各社と話あって、どういった方向性で機能強化を図っていくかを検討していくとしているが、2012年に家中すべての機器への接続対応を掲げていることを踏まえると、対応距離の延長などについては「逐次アップデートしていく」という考えを示してくれた。また、モバイル機器との連携強化も恐らく進んでいくだろう、との考えも示してくれた。

DiiVAの最終的な到達点のイメージ。このレベルまでくると、無線で飛ばしたほうがすっきりするような気がしないでもないが、中国の業界などからは優先でも十分との声があるとのこと

実際にSynerchipの各種チップを用いたデモも見せてもらったのだが、中国だけの規格とするのはもったいないと思わせる仕組みとなっていた。実際、Gaines氏は明確なコメントは避けたが他地域での同規格への関心を高めるプロモーションも行っていきたいというニュアンスを含ませており、IECと整合性をとったということもそういった意思の一端を表していることが伺える。

デモはBDプレーヤとPS3、NASなどの機器と2台のTVそれぞれにトランスミッタ/レシーバチップを搭載したアダプタを介在させ、そこから出てくるDiiVAコネクタをスイッチにつなげて管理するという構成となっていた。スイッチチップは4入力2出力にEthernet、USBに対応。Ethernetにはワイヤレスルータが接続され、スマートフォンとのデータのやり取りを行う仕組みとなっていた。

デモの様子。左のテレビにNASから配信される映像が、右にPS3のゲームが映し出されている状態

テレビやPS3などに接続するレシーバ/トランスミッタチップ搭載ボード。各機器とはHDMIでつながり、出力をDiiVAとしている。ちなみにチップの発熱量は、触っても熱い!とは感じない程度なので、ヒートシンクがなくても条件次第では動くものと思われる

こちらがそれぞれの機器を接続するスイッチボード。USBをサポートしているので、ここにUSBコントローラをつなげると、DiiVAネットワークを介し、PS3まで操作命令が伝達し普通に操作することができるデモも見せてくれた

この仕組みを用いると、一般的なリモコンではなく、スマートフォン上のDiiVAアプリケーションを活用してコンテンツ視聴などを行うこととなる。現在はまだAndroid用のアプリケーションしか用意できていないとのことだが、市場が形成されれば他のプラットフォームに対応したアプリケーションも登場することになるだろう。

実際の操作は至極簡単なもので、「マイデバイス」の項目をタッチすれば、DiiVA上でつながっているすべての機器を確認することができる。また、「ライブラリ」を開くと、すべてのコンテンツを見ることが出来る。今回の場合、メインはNASの中に保存されている映像データだったが、見たい番組などを選択すると視聴できるのと同時に「プレイリスト」にも登録される。さらに、「マーケット」の機能などもある。これは、例えば外出先でコンテンツをスマートフォンで購入した場合でも、スマートフォンがデータをダウンロードするのではなく、NASに保存されるというもので、普通に録画ボタンを押した場合でもHDDレコーダではなく、NASに保存といったことも可能となっている。

スマートフォン上のDiiVAアプリケーションを用いると、ネットワーク上につながっているすべての機器を確認することができる(ちなみにXBOX360と表記されているが、これは表示ソフトのミスで実際はPS3であった)

表示側の機器の選択画面。これを選択するだけで、余計な配線などをする必要なくコンテンツを好きなテレビに表示できるようになる。また、Wi-Fi経由で圧縮状態になるが、スマートフォン上で視聴することも可能

ネットワーク上にあるマーケットにてコンテンツを購入することも可能だ

このほか、例えばリビングにあるPS3で遊んでいたが、来客でベッドルームに追いやられてしまうシーンなどで、通常であれば、ゲームを中断してPS3ごと持っていくということとなるが、スイッチがUSB対応となっていることで、PS3はリビングに置いたまま、ベッドルームのスイッチにUSBコントローラを接続して、ベッドルームのTVで続きをする、といったことも可能となる。(ちなみにDiiVAはHDCP 2.0に対応しており、HDCPのWebサイトでもTechnologiesの項目にもMapping HDCP to DiiVA Specification, Revision 2.0(注:リンク先はPDF) )と記載されているドキュメントがある)

加えて、スマートフォンも単なるリモコンとしての利用だけでなく、Wi-Fiを介してしまうので、データが圧縮されてしまう(DiiVAの売りは非圧縮の映像データのやり取りのため、そういった意味ではフルのDiiVAとはいえないこととなる)が、そちらで映像を見ることも可能だ。

なお、当然ながらDiiVA規格に対応した製品が一番早く登場するのは中国で、2011年第1四半期の終わりの時期から同第2四半期の早い時期あたりに、TVとアダプタの両方で登場する予定としている。