頭部が動くようになった「ラジコンロボット 三郎」

さて、ここからは昨年お伝えしたレポート以降、現時点までの修復状況を各ロボットごとに紹介していこう。

まずは「ロボットと美術」展に出展中の「ラジコンロボット 三郎」。昨年の修復プロジェクト発表会では「秀才ロボット シュウくん」と呼ばれていたが、ロボットたちの名前は時期によって多少変遷があった上に、ゆうばりロボット大科学館での展示を経てさらに錯綜してしまっており、過去の資料を紐解いてもこのロボットが「シュウくん」と呼ばれた記録がなく、元々「三郎」として作られたのではないかと筆者は考えていた。「ロボットと美術」展カタログの掲載コラム等をまとめるにあたり、改めて故・相澤次郎氏のご長男で大型ロボット達のデザイン・設計を行った研一氏に確認したところ、やはり彼は「三郎」だというお墨付きをいただき、正式にこの名前で呼ばれることになった次第だ。

「ロボットと美術」展では残念ながら静態展示のみだが、往時の歩行機能こそ予算の問題もあってまだ手付かずではあるものの、すでに上半身は動作可能になっている。通常は頭部のレーダーが回転しており、握手するように右手親指部分のスイッチを触れると首が動いておじぎをしてくれる。

「ラジコンロボット 三郎」。2010年5月、神奈川工科大学KAIT工房にて。工房長も努めるロボット・メカトロ二クス学科の兵藤和人教授と
右手親指部分にスイッチがあり、握手するように触れるとおじぎをしてくれる(wmv形式 5.72MB 37秒)
ボディ背面のハッチ内には制御盤が
制御盤左側にある回転盤によりスイッチがONになると左右の首振り(イヤイヤ)動作が行われる(wmv形式 3.40MB 21秒)

立ち上がり動作が可能に!「雷さんロボット ミスター・スパーク」

「雷さんロボット ミスター・スパーク」は、その名の通り雷様をイメージしたスパーク模様が全身に描かれているのが特徴。どことなく易者を思わせるフォルムで、座った状態から立ち上がることができる。さらに、大きな目玉と耳が動き、頭部を前に倒すおじぎ動作も可能。

1928年にロンドンの機械博覧会に登場して人々を驚かせ当時のロボットブームの一端を担った「エリック」以来、立ち上がるパフォーマンス・ロボットというのはひとつの定番で、由緒正しき伝統(?)にのっとったロボットと言えるだろう。

昨年の修復プロジェクト発表会には登場せず、財団の現理事長、大森順方氏が同じく理事長を務める医療法人社団龍岡会櫻川ケアーセンターに展示されていたが、今年の頭から神奈川工科大KAIT工房に移された。5月の時点で基本的な点検・修復作業は完了しており、「ロボットと美術」展には出展されなかったが、夏休みの7/31(土)~8/29(日)に鳥取県倉吉市の倉吉博物館で開催された「ロボワールド2010」に展示され、これが初の一般公開となった。

「雷さんロボット ミスター・スパーク」

座った状態で全高150cmほど、立ち上がると180cmほどになる

 

動画
立ち上がれ~「ミスター・スパーク」! 動画中に映る人物は修復プロジェクトのメンバー、MANOI企画の岡本氏(wmv形式 6.32MB 48秒)
頭部の動作。おじぎに加え、目玉は上下に、耳は前後に動く。電子頭脳をイメージしたと思われる頭頂部のランブは点灯しなくなっているようだ(wmv形式 5.24MB 34秒)

ボディ背面のハッチ内にある制御板。中央下部の回転盤によって動作が制御されている。上部のトグルスイッチで各動作のON/OFFも可能
オルゴールのように回転盤から突き出たピンがスイッチをONにすると各動作が行われる仕組み。立ち上がり動作だけは回転盤自体のカム機構で制御されている(wmv形式 3.88MB 25秒)