動作は完璧?「スタンプロボット 大ちゃんII」

「スタンプロボット 大ちゃんII」も、「ミスター・スパーク」と一緒に今年頭になって櫻川から神奈川工科大へ移された。こちらも5月の時点で基本的な点検・修復作業は完了し、先に一般公開された「スタンプロボット テッちゃん」と同様に、スタンプを押す動作が可能となっていた。ただし残念ながら専用のスタンプホルダは失われてしまっているので、活躍するにはスタンプ自体の製作が必要だ。

「スタンプロボット 大ちゃんII」

先に一般公開された「スタンプロボット テッちゃん」と同様、スタンプ台に紙を置いて穴をふさぐとセンサが感知してスタンプを押す仕組み

「大ちゃんII」のスタンプ動作。腕と一緒に首も動くのが「テッちゃん」と異なる特徴(wmv形式 1.88MB 11秒)
背面には整備ハッチが

電源周りは足部のハッチ内にまとめられている

肩には「三郎」と同様にロッドアンテナが内蔵されているが、こちらは単に飾り?

一般公開が待たれる「絵かきロボット りょうくん」

最後に「絵かきロボット りょうくん」。独立して動く左右の手にペンを持たせて別々の絵を描く(線を引く)ことができるロボットで、台座内左右にあるバーを動かすと、両脚からボディを貫くシャフトを介したリンク機構により、それぞれの腕も連動して動く仕組みになっている。

現状では通電して目のライトは光るもののモーター等の動力部および制御部は失われてしまっており、具体的な資料もめぼしいものが見つかっていないため、現役時代にどのような機構でどのような絵を描かせていたのかは不明だ。

ただ、現存はしないようだが当時は他にも、注文により3種類の絵を描けたという「アトミック三世」等のロボットがおり、イベント会場で配布された、子供たちが絵を描いてもらうための紙は残っている。それらから考えても、おそらく「りょうくん」の台座のバーの先にはモーター付きの回転板が接続され、これに沿って自動的に絵を描けたのではないかと思われる。回転板の交換・切替によって様々な絵を描くことも可能だったはずだ。

2010年7月某日、点検整備中の「絵かきロボット りょうくん」
台座の左右に配されたレバーを動かすと、それぞれに連動した手先が同じように動く。バーを動かしているのは修復プロジェクトの提案者、エンターテイメントボウルの小松氏(wmv形式 3.05MB 19秒)

手先は机の上を常に水平に移動する仕組みだが、電磁石による筆記具の上げ下ろしにより一筆描きでない絵も描けるようになっている

「りょうくん」背面。左右の脚をシャフトが貫いている

台座内の左右に配されたバーが両脚を貫くシャフトにリンク機構で接続されている。往時は動力ユニット等も内蔵されていたのかも知れないが、現状はガランとしている

シャフトから腕に対してもリンク機構で接続され、台座内のバーの動きを伝える

ところでこの「りょうくん」、電源周りが少々変わっていて、なんと鉄板で構成されたボディ全体に通電される設計になっていたのだとか。これについては修復プロジェクトのメンバーであるMANOI企画の岡本氏が8月23日付の「MANOIレポート」で次のように書いている。

「AC100Vのメイン電源を10Vに変圧して、ロボットの体全体に供給している設計?になっていました。少し専門的に言うとグランドがボディ本体という設計です。ボディの表面には全面塗装が施されているので、触ってもビリッとする事はないのですが、ビス部分等は確実に10Vが流れています(テスターでも確認済み)。」

当時はこんな仕様もアリだったのかも知れないが、万が一を考えてしっかりと対策を講じることに。これは1日2日では済まないということで「りょうくん」はいつも修復作業が行われるKAIT工房から兵頭教授の研究室へ移され、学生たちが夏休みを通じて集中的に作業を行ったそうだ。

KAIT工房から兵頭研究室へ移された「りょうくん」

その後「りょうくん」の当面の修復作業はすでに完了しており、近々一般公開も予定されているそうだが、その際は台座左右のバーの先にもペンを取り付けてお絵かき用のボードを設置、その上で子供たちが絵を描くとロボットも同じ絵を描く、という形を考えているそうだ。

以上のように、ゆっくりとではあるが着実に歩みを進めている相澤ロボット修復プロジェクト。往時の動作の完全復元はなかなかに難しいところだろうが、一般公開可能なロボットもだんだんと増えてきている。いつかは現存するロボットたちが皆元気に動くようになって勢揃いし、より多くの人たちと触れあう姿を夢見つつ、今後もプロジェクトを応援していきたい。